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第73回ワークショップの概要

第73回ワークショップの概要

 第73回ワークショップが5月8日(金曜)に開催されました。報告等の概要は以下のとおりです。

(1)「合併の事後検証」の研究計画

 (CPRC所長・一橋大学大学院経済学研究科教授 小田切 宏之 氏)
 (経済調査室 秋山 高範 氏)
 (CPRC研究員・経済調査室 荒井 弘毅 氏)ほか

 平成21年度の共同研究の一つである本研究は,平成15年度の類似の共同研究も参考に,より最近の合併事例について事後検証を行い,効率性の向上が実現されたかどうか,イノベーションが促進されたかどうか,問題解消措置が適切であったかどうか等を明らかにすることを目的とするものです。
 今回のワークショップでは,報告者から,研究計画について報告が行われました。
 報告を受け,参加者から,過去1~2年の事例を分析対象とする場合,合併の効果を検証するために財務データ等では十分な期間のデータを得ることができないのではないかとの指摘がなされました。これに対し,報告者から,そのような問題点が存在することは否定できないものの,合併がアナウンスされた直後の株価の動きに関するデータを補完的に用いることができるのではないかとの説明がなされました。また,参加者から,イノベーションが促進されたかどうかをどのように計測するのかとの質問がなされ,報告者から,様々な問題や議論はあるものの,特許数を研究開発費で割った値がイノベーションの生産性として一般的に用いられている指標であると考えられるとの説明がなされました。さらに,参加者から,合併がライバル企業の研究開発活動に与えた影響を分析することも有益ではないかとのコメントがなされ,報告者から,コメントを踏まえ,検討することとしたいとの説明がなされました。

(2)「技術開発のインセンティブ分析」の研究計画

 (CPRC客員研究員・大阪大学社会経済研究所准教授 松島 法明 氏)
 (CPRC研究員・経済調査室 荒井 弘毅 氏)
 (CPRC客員研究員・神戸大学大学院法学研究科教授 泉水 文雄 氏)
 (CPRC客員研究員・大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授 石橋 郁雄 氏)

 平成21年度の共同研究の一つである本研究は,垂直的取引契約における非係争条項が川下事業者の技術開発に対するインセンティブに与える効果を分析するものです。
 今回のワークショップでは,報告者から,研究計画や分析の基本モデルについて報告が行われました。
 報告を受け,参加者から,(1)川下事業者の努力水準の次元を増やしてはどうか,(2)川下事業者の費用構造が非対称的な場合も分析してはどうか,(3)川上市場が競争的な場合も分析してはどうかとのコメントがなされ,報告者から,コメントを踏まえ,検討することとしたいとの説明がなされました。また,参加者から,共同研究開発投資に関する先行研究の分析フレームワークとどのように異なっているのかとの質問があり,報告者から,川上事業者による「技術の漏出」に関する選択をモデルに含めることにより,先行研究との差別化を図ることができるのではないかとの説明がありました。さらに,参加者から,非係争条項それ自体は必ずしも反競争的ではないが,川上事業者の地位によって反競争的になり得るということではないか,また,川上事業者から川下事業者に対する中間財の価格がゼロであっても,非係争条項が反競争的な結果をもたらし得ることを示すこと考えられないかとのコメントがなされました。

(3)「連続寡占市場における企業行動の反競争効果に関する研究」の研究計画

 (経済調査室 水野 倫理 氏)
 (CPRC客員研究員・富山大学経済学部准教授 西村 暢史 氏)
 (CPRC研究員・経済調査室 荒井 弘毅 氏)

 平成21年度の共同研究の一つである本研究は,連続寡占市場における企業行動による反競争効果について分析するものです。特に,先行研究においても議論の余地があるとされている垂直的企業結合の反競争効果に着目しています。
 今回のワークショップでは,報告者から,研究の目的や分析の基本モデルについて報告が行われました。
 報告を受け,参加者から,企業間で費用構造が非対称な場合を想定して分析することは可能であるかとの質問があり,報告者から,今回使用したモデルは単純なものであるので,そのような拡張は可能であるとの説明がありました。また,参加者から,(1)分析対象は連続寡占市場とされているものの,今回のモデルは川上市場が独占になっているのでないか,(2)垂直的企業結合によって川上企業の固定費用がゼロになると想定されているところ,どのような固定費用がこれに該当するのかについて説明する必要があるのではないか,(3)川上市場がわずかに効率性の劣る企業が存在する等独占ではない場合や川下企業が自ら中間財を生産できる場合も分析してはどうかとの指摘・コメントがなされました。さらに,参加者から,中間財価格について川下企業が提案できる場合や交渉によって決まる場合を分析してはどうかとのコメントがなされ,報告者から,交渉については結果に影響を与えると思うが,川下企業による提案についてはどのような影響を与えるか分からないので,今後分析したいとの説明がありました。

(4)「競争政策の軌跡と展開」の研究計画

 (CPRC研究員・経済調査室 荒井 弘毅 氏)
 (CPRC主任研究官・名古屋大学大学院法学研究科准教授 林 秀弥 氏)
 (CPRC客員研究員・慶應義塾大学産業研究所准教授 石岡 克俊 氏)
 (専修大学法学部准教授 伊藤 武 氏)
 (CPRC・経済調査室 栗谷 康正 氏)

 平成21年度の共同研究の一つである本研究は,これまでのインタビューを通じた歴史的アーカイブ蓄積事業を引き継ぐものです。今後,テーマを選定するとともに,オーラル・ヒストリー研究に関する確立された手法を活用し,効果的にインタビューを実施していくことを目指しています。。
 今回のワークショップでは,報告者から,研究計画について説明が行われるとともに,参加者との間で,テーマについて議論が行われました。
 報告を受け,参加者から,(1)独占禁止法や国際経済法を専門とする著名な学者・弁護士に対するインタビューを実施してはどうか,(2)日米構造協議はインパクトの大きい出来事であり,テーマに値するのではないか,(3)石油カルテル事件もインパクトの大きい出来事であり,産業政策と競争政策の関係との大きなテーマの下,取り上げてはどうか,(4)過去の出来事のみならず,現在進行している出来事をテーマとしてインタビューを実施し,記録として残しておくことも重要なのではないか等の様々なコメントがなされました。また,報告者と参加者の間で,記録の保存方法や公開方法についても議論がなされました。

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