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第137回ワークショップの概要

第137回ワークショップの概要

 第137回ワークショップが10月31日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

(1)「プラットフォームビジネスの特性の分析と合併審査上の課題」の中間報告

報告者
(大橋弘 CPRC主任研究官・東京大学大学院経済学研究科教授)
(大久保直樹 CPRC主任研究官・学習院大学法学部教授)
(池田千鶴 CPRC客員研究員・神戸大学大学院法学研究科准教授)
(大木良子 CPRC客員研究員・日本大学商学部助教)
(品川武 CPRC研究員・企業結合課長)
(荒井弘毅 CPRC次長・経済研究官)
(橋本庄一郎 CPRC研究員・企業結合課)
(工藤恭嗣 CPRC研究員・経済調査室)
(瀬戸口丈博 CPRC研究員・経済調査室)

 平成26年度の共同研究の一つである本研究は,プラットフォームビジネスの業界構造やビジネスモデルを検証し,プラットフォームビジネスにおける競争上の特性を分析・把握した上で,こうした特性を有する分野の水平合併審査に当たって考慮すべき問題について調査研究することを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,[1]経済学の観点からは,プラットフォーム間の合併後において,プラットフォームが設定する価格や取引機会はどのように変化するかについての理論分析として,2つの同質的なプラットフォームが合併した場合,一方の利用者が1つのプラットフォームしか利用しない状況では,合併前は利用者の獲得競争が行われ,価格が低く抑えられるのに対し,合併後は価格が高くなる可能性があること,取引の機会は合併の前後で変化がない旨報告がなされました。次に,実証分析として市場の画定と価格上昇圧力の手法が取り上げられ,前者については需要関数及び費用関数の推定による画定方法,後者については合併後に価格を引き上げる誘引の有無を判断する上で市場間の相互関係(間接的ネットワーク効果)を検討する必要性がある旨報告がなされました。[2]法学の観点からは,プラットフォーム間の合併の際における市場画定の考え方(市場の双方向性をどのように考慮するか)について海外当局の具体的事例を交えながら説明がなされました。具体的には,プラットフォームの類型として取引型(例えばオークションサイト)と非取引型(例えば新聞・雑誌)に大別され,前者では2つの顧客群を含む1つの市場を画定し,後者では顧客群ごとに2つの市場を画定する考え方がある。
 報告を受け,参加者から,エージェンシーモデルとホールセールモデルで価格の決定権が異なるところ,各モデルに分けて分析を行ってはどうか,供給者と需要者が直接取引を行う場合とプラットフォームが取引を仲介する場合における商品・役務に関する情報の非対称性についての差異に注目した分析を行ってはどうか,日本における市場の双方向性を考慮した企業結合分析事例についても分析対象としてはどうかなどといったコメントがありました。

(2)「非ハードコアカルテルの違法性評価の在り方」の中間報告

報告者
(泉水文雄 CPRC客員研究員・神戸大学大学院法学研究科教授)
(宮井雅明 CPRC客員研究員・立命館大学法学部教授)
(齊藤高広 CPRC客員研究員・金沢大学人間社会研究域法学系教授)
(井畑陽平 CPRC客員研究員・椙山女学園大学現代マネジメント学部准教授)
(遠藤光 CPRC研究員・相談指導室長)
(新田高弘 CPRC研究員・経済調査室)
(佐藤範行 CPRC研究員・経済調査室)

 平成26年度の共同研究の一つである本研究は,非ハードコアカルテルの違法性の評価の判断枠組み及び判断基準について,環境分野その他の分野を中心として,日米EUの比較法研究の観点から分析すること等を目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,これまでの研究成果として,[1]米国の関連では,米国における判例,DOJのビジネス・レビュー・レター及びFTCのアドバイザリ・オピニオン,アドボカシー・レター等の概要,[2]EUの関連では,EU条約の規定の構造,関連ガイドライン及び決定・判例等の概要について,[3]日本については,ガイドラインの分析及び相談事例集の諸事例について説明がなされました。
 報告を受け,参加者から,(1)米国で,「合理の原則」が採用された訴訟において,原告が敗訴するのはどういう理由か,(2)公益に資する効果(公益性)があることを理由として,反競争的効果を有する非ハードコアカルテルについて,違法性がないと判断した事例はあるか,との質問がなされました。これに対し,報告者から,(1)については,米国でもFTCなど行政機関が原告となる事件では,きめ細かく証拠収集及び認定がなされることから,「合理の原則」を採用しようと「Quick look」を採用しようと訴訟の結論に影響はなく行政機関が勝訴している。合理の原則を適用して原告が敗訴している事例の多くは民事訴訟であり,このような訴訟は,訴訟内容が一見して反競争的ではないことが明白であるものが多く,また,訴訟において,反競争的効果についての疎明方法として,経済分析を用いる場合もあるが,当事者間で学術論争に陥ってしまい,裁判官が反競争的効果に係る心証を得難いという実態があるとの回答がなされました。また,(2)については,米国の判例及びEUの判決の中では,非ハードコアカルテルについて,公益性を理由として違法性がないとされた事例はなかった,との回答がなされました。

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