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第72回ワークショップの概要

第72回ワークショップの概要

 第72回ワークショップが4月24日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

(1)「双方向市場の経済分析」の共同研究最終報告

 (CPRC主任研究官・東京大学大学院経済学研究科准教授 大橋 弘 氏)
 (CPRC研究員・経済調査室 砂田 充 氏)

 平成20年度の共同研究の一つである本研究は,雑誌市場の実証分析を通じて,近年注目を集めている双方向市場とプラットフォームに対する競争政策の在り方に1つの示唆を与えることを目的とするものです。
 今回のワークショップでは,報告者から,実証分析の結果について説明が行われました。
 報告を受け,参加者から,読者と広告主の需要関数において異なる地理的範囲を設定しているのはなぜかとの質問がなされ,報告者から,雑誌の内容や広告の特徴及び読者と広告主の効用関数に関する様々な仮定によるものであるとの説明がなされました。また,双方向市場ではプラットフォーム(の運営事業者)はシステム全体の利潤最大化を行っているため,一定のユーザー向け価格が費用を下回るような場合でも,直ちに不当廉売と断定できない場合がある旨の説明がなされたところ,企業にとって合理的な戦略が社会にとって望ましいとは限らないのではないかという意見が出されました。さらに,読者の需要関数では広告量の係数がマイナスと推計されていることについて議論がなされました。このほか,双方向性を考慮すると,著作物再販制度はどのように評価されるのかとの質問がなされ,著作物再販制度には出版社にとってメリット,デメリットの両方があり得るのではないかとの返答がなされました。

(2)「戦後経済法学の軌跡と展開‐課徴金制度の立案過程に係る歴史的証言‐」の共同研究最終報告

 (CPRC主任研究官・名古屋大学大学院法学研究科准教授 林 秀弥 氏)
 (CPRC研究員・経済調査室 栗谷 康正 氏)
 平成20年度の共同研究の一つである本研究は,経済法学者等へのインタビューを通じて,独禁法の昭和52年改正の意義について,歴史的営為として特に課徴金制度の立案過程を記録することを目的とするものです。
 今回のワークショップでは,昭和52年改正当時,公正取引委員会事務局の職員として,課徴金制度の立案過程に携わった方へのインタビューの概要を中心に報告が行われました。
 報告を受け,参加者から,課徴金制度を提案する際に西ドイツ競争法の過料制度を参考としたのはなぜかという質問がなされ,報告者から,西ドイツの場合,いわゆる刑事罰と行政命令違反に対するGeldbusse(過科)とを峻別しているところ,競争制限禁止法違反のほとんどの場合にGeldbusseを科していたことからみて,Geldbusseは刑事罰に代わるものという発想が強く,我が国でも,独占禁止法違反の場合に刑事罰を機動的に発動することは現実問題として難しいため,刑事罰の機能に代替し得るものとして課徴金制度の導入を検討する際,西ドイツ競争法の過料制度を参考としたのではないかとの回答がなされました。また,課徴金の賦課・算定に関する公取委の裁量性が否定されたのはなぜかとの質問がなされ,課徴金と刑事罰の二重処罰の問題のほか,公取委における事務処理の負担増やcorruptionの可能性が懸念されたようであるとの回答がなされました。さらに,公取委試案等では不当利得をどのように算定しようとしていたのかとの質問がなされ,少なくとも入札談合について前後理論を適用するといった今日のような議論がなされた形跡はないとの回答がなされました。このほか,当時と現在の独禁法改正における論点には共通するものも多く,本研究のような歴史研究には学術的研究以上の意義があるのではないかとのコメントがなされました。

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