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第143回ワークショップの概要

第143回ワークショップの概要

 第143回ワークショップが11月20日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

(1)「企業結合審査における輸入圧力等の評価に係る事後検証」の中間報告

報告者
(大橋弘 CPRC主任研究官・東京大学大学院経済学研究科教授)
(中川晶比兒 CPRC客員研究員・北海道大学大学院法学研究科准教授)
(中村豪 CPRC客員研究員・東京経済大学経済学部教授)
(品川武 CPRC研究員・企業結合課長)
(小俣栄一郎 CPRC研究員・企業結合課)
(瀬戸口丈博 CPRC研究員・企業結合課)
(岩宮啓太 CPRC研究員・経済調査室)
(工藤恭嗣 CPRC研究員・経済調査室)
(川島裕司 CPRC研究員・経済調査室)

 平成27年度の共同研究の一つである本研究は,企業結合審査の際に,輸入圧力や隣接市場からの競争圧力に係る評価を行うに当たって踏まえるべき視点や採るべき手法等について検討し,我が国における企業結合審査において競争圧力の存否について評価する上での示唆を得ることを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,これまでの研究成果として,[1]経済学の観点から,実際の企業結合事例を一つ取り上げ,対象商品の合併前後の価格の変化を分析した結果を報告し,[2]法学の観点から,EUの企業結合事例における輸入圧力の評価,考え方を紹介し,[3]実務の観点から,企業結合審査における,輸入圧力及び隣接市場からの競争圧力の位置付けを説明しました。
 報告を受け,参加者から,(1)分析結果について,例えば,すぐに輸入品が国内に入ってくるかどうかを把握するなどして,輸入に関するタイムラグの問題を考慮に入れる必要はないか,との質問がなされました。これに対し,報告者から,分析は月次データに基づき行っているところであるが,そのようなタイムラグも問題となるかもしれないため,検討したい,との回答がなされました。
 また,(2)EUの事例について,輸入のシェアが相当大きく,輸入先の国・地域が具体的に分かっているという印象を受けるが,例えば,欧米では具体的な輸入先が目に見えているから市場画定の段階で考慮するというように,輸入の存在の大きさの違いが,欧米と我が国での輸入圧力に係る考慮段階の違いに反映されているということは考えられないか,との質問がなされました。これに対し,報告者から,欧州では,当事会社の合計シェアが20%以上となる全ての市場で,シェアが5%以上の競争事業者を特定することが求められるから,その程度の輸入は事前届出段階で特定されるが,輸入のシェアが小さい場合は割り切る傾向にあると考えられるところ,欧州と我が国における輸入の存在の大きさという相違については同感である,との回答がなされました。
 さらに,(3)輸入圧力の考慮について,例えば欧州では,EEAという国境の障壁が低い地理的範囲が存在するため,輸入圧力を市場画定の段階で対応しているのに対し,我が国では,地理的にも日本製品のホームバイアスという点からも隔離されているため,まずは国内市場として市場を画定するが,実際の市場はそれを越えているということを念頭に,輸入圧力を競争評価において考慮することで当該地理的範囲を中和している,と整理できないだろうか,との質問がなされました。これに対し,報告者から,欧州については,当事会社が争うかどうかによるところがあるが,輸入圧力は,市場画定の段階と競争評価の段階のどちらでもよいし,両方ででも考慮できると考えられる,との回答がなされました。次いで,我が国においても,輸出企業について市場の中のプレーヤーと認定できるだけの情報があれば,当該情報を踏まえて市場を画定することになると考えられるが,そのようなプレーヤーかどうか分からない,あるいは将来(1年超2年以内)プレーヤーになることは分かっているという場合は,輸入圧力として整理するというのが一般的であると考えられる,との回答がなされました。

(2)「独占禁止法違反行為の端緒探知ツールとしてのスクリーン手法に関する研究」の中間報告

報告者
(武田邦宣 CPRC主任研究官・大阪大学大学院法学研究科教授)
(中林純 CPRC主任研究官・東北大学経済学部准教授)
(西脇雅人 CPRC客員研究員・早稲田大学高等研究所准教授)
(工藤恭嗣 CPRC研究員・経済調査室)
(能勢弘章 CPRC研究員・経済調査室)
(小野香都子 CPRC研究員・経済調査室)
(新藤友理 CPRC研究員・経済調査室)

 平成27年度の共同研究の一つである本研究は,スクリーン手法に係る学術研究の調査や諸外国の競争当局の活用事例の収集等を通じて,スクリーン手法の種類及びその特徴について把握するとともに,我が国で独占禁止法上問題となった事例を材料として,各スクリーン手法を用いてシミュレーションを実施し,その有効性について検証を行い,我が国におけるスクリーン手法の導入の是非について検討する際の基礎資料とすることを目的としています。
 今回のワークショップにおいては,報告者から,研究の対象について,本研究におけるスクリーン手法の定義や分類,先行研究等に基づくスクリーンの役割や必要性,課題についての説明がなされました。また,本研究のスクリーン3分類ごとのスクリーン手法について,暫定的なシミュレーションの結果についての報告がなされました。 
 報告を受け,参加者から,[1]スクリーン手法の3つの分類の関係性について質問がなされました。これに対し,複数の手法を紹介したが,これらを個別に使ったり組み合わせたりすることを想定しており,また,手法により使う情報が異なるものの,場合によっては3分類のスクリーン手法を全て組み合わせることも可能であるとの回答がなされました。
 また,[2]先行研究でいわれているスクリーンの有用性に関して,リニエンシーの申請を後押しするとの説明があったが,これは具体的にはどういうことなのかとの質問がなされました。これに対し,報告者から,スクリーン手法により摘発率を向上させることで,企業のリニエンシーのインセンティブを高めることにつながることも考えられるとの回答がなされました。

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