ホーム > CPRC >

内部向けイベント

>

ワークショップ

>

第115回ワークショップの概要

第115回ワークショップの概要

 第115回ワークショップ(最終報告)が3月30日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

(1)「標準化活動におけるホールドアップ問題への対応と競争法」の最終報告

 報告者
 (西村暢史 CPRC客員研究員・中央大学法学部准教授)
 (西川康一 CPRC研究員・相談指導室長)
 (後藤大樹 CPRC研究員・相談指導室)
 (西村元宏 CPRC研究員・経済調査室)

 平成23年度の共同研究の一つである本研究は,標準化活動(事業活動の基盤となる技術標準や規格を共同で策定する活動)の一環として,標準や規格に取り込まれた技術に含まれる特許を利用する際の条件について利用者が情報交換する行為に対し,我が国の独占禁止法においてどのように考えるべきか検討するものです。このような行為については,一種の購入カルテルに該当し得るものであり,原則違法と考えるべきだとする指摘がある一方,近年,米国及びEUの競争当局が,このような情報交換を肯定的に評価する動きがみられます。そこで,本研究は,米国及びEUの競争当局の考え方について調査及び考察を行うとともに,我が国における独占禁止法の運用に対する示唆を得ることを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,本研究の結果及び最終報告書の構成等について報告がありました。
 報告を受け,参加者から,標準化活動におけるホールドアップ問題(注1)へ対応する過程で生じる逆ホールドアップ問題(注2)について検討しているが,研究開発専門企業に比べてメーカーがライセンサーの場合は,それほど深刻な弊害が生じるのか疑問である旨のコメントがありました。これに対し報告者から,近年,ホールドアップ問題の弊害が大きく取り上げられ,それを防ぐため,活動に参加する競争者による共同行為を容認する動きがみられるところ,ホールドアップ問題への対応のために行われる共同行為の弊害(逆ホールドアップ問題)にも焦点を当て,我が国の独占禁止法への示唆を検討した旨の回答がありました。
 また,参加者から,同様の問題はパテントプールでも生じ得ると思われるので,その点について言及してもよいのではないかとのコメントがありました。

(注1)標準化活動を通じて規格が策定された後に,当該規格に関連する特許権が行使されて,当該規格の利用が困難となる問題。
(注2)標準化活動を通じて規格が策定される前に,当該規格に関連する特許権について,特許権者の利益を不当に害するライセンス条件が決定される問題。

(2)「競争法の観点からみた国家補助規制-EU競争法の議論を参考に」の最終報告

 報告者
 (多田英明 CPRC客員研究員・東洋大学法学部准教授)
 (青柳由香 東海大学法学部専任講師)
 (市川芳治 慶應義塾大学経済学部非常勤講師・日本放送協会)
 (荒井弘毅 CPRC次長)

 平成23年度の共同研究の一つである本研究は,EU競争法の国家補助規制について,我が国の法体系,政策体系の中で共有すべき部分の整理・検討を行い,競争政策の観点から国家補助に対する規律を考える際の視座を得ることを目的とするものです。今回のワークショップにおいて,報告者から,まず,国家補助に対する競争政策の観点からの規律について我が国への応用可能性を探るという本研究の問題意識と報告書の構成について説明がなされ,次に,個別論点の検討と考察について各執筆担当者から報告がありました。
 報告を受け,参加者から,競争事業者がいる中で,国が主導して事業再生を行うのはどのような場合が妥当なのかという点と,国が事業再生に関わる場合において,その補助を受けた当該企業の行動の内容の是非についてどう考えるかという点について,検討してほしいとのコメントがなされました。
 また,参加者から,例えば国による日本航空に対する支援において,全日空との関係でみると国は「中立な立場」にあるといえるのかどうかといった点を明確にしていただくとともに,補助金と出資金の違い,すなわち,単にお金を出すだけなのか経営にも参画するのかでどのような違いがみられるのかついても検討していただきたいとのコメントがなされました。
 さらに,参加者から,国家補助による競争のゆがみは国内市場のみにおいてみるのか,グローバル市場は考慮しないのかとの質問がなされ,これに対し,参加者から,EUでは造船や海運等の戦略的部門について,韓国等の補助金に対抗するためかなり規制が緩いが,外国の市場にも着目するのであればWTOの補助金規制が適用されるのではないかとの回答がなされました。これに関して,参加者から,企業結合規制の市場画定において世界市場を画定する場合と同様に考えればよいが,一般には域内市場をみれば足りると思われるとのコメントがなされました。これに加えて,報告者から,EUでは,例えば航空において,救済を受けている米国の航空会社は,EUの国家補助規制を受けないので域内の航空会社との格差が問題となっており,EUとしては域外でも国家補助規制が行われることを望んでいるようであるとのコメントがなされました。

ページトップへ