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第60回ワークショップの概要

第60回ワークショップの概要

 第60回ワークショップが7月11日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです(かっこ内は担当客員研究員及び研究員を表す。)。

(1)「戦後経済法学の軌跡と展開-課徴金制度の立案過程に係る歴史的証言-」の研究計画

 (CPRC主任研究官・名古屋大学大学院法学研究科准教授 林 秀弥 氏)
 (CPRC研究員・経済調査室 栗谷 康正 氏)
 (CPRC研究員・経済調査室 中條 玲子 氏)

 平成20年度の共同研究の一つである本研究は,経済法学者へのインタビューを通じて,独禁法の昭和52年改正の意義について,歴史的営為として特に課徴金制度の立案過程を記録することを目的とするものです。
 今回のワークショップでは,報告者から,研究の目的・意義・内容等について計画の紹介が行われたほか,インタビュー対象候補者等についても説明が行われました。
 報告を受け,参加者から,昭和22年原始独禁法はカルテルをどのように抑止しようと想定していたのか,昭和52年改正時には課徴金の水準がカルテルを抑止するために十分かどうかといった議論は行われたのか等の質問がなされ,報告者から,適宜説明が行われました。また,昭和52年改正当時,公正取引委員会の法改正担当者が米国やドイツなどの競争当局の例をどのようにとらえていたか等インタビューすることや,原状回復命令(価格引下げ命令)のみならず他の改正検討項目との関連性を調べることも有意義ではないかとのコメントがなされました。さらに,長い間行政制裁が定着しなかった我が国において課徴金制度が導入されたことは画期的であり,その立案過程を明らかにしようとする本研究は口頭資料を集めるだけでも意義があるとのコメントがなされました。

(2)「並行的排除行為規制の妥当性とその手法に関する研究」の研究計画

 (CPRC客員研究員・東北大学大学院法学研究科准教授 滝澤 紗矢子 氏)
 (CPRC研究員・経済調査室 荒井 弘毅 氏)
 (CPRC研究員・経済調査室 松八重 泰輔 氏)

 平成20年度の共同研究の一つである本研究は,上流市場で複数の事業者が意思の連絡はないものの並行的に排除行為を行うことにより,下流市場で競争機会が十分確保されていないと評価できる場合に,いかなる法規制を行うべきかを検討することを目的とするものです。
 今回のワークショップでは,報告者から,研究の目的・計画の詳細・研究日程等について説明が行われました。
 報告を受け,参加者から,新規に取引を申し込んだ事業者に対する単独の取引拒絶については,違反になることはほとんどないというのが現在の規制の現状だと考えられるので,取引拒絶から話を始めるよりも,違法性について広く了解のある排他条件付取引から話を始めた方が無難ではないか,加えて,一般的な取引拒絶よりも排他条件付取引の方が経済学でも既存の研究の蓄積が進んでいるため,本研究のように法学者が経済学者と協働する場合には,経済学者にとって馴染みのあるモデルから始めた方がよいのではないかという意見が出されました。さらに,因果関係論に関する法学的検討で,企業結合規制における「協調的行動による競争の実質的制限」の議論を参照するとされているが,並行的排除行為は協調的行動と問題状況が違っているのではないかという指摘がなされました。また,並行的排除行為の競争効果を検討するに当たっては,関係特殊投資(relation-specific investment)の有無や契約の内容等をみることにより,スイッチングの容易性を分析することがポイントとなるのではないかとのコメントがなされました。

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