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日韓談合ミニカンファレンスの概要について

日韓談合ミニカンファレンスの概要について

平成17年1月25日

 競争政策研究センター(CPRC)は,1月17日(月曜),東京大学大学院経済学研究科(市場経済と非市場機構の連関研究拠点)及びソウル大学(企業競争力研究センター)と「日韓談合ミニカンファレンス」を開催いたしました。

1 日時・会場

日時 平成17年1月17日(月曜)13時~17時
会場 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学経済学部6階会議室

2 プログラムの概要

主催者 東京大学大学院経済学研究科21世紀COEプログラム 「市場経済と非市場機構との連関研究拠点」(CEMANO)
ソウル大学 企業競争力研究センター
東京大学大学院経済学研究科付属日本経済国際共同センター(CIRJE)
競争政策研究センター(CPRC)
テーマ 「談合の経済学:日本と韓国の事例から」
セッション1 「1998年~2000年の韓国軍石油調達における入札談合の経済損失の算定」
ソウル大学経済学部 Sonku Kim, Keunkwan Ryu, Sang-seung Yi
韓国経済研究院 Inkwon Lee
セッション2 「日本の談合についての実証分析」
東京大学大学院経済学研究科・経済学部助教授,CPRC客員研究員 柳川範之
経済産業研究所、CPRC客員研究員 木村友二
CPRC研究員 鈴木淑子

3 概要紹介(文責: CPRC事務局)

 ソウル大学からは「軍納油入札談合民事訴訟における損害額鑑定のための計量経済分析(Econometric Damage Estimation from the Bid Rigging in the Korean Military Oil Procurement Auctions during 1998-2000)」というテーマでプレゼンテーションがありました。

 これは,1998年から2000年にかけて行われた製油5社の入札談合により国防部が被った被害額について,ソウル大学校経済研究所企業競争力研究センター(CCC)が計量経済学的手法を用いて推定したものです。談合状態下における国防部が発注する油の入札の落札価格(軍納落札価格)と国防部以外が発注する油の入札の落札価格(非軍納落札価格)の差分から競争状態における軍納落札価格と非軍納落札価格の差分を差し引く「二重比較方法(difference in difference method)」を用いて,軍納市場と非軍納市場の間の時期的な価格差異をコントロールし,純粋な談合による損害額が推定できるとの報告がなされました。
 また,この分析はOLSとWLSという2つの手法を用いて行われているのですが,フロアからは,主にこの2つの手法を用いること,特にWLSを用いることの意義について質問がありました。これについては,今回の分析では,WLSを,通常の不均一分散問題のために用いているのではなく,モデルの特定化の誤りの問題から生じる推計のバイアスに対処するために用いているという,新しい手法についての説明がありました。

 ※ なお,平成17年1月25日から同年2月4日までの期間,本HPに掲載しておりました内容について,報告者の報告内容を正確に反映していない箇所がありましたので,お詫びして訂正させていただきます。

 一方,日本側からは,今年度の共同研究「入札談合の経済分析(An empirical analysis about Japanese ‘Dango’)」について,研究経過報告が行われました。センター客員研究員である木村友二さん(経済産業研究所スタッフ)がプレゼンテーションを行い、その後に、柳川範之先生(東京大学大学院経済学研究科・経済学部助教授)と共に参加者からの質問やコメントに答えました。

配布資料: 本体(PDF:1,716KB) スライド(PDF:71KB)

 この研究は、国内の3つの地方自治体で行われた入札談合事案について,公正取引委員会の立入検査前を談合状態,立入検査後を競争状態と想定することにより,競争状態と談合状態におけるデータから企業の入札行動を比較検討したものです。その結果、競争状態では企業が稼働率(各業者がそれぞれの入札日から遡って3ヶ月以内に落札した価額の合計を当該業者が本分析期間中のその最高価額で除したもの)を代理変数とする費用条件に見合った値付けをする傾向がみられる一方,談合状態ではこうした傾向が観察されないとの報告がなされました。その後,稼働率を費用条件の代理変数することや,そもそも公正取引委員会の立入検査後を競争状態と想定することについて,フロアから,特にソウル大学関係者から質問がなされました。
 費用条件については、入手できるデータの制約の中で適当と思われるものを用いたこと、競争状態の想定については、確かに初めから競争していると考えることはできないかもしれないが、ここでの分析結果は競争的な状況の理論予測と整合的であるとの説明がなされました。 仮定については立入検査後に違反行為をやめていることは公正取引委員会の認定からもれっきとした事実である旨の説明がなされました。

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