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第141回ワークショップの概要

第141回ワークショップの概要

 第141回ワークショップが6月19日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

(1)「企業結合審査における輸入圧力等の評価に係る事後検証」の研究計画

報告者
(大橋弘 CPRC主任研究官・東京大学大学院経済学研究科教授)
(中川晶比兒 CPRC客員研究員・北海道大学大学院法学研究科准教授)
(中村豪 CPRC客員研究員・東京経済大学経済学部教授)
(品川武 CPRC研究員・企業結合課長)
(小俣栄一郎 CPRC研究員・企業結合課)
(田邊貴紀 CPRC研究員・経済調査室長)
(工藤恭嗣 CPRC研究員・経済調査室)
(瀬戸口丈博 CPRC研究員・経済調査室)
(川島裕司 CPRC研究員・経済調査室)

 平成27年度の共同研究の一つである本研究は,企業結合審査の際に,輸入圧力や隣接市場からの競争圧力に係る評価を行うに当たって踏まえるべき視点や採るべき手法等について検討し,我が国における企業結合審査において競争圧力の存否について評価する上での示唆を得ることを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,研究内容として[1]経済学の観点から,輸入圧力や隣接市場からの競争圧力を評価する際に,踏まえておくべき視点を明確にし,評価に用いることができる手法等を整理するとともに,我が国における過去の企業結合事案を参考として,上記の視点や手法の適用可能性などを定性的・定量的な観点から検討する,[2]法学の観点から,輸入圧力や隣接市場からの競争圧力についての海外当局の考え方をサーベイし,我が国の実務への示唆を探る旨の報告がありました。
 報告を受け,参加者から,(1)輸入圧力にフォーカスを当てて検証を行うとのところ,これは市場が日本国内に限定されているということが前提とされているのか,それとも,市場画定の妥当性についても検証の対象となるのか,(2)アメリカでは,輸入圧力について個別に検討を行うのではなく,市場画定の段階で考慮しているように思われるところ,輸入圧力を考慮して市場画定を行う場合と,市場画定の問題とは別に輸入圧力について検討を行う場合とでは,判断に実質的な違いが出てくるのではないか,また,そうであれば,その違いの有無についても研究対象としてはどうか,との質問がなされました。これに対し,報告者から,(1)について,今回の検証対象とする事例は,日本国内に市場を画定した上で,輸入圧力について検討を行ったもので,検証を行う中で,市場画定の妥当性についても検討の対象となってくるものと思われる,(2)について,その違いについては,今回の検証を進める中で論点として挙がってくるのではないかと考えられ,その際に検討したい,との回答がなされました。

(2)「諸外国における競争法適用除外制度の動向及び同制度撤廃が市場に与える影響」の研究計画

報告者
(大久保直樹 CPRC主任研究官・学習院大学法学部教授)
(齊藤高広 CPRC客員研究員・金沢大学人間社会研究域法学系教授)
(佐藤英司 CPRC客員研究員・福島大学人文社会学群経営学類准教授)
(多田英明 CPRC客員研究員・東洋大学法学部教授)
(洪淳康 CPRC客員研究員・金城学院大学生活環境学部准教授)
(和久井理子 CPRC客員研究員・立教大学法学部特任教授・大阪市立大学大学院法学研究科特任教授)
(片桐一幸 CPRC研究員・調整課長)
(十川雅彦 CPRC研究員・調整課)
(口ノ町達朗 CPRC研究員・調整課)
(工藤恭嗣 CPRC研究員・経済調査室)
(瀬戸口丈博 CPRC研究員・経済調査室)
(佐藤範行 CPRC研究員・経済調査室)
(川島裕司 CPRC研究員・経済調査室)

 平成27年度の共同研究の一つである本研究は,EU,米国,豪州,韓国等の諸外国における競争法適用除外制度の成立経緯及び近年における同制度の改正・廃止等の状況を把握し,また,競争法適用除外制度の廃止が市場に対してどのような影響を与えるかについて調査することを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,最初に,共同研究の目的及び意義が述べられました。次に,研究対象に関し,法学パートについては,欧米における動向やこれまでの検討などを踏まえ,外航海運及び国際航空に係る適用除外制度の2分野に絞ることとし,調査を進めていく中で,注目すべき国,動向等があれば,適宜研究対象に加える旨の研究方針が示されました。続いて,各国の外航海運及び国際航空に係る適用除外制度についての先行研究,問題の所在,現状について説明がなされました。経済学パートについては,まず,経済学的観点から諸制度を評価する上での前提となる問題意識及び先行研究について説明がなされ,次に,研究の方針として,適用除外カルテルの非価格行動(例:需給動向の情報交換等)が市場に与える影響について更にサーベイし,十分なデータが入手できた場合,適用除外カルテルと非価格行動に関する実証分析を検討することなどの報告がなされました。
報告を受け,参加者から,(1)外航海運に係る適用除外制度は,EUでは廃止され,米国でも制度変更がなされている一方で,日本における適用除外制度見直しの議論の中では,日本においてのみ適用除外制度が廃止され,日本航路においてのみ競争が激化すると,日本航路から船舶会社が撤退することとなるから,仮に見直しを行うのであれば,他国と同時に行われるべきであるという主張があるところ,韓国やシンガポール等において適用除外の見直しに関し,国内でどのような議論がなされているのかについて調査をしてほしい,(2)外航海運の分野において,運賃の動きについては中国の存在は大きな影響を与えているように思われるので,実証分析を行う際に対象に加えてはどうか,とのコメント及び質問がなされました。これに対し,報告者から,(1)については,シンガポールでは,最近,適用除外制度の延長をパブリックコメントに付したところであるが,その議論の中でも日本と同様の議論がなされており,周辺国との間でお見合い状態になっているようであり,そのような事情についても調査していきたい,(2)のうち,まず,中国に限らず運賃の動きについては,航路別の平均運賃指数のデータであれば容易に入手できるものの,航路によって品目・重量が異なっており,大雑把な実証分析しかできず十分な分析とはいい難い。詳細な実証分析を行うには品目・重量ごとのデータ,取り分け運賃データが必要であるが,これらのデータの入手が難しいようであることから,適用除外制度が非価格的な要素に何らかの影響を与えているのではないかといった観点から先行研究をサーベイしたいと考えている。また,調査対象国に中国を含めるかどうかについては検討中である,との回答がなされました。

(3)「独占禁止法違反行為の端緒探知ツールとしてのスクリーン手法に関する研究」の研究計画

報告者
(武田邦宣 CPRC主任研究官・大阪大学大学院法学研究科教授)
(中林純 CPRC主任研究官・東北大学経済学部准教授)
(西脇雅人 CPRC客員研究員・早稲田大学高等研究所准教授)
(工藤恭嗣 CPRC研究員・経済調査室)
(瀬戸口丈博 CPRC研究員・経済調査室)
(小野香都子 CPRC研究員・経済調査室)
(新藤友理 CPRC研究員・経済調査室)

 平成27年度の共同研究の一つである本研究は,[1]スクリーン手法に係る学術研究の調査や諸外国の競争当局の活用事例の収集等を通じて,スクリーン手法の種類及びその特徴について把握するとともに,[2]我が国で独占禁止法上問題となった事例を材料として,各スクリーン手法を用いてシミュレーションを実施し,その有効性について検証を行い,我が国におけるスクリーン手法の導入の是非について検討する際の基礎資料とすることを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,上記のとおり,研究の目的,研究手法等について説明がなされました。
 報告を受け,参加者から,カルテルと入札談合とでは,分析手法が大きく異なることから,研究を進める上では,この違いを踏まえて検討されるべきである,スクリーン手法については,各国間で哲学に違いがあり,海外競争当局の制度的背景について理解しておくことは有益である,韓国においては,入札談合の立件率が高く,その背景には入札データの情報収集が内部告発やリニエンシーにつながっているとも考えられるため,どのような運用をしているのかについて,ヒアリングを行ってみてもよいのではないかなどのコメントがなされました。
 また,スクリーン手法は,モニタリングされていることを周知することで,事業者の違反行為を抑止する効果を狙ったものであるのか,あるいは実際に違反事件の摘発・立証に役立つ情報を獲得するための探知を行うものであるのか,どちらを主目的として実施されているかについて質問がなされました。これに対し,報告者から,各国の競争当局において,まだ本格的な導入が進んでいるわけではないようであるが,理論的には違反行為の抑止にも違反事件の探知にも資するものであると考えている,との回答がなされました。

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