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CPRCについて

CPRCについて

CPRCとは? 

競争政策研究センターは,足元の施策実施に役立てるという観点はもとより,中長期的観点から独占禁止法の運用や競争政策の企画・立案・評価を行う上での理論的な基礎を強化するため,外部の研究者や実務家の知的資源と公正取引委員会職員との機能的・持続的な協働のプラットフォームの整備を図ることを目的としています。
 

所長ごあいさつ 

松島 法学

21世紀初頭2003年に競争政策研究センター(CPRC)が発足してから15年以上たちます。その間、センター設立にご尽力された鈴村興太郎初代所長、公正取引委員会委員も務められた小田切宏之二代目所長、8年もの長きに渡り所長を務められた岡田羊祐前所長の指導力に牽引されながら、CPRCの各種業務に携わって頂いた事務担当者の方々による多大なるご尽力も相まって、CPRCは競争政策に関する研究拠点として関連分野の法学者・実務家・経済学者が交流する場を提供し続けることができています。

CPRCでは、法学者・実務家・経済学者による「三者協働」を原則とした共同研究が数多く行われています。この「三者協働」の原則により以下の効果が得られることを期待しています。第一に、公正取引委員会の職員が学術関係者と協働で研究を遂行する機会を得ることによって、参画した職員が学術上の知見を高めることを可能にすることです。第二に、学術関係者が現実の政策課題に携わっている公正取引委員会の職員と協働で研究する機会を得て現実の課題についての意見交換をすることで、政策実務の現場感を感じられることです。第三に、競争政策における学術上の基盤をなす法学と経済学では研究の接近方法が異なっているために相互理解の困難が度々生じますが、その困難の克服に資する討議の場を提供することを通じて両分野の研究者が相互理解することを促せることです。

現在、企業間の競争環境は刻一刻と変化していますが、産業によっては競争の範囲が世界規模になっていることもあり、変化の速度が日に日に早まっているように思われます。特に、情報通信技術の進展により取引に関わる様々な摩擦が軽減したことで、従来であれば困難であった各経済主体のつながりや取引が生まれて経済活動の範囲が広がることを通じて市場が活性化している一方で、各種のつながりや取引をつなぐ「場」として活動している企業が台頭することにより市場の寡占化が進んでいます。しかし、このような一見したところ情報通信技術によって大きな変革を生み出している企業であっても、この企業を取り巻く利害関係者の相互依存関係を経済学の考え方に従って整理してみると、20世紀から存在している業態を情報通信技術により取引上の摩擦を解消したことで巨大な事業規模にしている企業であり、十分に競合しうる従来型の既存企業も存在する場合も多いです。このような場合、新技術を利用している全く新しい業態のように見える企業も、従来から存在する市場の一企業として見なすことができるでしょう。新しい様態の事業者が出現しやすい現在の状況において、過去に蓄積されてきた判例や法学研究の蓄積を単純に援用することが難しくなっているように見えますが、経済学の観点から市場構造を整理することで、政策実務や法学における蓄積を援用するための参考材料を提供することは、経済学が競争政策に果たす役割の1つとなるでしょう。もちろん、新技術を用いた企業行動(行為)の扱い方など、過去の知見を活かしにくい新たな課題においては、各分野の視点を提示して適切な判断をすることが肝要でしょう。

このような経済環境において、CPRCは少なくとも以下の点で貢献できると考えています。経済学の知見を活かして、企業活動が市場環境に与える影響を分析し評価することで、適切な法執行を行う際の参考材料を提供することです。経済学分野では、反競争性の懸念がある行為について様々な観点から分析を行っています。法執行において、経済学で得られた研究成果の蓄積に依拠しながら、当然違法であった行為を合理の原則により違法性を判断するように変更したこともあり、これは、経済分析の知見が法実務における有益な参考材料となりうることを顕しています。また、法学者や実務家が注目している競争政策上の課題について、競争政策と関係する経済学分野の研究成果を踏まえながら参考材料を提供することも貢献の1つですし、近年は経済学の知見を踏まえて各種指針の策定や独占禁止法の執行を行うことの必要性が高まっていることから、これらの業務遂行における参考材料を提供できることも重要な貢献であると考えています。これらのことに加えて、特に重要な貢献としては、法学者・実務家・経済学者による三者協働を促進する場として機能することにあります。CPRC設立以降、三者協働により各分野の作法や考え方についての相互理解が進み、同じ独禁法事案であっても各分野で重視する観点が異なることがあるなど、各分野の相違点が共有できるようになっていると思います。違いは違いとして認めた上で、各分野が貢献できることを理解して協働の場を提供することは重要な責務であると考えています。

末筆となりますが、CPRCの活動にご理解を示していただきご協力頂いている法学者・実務家・経済学者の皆様に対して御礼を申し上げるとともに、今後も関連する法学者・実務家・経済学者の皆さまにCPRCを三者交流の場としてご活用いただくことを通じてお力添え頂けることを切に願っております。

2022年4月  競争政策研究センター 所長 松島法明  

 

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