ホーム > CPRC >

内部向けイベント

>

ワークショップ

>

第122回ワークショップの概要

第122回ワークショップの概要

 第122回ワークショップが11月16日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

(1)「EU国家補助規制の考え方の我が国への応用について」の中間報告

 報告者
 (大久保直樹 CPRC主任研究官・学習院大学法学部教授)
 (青柳 由香 CPRC客員研究員・東海大学法学部専任講師)
 (安藤 至大 CPRC客員研究員・日本大学大学院総合科学研究科准教授)
 (市川 芳治 慶應義塾大学法科大学院非常勤講師・NHK)
 (多田 英明 CPRC客員研究員・東洋大学法学部准教授)
 (宮澤信二郎 神戸大学大学院経済学研究科特命准教授)
 (笠原 宏 CPRC研究員・調整課長)
 (宇津木達郎 CPRC研究員・調整課)
 (白石 幸輔 CPRC研究員・調整課)
 (久野 慎介 CPRC研究員・調整課)
 (多賀根 健 CPRC研究員・経済調査室)

 平成24年度の共同研究の一つである本研究は,平成23年度共同研究を踏まえ,我が国の公的支援制度について競争政策の観点からの在り方を構想する上で,EU国家補助規制の考え方がどこまで応用可能なのかを研究するものです。研究に当たっては,個別企業に対する補助として立ち現れやすく,競争への影響が鮮明であると考えられる事業再生に係る国家補助を主たる素材として用いることとしました。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,これまでの研究成果(経済学からみた公的支援の競争への影響,EU国家補助規制の外観と特徴,我が国の公的支援制度の現状等),今後の研究の方向性及び最終報告に向けた今後の検討課題について説明がなされました。
 報告を受けて,参加者から,国家補助規制における日・EU間の組織的な枠組み(公正取引委員会と欧州委員会の立場)の違いを十分に認識する必要があるのではないかとの指摘や,国家補助規制の経済学的な分析に当たっては,市場内競争への影響だけでなく他の市場との関係で生じる影響も考慮するなど,国家補助及びその規制の波及効果がどこまで及ぶかについて十分留意する必要があるのではないかとのコメントがありました。

(2)「グローバル市場における競争優位と国内市場における競争状況について」の中間報告

 報告者
 (土井 教之 CPRC主任研究官・関西学院大学経済学部教授)
 (田辺 治 CPRC研究員・企業結合課長)
 (栗谷 康正 CPRC研究員・企業結合課)
 (福永 啓太 CPRC研究員・企業結合課)
 (宮丸 栄介 CPRC研究員・企業結合課)
 (大宮 俊吾 CPRC研究員・企業結合課)
 (工藤 恭嗣 CPRC研究員・経済調査室)

 平成24年度の共同研究の一つである本研究は,グローバル競争が本格化した1990年代後半以降を対象に,国内市場における競争状況とグローバル市場における事業活動の展開能力の関係について,国内競争が国際競争優位や国際競争力に与える影響を実証的に分析し,「国内における合併・産業再編成は国際競争優位を維持・強化するために必要」という議論が妥当か否か,また,実際の合併や提携は国際競争力とどのように関連しているのか実証的に明らかにしようとするものです。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,これまでの研究成果として,[1]国際競争力の計測及び計測指標に関する過去の研究を踏まえた理論的整理,[2]産業データのクロスセクション分析,[3]韓国企業の事例分析について説明がなされました。具体的には,[1]国際競争力は海外事業展開の大きさ,競争優位の源泉,競争優位の結果の三つの要素を含むため,「国際化の程度(海外事業展開の大きさ)」,「事前的競争力(競争優位の源泉)」,「事後的競争力(競争優位の結果)」に分解して検討し,本研究ではデータが利用可能な「事後的競争力」の指標を使用して実証分析を進める旨説明され,次に,[2]国連統計の輸出シェア,産業連関表の輸出比率や産業内貿易比率,工業統計表の市場集中度や出荷金額に占める大企業の出荷金額の比率等を使用した産業データのクロスセクション分析では,市場集中度よりも産業内貿易比率や大企業比率が同輸出シェアに影響している可能性があるとの説明があり,今後,市場のダイナミズムを反映する指標を取り入れた分析を行っていきたい旨報告がなされ,最後に,[3]韓国企業の成功要因として産業集約化政策(ビッグディール)以外の企業内部の経営資源の優位性に着目した検討内容が説明されました。
 報告を受け,参加者から,韓国企業の成功要因として,ウォン安の影響を検討しているのか質問があり,報告者から,ウォン安の影響は無視できないと思われる旨回答がなされました。さらに,参加者からマイケル・ポーターの過去の研究との違いについて質問があり,報告者から,同じデータソースが利用できないため全ての結果を比較できないが,比較可能なものについては類似の結果が得られている旨,回答がなされました。

(3)「カルテル事件における立証手法の検討―状況証拠の活用について」の中間報告

 報告者
 (武田邦宣 CPRC主任研究官・大阪大学大学院法学研究科准教授)
 (泉水文雄 CPRC客員研究員・神戸大学大学院法学研究科教授)
 (長谷河亜希子 CPRC客員研究員・弘前大学人文学部准教授)
 (荒井弘毅 CPRC次長)
 (藤井宣明 CPRC研究員・審査局企画室長)
 (鈴木健太 CPRC研究員・審査局企画室)
 (金浦東祐 CPRC研究員・審査局企画室)
 (大吉規之 CPRC研究員・審査局企画室)
 (説田絢子 CPRC研究員・審査局企画室)
 (鈴木隆彦 CPRC研究員・経済調査室)

 平成24年度の共同研究の一つである本研究は,過去にCPRCが行った先行研究も参考にしながら,経済的証拠の活用可能性の検討,米国法及びEU法の研究,我が国の審判決の事例分析等を通じて,状況証拠を活用したカルテル・談合の立証手法について検討を行い,今後の公正取引委員会の審査・審判活動に対する示唆を得ることを目的とするものです。
 今回のワークショップにおいては,これまでの研究成果として,我が国のカルテル・談合事件において,状況証拠を活用し「意思の連絡」の立証を行った事例の紹介,また,欧米におけるプラスファクター(注)を活用したカルテルの立証の現状等について,報告が行われました。
 報告を受けて,参加者から,米国の裁判事例を参考として我が国における状況証拠の活用を検討をする際は,司法取引の有無等の制度の違いや立証水準の違いに留意する必要があるなどのコメントがありました。
 (注)並行行為・協調行動が存在する場合に,単独行為ではない可能性を示す傾向のある状況証拠をいう。

ページトップへ