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企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針

はじめに 1

第1 企業結合審査の対象 3
1 株式保有 3
(1)会社の株式保有 3
(2)会社以外の者の株式保有 4
(3)結合関係の範囲 4
(4)企業結合審査の対象とならない株式保有 5
2 役員の兼任 5
(1)役員の範囲 5
(2)役員兼任による結合関係 5
(3)結合関係の範囲 6
(4)企業結合審査の対象とならない役員兼任 6
3 合併 6
(1)合併 6
(2)結合関係の範囲 7
(3)企業結合審査の対象とならない合併 7
4 分割 7
(1)共同新設分割・吸収分割 7
(2)結合関係の範囲 7
(3)事業の重要部分 7
(4)企業結合審査の対象とならない分割 8
5 共同株式移転 8
(1)共同株式移転 8
(2)結合関係の範囲 8
(3)企業結合審査の対象とならない共同株式移転 8
6 事業譲受け等 9
(1)事業等の譲受け 9
(2)結合関係の範囲 9
(3)事業又は事業上の固定資産の重要部分 9
(4)企業結合審査の対象とならない事業等の譲受け 9
(5)事業の賃借等 9

第2 一定の取引分野 9
1 一定の取引分野の画定の基本的考え方 10
2 商品の範囲 11
(1)用途 11
(2)価格・数量の動き等 12
(3)需要者の認識・行動 12
3 地理的範囲 12
(1)基本的考え方 12
(2)国境を越えて地理的範囲が画定される場合についての考え方 13
4 その他 14

第3 競争を実質的に制限することとなる場合 14
1 「競争を実質的に制限することとなる」の解釈 14
(1)「競争を実質的に制限する」の考え方 14
(2)「こととなる」の考え方 15
2 企業結合の形態と競争の実質的制限 15

第4 水平型企業結合による競争の実質的制限 16
1 基本的考え方 16
(1)単独行動による競争の実質的制限 16
(2)協調的行動による競争の実質的制限 17
(3)競争を実質的に制限することとならない場合 18
2 単独行動による競争の実質的制限についての判断要素 19
(1)当事会社グループの地位及び競争者の状況 19
(2)輸入 22
(3)参入 24
(4)隣接市場からの競争圧力 26
(5)需要者からの競争圧力 26
(6)総合的な事業能力 27
(7)効率性 28
(8)当事会社グループの経営状況 28
3 協調的行動による競争の実質的制限についての判断要素 29
(1)当事会社グループの地位及び競争者の状況 29
(2)取引の実態等 30
(3)輸入,参入及び隣接市場からの競争圧力 31
(4)効率性及び当事会社グループの経営状況 32

第5 垂直型企業結合及び混合型企業結合による競争の実質的制限 32
1 基本的考え方 32
(1)単独行動による競争の実質的制限 33
(2)協調的行動による競争の実質的制限 34
(3)競争を実質的に制限することとならない場合 34
2 垂直型企業結合及び混合型企業結合による競争の実質的制限の判断要素 34
(1)単独行動による競争の実質的制限の判断要素 35
(2)協調的行動による競争の実質的制限の判断要素 35

第6 競争の実質的制限を解消する措置 35
1 基本的な考え方 35
2 問題解消措置の類型 36
(1)事業譲渡等 36
(2)その他 36

(付)禁止期間の短縮について 37

(参考)企業結合審査のフローチャート 39

企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針

平成16年5月31日
公正取引委員会
改定 平成18年5月1日
改定 平成19年3月28日
改定 平成21年1月5日
改定 平成22年1月1日
改定 平成23年6月14日

はじめに

 独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)。以下「法」という。)第4章は,会社の株式(社員の持分を含む。以下同じ。)の取得若しくは所有(以下「保有」という。)(法第10条),役員兼任(法第13条),会社以外の者の株式の保有(法第14条)又は会社の合併(法第15条),共同新設分割若しくは吸収分割(法第15条の2),共同株式移転(法第15条の3)若しくは事業譲受け等(法第16条)(以下これらを「企業結合」という。)が,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合及び不公正な取引方法による企業結合が行われる場合に,これを禁止している。禁止される企業結合については,法第17条の2の規定に基づき,排除措置が講じられることになる。
 公正取引委員会は,企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるか否かについての審査(以下この審査を「企業結合審査」という。)に関し,平成10年12月21日,「株式保有,合併等に係る『一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合』の考え方」を公表し,その考え方を明らかにしてきたところであるが,これまでの公正取引委員会の企業結合審査の経験を踏まえ,企業結合審査に関する法運用の透明性を一層確保し,事業者の予測可能性をより高めるため,「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」(以下「本運用指針」という。)を策定することとした。
また,公正取引委員会では,届出を受理した事案等のうち,企業結合を計画している事業者の参考に資すると思われる事案については,その審査内容を公表してきているところ,今後とも,企業結合審査の予見可能性及び透明性を確保する観点から,公表の充実を図っていくこととしている。企業結合を計画する場合には,本運用指針だけでなく,過去の事案の審査結果についても参照すべきものと考えられる。
 本運用指針は,まず,第1において,企業結合審査の対象となる企業結合の類型を示すとともに,第2において,一定の取引分野を画定するに当たっての判断基準を示し,第3において,「競争を実質的に制限することとなる」の意義を明らかにしている。さらに,第4及び第5において,企業結合の類型等に応じて競争を実質的に制限することとなるかどうかの検討の枠組みと判断要素を示し,第6において競争を実質的に制限することとなる企業結合の問題を解消する措置について例示している。
 公正取引委員会は,法第4章の規定に基づく届出の対象となるか否かにかかわらず,本運用指針に即して企業結合審査を行い,法第4章の規定に照らして,個々の事案ごとに,当該企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるかどうかを判断する。
 なお,本運用指針の策定に伴い,「株式保有,合併等に係る『一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合』の考え方」(平成10年12月21日公正取引委員会。平成13年4月1日付けの追補を含む。)は,廃止する。

第1 企業結合審査の対象

 法第4章は,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には,企業結合を禁止している。これは,複数の企業が株式保有,合併等により一定程度又は完全に一体化して事業活動を行う関係(以下「結合関係」という。)が形成・維持・強化されることにより,市場構造が非競争的に変化し,一定の取引分野における競争に何らかの影響を及ぼすことに着目して規制しようとするものである。したがって,複数の企業間で株式保有又は役員兼任が行われても,当該複数の企業が引き続き独立の競争単位として事業活動を行うとみられる場合,従来から結合関係にあったものが合併して単に組織変更したにすぎない場合などについては,市場における競争への影響はほとんどなく,法第4章の規定により禁止されることは,まず想定し難い。
 以下では,どのような場合が企業結合審査の対象となる企業結合であるのかを,行為類型ごとに明らかにする。

1 株式保有

(1) 会社の株式保有
ア 会社が他の会社の株式を保有することにより,株式を所有する会社(以下「株式所有会社」という。)と株式を所有される会社(以下「株式発行会社」という。)との間に結合関係が形成・維持・強化され,企業結合審査の対象となるのは,次のような場合である。
(ア) 株式発行会社の総株主の議決権に占める株式所有会社の属する企業結合集団(法第10条第2項に規定する企業結合集団をいう。以下同じ。)に属する会社等が保有する株式に係る議決権を合計した議決権の割合が50%を超える場合。ただし,株式発行会社の総株主の議決権のすべてをその設立と同時に取得する場合は,通常,企業結合審査の対象とはならない(後記(4)ア参照)。
(イ) 株式発行会社の総株主の議決権に占める株式所有会社の属する企業結合集団に属する会社等が保有する株式に係る議決権を合計した議決権の割合が20%を超え,かつ,当該割合の順位が単独で第1位となる場合
イ 前記ア以外の場合については,通常,企業結合審査の対象とはならない場合が多いと考えられるが,次に掲げる事項を考慮して結合関係が形成・維持・強化されるか否かを判断する。ただし,議決権保有比率(株式発行会社の総株主の議決権に占める株式所有会社の保有する株式に係る議決権の割合をいう。以下同じ。)が10%以下又は議決権保有比率の順位が第4位以下のときは,結合関係が形成・維持・強化されず,企業結合審査の対象とならない。
(ア) 議決権保有比率の程度
(イ) 議決権保有比率の順位,株主間の議決権保有比率の格差,株主の分散の状況その他株主相互間の関係
(ウ) 株式発行会社が株式所有会社の議決権を有しているかなどの当事会社相互間の関係
(エ) 一方の当事会社の役員又は従業員が,他方の当事会社の役員となっているか否かの関係
(オ) 当事会社間の取引関係(融資関係を含む。)
(カ) 当事会社間の業務提携,技術援助その他の契約,協定等の関係
(キ) 当事会社と既に結合関係が形成されている会社を含めた上記(ア)~(カ)の事項
ウ 共同出資会社(2以上の会社が,共通の利益のために必要な事業を遂行させることを目的として,契約等により共同で設立し,又は取得した会社をいう。以下同じ。)の場合は,当事会社間の取引関係,業務提携その他の契約等の関係を考慮して企業結合審査の対象となる企業結合であるか否かを判断する(共同出資会社の場合には,共同出資している株式所有会社相互間には,直接の株式所有関係はなくとも,共同出資会社を通じて間接的に結合関係が形成・維持・強化されることとなる。また,共同出資会社の設立に当たり株式所有会社同士の事業活動が共同化する場合には,そのこと自体競争に影響を及ぼすことにも着目する(後記第4の2(1)ウ及び3(1)エ参照)。)。

(2) 会社以外の者の株式保有
 「会社以外の者」とは,会社法等で規定される株式会社,相互会社,合名会社,合資会社,合同会社又は外国会社以外の者をいい,事業者であるか否かを問わない。具体的には,財団法人,社団法人,特殊法人,地方公共団体,金庫,組合,個人等株式を保有し得るすべての者が含まれる。
 会社以外の者の株式保有の場合についても,(1)に準じて判断することとなる。
(3) 結合関係の範囲
 株式保有により当事会社(者)間に結合関係が形成・維持・強化される場合には,各当事会社(者)と既に結合関係が形成されている会社(者)を含めて結合関係が形成・維持・強化されることとなる。
(4) 企業結合審査の対象とならない株式保有
 次のアの場合は,原則として,結合関係が形成・強化されるものではないので,通常,企業結合審査の対象とはならない。また,次のイの場合についても,原則として,結合関係が形成・強化されるものではないので,通常,企業結合審査の対象とはならない場合が多いと考えられるが,当事会社の属する企業結合集団に属する会社等以外の他の株主と当該企業結合集団に属する会社等との間に結合関係が形成・強化される場合には,その結合関係が企業結合審査の対象となる。
ア 株式発行会社の総株主の議決権のすべてをその設立と同時に取得する場合(前記(1)ア(ア)参照)
イ 株式所有会社と株式発行会社が同一の企業結合集団に属する場合

2 役員の兼任

(1) 役員の範囲
 「役員」とは,法第2条第3項において「理事,取締役,執行役,業務を執行する社員,監事若しくは監査役若しくはこれらに準ずる者,支配人又は本店若しくは支店の事業の主任者をいう」と定義されている。すなわち,株式会社・相互会社の取締役・監査役,合名会社・合資会社・合同会社の業務を執行する社員,会社法上の支配人(会社法第10条),会社法で支配人と同じ権限を有するとみなされる会社の使用人(例えば,本店総支配人,支店長,営業本部長)等である。
 「これらに準ずる者」とは,取締役,監査役等に当たらないが,相談役,顧問,参与等の名称で,事実上役員会に出席するなど会社の経営に実際に参画している者をいう。
 部長,課長,係長,主任等の名称のみを有する者は,従業員であって役員ではない。
 なお,会社の役員又は従業員が退職手続を経て他の会社の役員に就任する場合は,兼任規制の対象とはならない。
(注1)「従業員」とは,法第13条第1項かっこ書に「継続して会社の業務に従事する者であって,役員以外の者」とあり,臨時雇いは含まれないが,出向者については従業員に含まれる。
(2) 役員兼任による結合関係
ア 会社の役員又は従業員が他の一の会社の役員を兼任することにより,兼任当事会社間で結合関係が形成・維持・強化され,企業結合審査の対象となるのは,次の場合である。
(ア) 兼任当事会社のうちの1社の役員総数に占める他の当事会社の役員又は従業員の割合が過半である場合
(イ) 兼任する役員が双方に代表権を有する場合
イ 前記ア以外の場合は,次に掲げる事項を考慮して,結合関係が形成・維持・強化されるか否かを判断する。
(ア) 常勤又は代表権のある取締役による兼任か否か
(イ) 兼任当事会社のうちの1社の役員総数に占める他の当事会社の役員又は従業員の割合
(ウ) 兼任当事会社間の議決権保有状況
(エ) 兼任当事会社間の取引関係(融資関係を含む。),業務提携等の関 係
(3) 結合関係の範囲
 役員兼任により兼任当事会社間に結合関係が形成・維持・強化される場合には,各当事会社と既に結合関係が形成されている会社を含めて結合関係が形成・維持・強化されることとなる。
(4) 企業結合審査の対象とならない役員兼任
ア 次の(ア),(イ)のような場合は,原則として,結合関係が形成・維持・強化されるものではないので,通常,企業結合審査の対象とはならない。
(ア) 代表権のない者のみによる兼任であって,兼任当事会社のいずれにおいても役員総数に占める他の当事会社の役員又は従業員の割合が10%以下である場合
(イ) 議決権保有比率が10%以下の会社間における常勤取締役でない者のみによる兼任であって,兼任当事会社のいずれにおいても役員総数に占める他の当事会社の役員又は従業員の割合が25%以下である場合
イ 兼任当事会社が同一の企業結合集団に属する場合は,原則として,結合関係が形成・強化されるものではないので,通常,企業結合審査の対象とはならない場合が多いと考えられるが,当事会社の属する企業結合集団に属する会社等以外の他の株主と結合関係が形成・強化される場合には,その結合関係が企業結合審査の対象となる。

3 合併

(1) 合併
 合併の場合は,複数の会社が一つの法人として一体となるので,当事会社間で最も強固な結合関係が形成されることとなる。したがって,株式保有や役員兼任を通じて一定の結合関係がありながら,競争への影響をみる上では,結合関係がそれほど強くないことから問題ないとされた場合でも,合併により結合関係が強まり,問題とされる場合もあり得る。
(2) 結合関係の範囲
 合併後の会社は,各当事会社と既に結合関係が形成されている会社とも結合関係が形成・維持・強化されることとなる。
(3) 企業結合審査の対象とならない合併
 次のアの場合は,原則として,結合関係が形成・強化されるものではないので,通常,企業結合審査の対象とはならない。また,次のイの場合についても,原則として,結合関係が形成・強化されるものではないので,通常,企業結合審査の対象とはならない場合が多いと考えられるが,当事会社の属する企業結合集団に属する会社等以外の他の株主と結合関係が形成・強化される場合には,その結合関係が企業結合審査の対象となる。
ア 専ら株式会社を合名会社,合資会社,合同会社若しくは相互会社に組織変更し,合名会社を株式会社,合資会社若しくは合同会社に組織変更し,合資会社を株式会社,合名会社若しくは合同会社に組織変更し,合同会社を株式会社,合名会社若しくは合資会社に組織変更し,又は相互会社を株式会社に組織変更する目的で行う合併
イ すべての合併をしようとする会社が同一の企業結合集団に属する場合

4 分割

(1) 共同新設分割・吸収分割
 共同新設分割又は吸収分割の場合には,事業を承継させようとする会社の分割対象部分(事業の全部又は重要部分)が,事業を承継しようとする会社に包括的に承継されるので,競争に与える影響は合併に類似するものである。
 また,共同新設分割又は吸収分割の場合において,事業を承継しようとする会社と当該会社の株式を割り当てられる会社との間に結合関係が形成・維持・強化され,企業結合審査の対象となるか否かは,前記1の考え方に従って判断されることになる。
(2) 結合関係の範囲
 共同新設分割又は吸収分割により,事業を承継しようとする会社と当該会社の株式を割り当てられる会社との間に結合関係が形成・維持・強化される場合には,これらの会社と既に結合関係が形成されている会社を含めて結合関係が形成・維持・強化されることとなる。
(3) 事業の重要部分
 共同新設分割又は吸収分割によって事業の重要部分を分割する場合における「重要部分」とは,事業を承継しようとする会社ではなく,事業を承継させようとする会社にとっての重要部分を意味し,当該承継部分が一つの経営単位として機能し得るような形態を備え,事業を承継させようとする会社の事業の実態からみて客観的に価値を有していると認められる場合に限られる。
 このため,「重要部分」に該当するか否かについては,承継される事業の市場における個々の実態に応じて判断されることになるが,事業を承継させようとする会社の年間売上高(又はこれに相当する取引高等。以下同じ。)に占める承継対象部分に係る年間売上高の割合が5%以下であり,かつ,承継対象部分に係る年間売上高が1億円以下の場合には,通常,「重要部分」には該当しないと考えられる。
(4) 企業結合審査の対象とならない分割
 すべての共同新設分割又は吸収分割をしようとする会社が同一の企業結合集団に属する場合は,原則として,結合関係が形成・強化されるものではないので,通常,企業結合審査の対象とはならない場合が多いと考えられるが,当事会社の属する企業結合集団に属する会社等以外の他の株主と結合関係が形成・強化される場合には,その結合関係が企業結合審査の対象となる。

5 共同株式移転

(1) 共同株式移転
 共同株式移転は,新たに設立される会社が複数の会社の株式の全部を取得するので,合併と同様に,当事会社間で強固な結合関係が形成されることとなる。
 したがって,株式保有や役員兼任を通じて一定の結合関係がありながら,競争への影響をみる上では,結合関係がそれほど強くないことから問題ないとされた場合でも,共同株式移転により結合関係が強まり,問題とされる場合もあり得る。
(2) 結合関係の範囲
 共同株式移転後の複数の当事会社は,株式移転により新設する会社を通じて,各当事会社と既に結合関係が形成されている会社とも結合関係が形成・維持・強化されることとなる。
(3) 企業結合審査の対象とならない共同株式移転
 すべての共同株式移転をしようとする会社が同一の企業結合集団に属する場合は,原則として,結合関係が形成・強化されるものではないので,通常,企業結合審査の対象とはならない場合が多いと考えられるが,当事会社の属する企業結合集団に属する会社等以外の他の株主と結合関係が形成・強化される場合には,その結合関係が企業結合審査の対象となる。

6 事業譲受け等
(1) 事業等の譲受け
 事業の全部譲受けは,譲渡会社の事業活動が譲受会社と一体化するという意味では,競争に与える影響は合併に類似するものであるが,譲受け後は譲渡会社と譲受会社との間につながりはないので,譲渡対象部分が譲受会社に新たに加わる点に着目すれば足りる。事業の重要部分の譲受け及び事業上の固定資産の譲受けについても,同様である。
(2) 結合関係の範囲
 譲受対象部分に関しては,譲受会社と既に結合関係が形成されている会社を含めて結合関係が形成・維持・強化されることとなる。
(3) 事業又は事業上の固定資産の重要部分
 事業の重要部分及び事業上の固定資産の重要部分の譲受けにおける「重要部分」の考え方は,前記4(3)と同様である。
(4) 企業結合審査の対象とならない事業等の譲受け
 次のアの場合は,原則として,結合関係が形成・強化されるものではないので,通常,企業結合審査の対象とはならない。また,次のイの場合についても,原則として,結合関係が形成・強化されるものではないので,通常,企業結合審査の対象とはならない場合が多いと考えられるが,当事会社の属する企業結合集団に属する会社等以外の他の株主と結合関係が形成・強化される場合には,その結合関係が企業結合審査の対象となる。
ア 100%出資による分社化のために行われる事業又は事業上の固定資産の譲受け(以下「事業等の譲受け」という。)
イ 事業等の譲受けをしようとする会社と事業等の譲渡をしようとする会社が同一の企業結合集団に属する場合
(5) 事業の賃借等
 事業の賃借(賃借人が賃借した事業を自己の名及び自己の計算において経営し,賃貸人に賃借料を支払う賃貸借契約の履行として行われる行為をいう。),事業についての経営の受任(会社が他の会社にその経営を委託する契約の履行として行われる行為をいう。)及び事業上の損益全部を共通にする契約の締結(2社以上の会社間において,一定の期間内の事業上の損益全部を共通にすることを約定する契約の締結をいう。)についても,事業等の譲受けに準じて取り扱うこととする。
 なお,これらの契約の内容いかんによっては,前記(1)で述べることと異なり,両当事会社と既に結合関係にある会社すべての間に結合関係が形成・維持・強化される場合があり得る。

第2 一定の取引分野

 第1で企業結合審査の対象となる企業結合については,当該企業結合により結合関係が形成・維持・強化されることとなるすべての会社(以下「当事会社グループ」という。)の事業活動について,第3~第5の考え方に従い,当該企業結合が一定の取引分野における競争に与える影響を判断する。
 この場合における一定の取引分野については,以下の判断基準によって画定される。

1 一定の取引分野の画定の基本的考え方
 一定の取引分野は,企業結合により競争が制限されることとなるか否かを判断するための範囲を示すものであり,一定の取引の対象となる商品の範囲(役務を含む。以下同じ。),取引の地域の範囲(以下「地理的範囲」という。)等に関して,基本的には,需要者にとっての代替性という観点から判断される。
 また,必要に応じて供給者にとっての代替性という観点も考慮される。
需要者にとっての代替性をみるに当たっては,ある地域において,ある事業者が,ある商品を独占して供給しているという仮定の下で,当該独占事業者が,利潤最大化を図る目的で,小幅ではあるが,実質的かつ一時的ではない価格引上げ(注2)をした場合に,当該商品及び地域について,需要者が当該商品の購入を他の商品又は地域に振り替える程度を考慮する。他の商品又は地域への振替の程度が小さいために,当該独占事業者が価格引上げにより利潤を拡大できるような場合には,その範囲をもって,当該企業結合によって競争上何らかの影響が及び得る範囲ということとなる。
 供給者にとっての代替性については,当該商品及び地域について,小幅ではあるが,実質的かつ一時的ではない価格引上げがあった場合に,他の供給者が,多大な追加的費用やリスクを負うことなく,短期間(1年以内を目途)のうちに,別の商品又は地域から当該商品に製造・販売を転換する可能性の程度を考慮する。そのような転換の可能性の程度が小さいために,当該独占事業者が価格引上げにより利潤を拡大できるような場合には,その範囲をもって,当該企業結合によって競争上何らかの影響が及び得る範囲ということとなる。
 なお,一定の取引分野は,取引実態に応じ,ある商品の範囲(又は地理的範囲等)について成立すると同時に,それより広い(又は狭い)商品の範囲(又は地理的範囲等)についても成立するというように,重層的に成立することがある。また,当事会社グループが多岐にわたる事業を行っている場合には,それらの事業すべてについて,取引の対象となる商品の範囲及び地理的範囲をそれぞれ画定していくこととなる。
(注2)「小幅ではあるが,実質的かつ一時的ではない価格引上げ」とは,通常,引上げの幅については5%から10%程度であり,期間については1年程度のものを指すが,この数値はあくまで目安であり,個々の事案ごとに検討されるものである。

2 商品の範囲

 商品の範囲については,前記1で述べたように,まず,需要者からみた商品の代替性という観点から画定される。商品の代替性の程度は,当該商品の効用等の同種性の程度と一致することが多く,この基準で判断できることが多い。
 例えば,甲商品と乙商品が存在する場合,需要者にとって両商品の効用等の同種性の程度が大きければ大きいほど,甲商品の価格引上げにより需要者が甲商品に代えて乙商品を購入する程度が大きくなり,当該価格引上げが甲商品の供給者の利潤の拡大につながらないことが予測されることから,乙商品が甲商品の価格引上げを妨げることとなると考えられる。このような場合,甲商品及び乙商品は同一の商品の範囲に属することとなる。
 この場合において,当該商品の需要者とは,当事会社グループの事業活動の対象となる取引先であって,例えば,当事会社グループが,生産財のメーカーであれば当該商品を加工して次の商品の製造等を行う者,消費財のメーカーであれば一般消費者,流通業者であれば次の流通段階にある者がこれに当たる。
 また,例えば,ある用途について甲商品と効用等が同種である乙商品群のうち,その用途の一部である特定の用途については,その効用等において甲商品との同種性の程度が特に高い丙商品が区分され得る場合には,甲商品及び乙商品群をもって商品の範囲が画定されると同時に,甲商品及び丙商品をもって商品の範囲が画定される場合がある。
 さらに,商品の範囲を画定するに当たり,需要者からみた代替性のほかに,必要に応じて,供給者が多大な追加的費用やリスクを負うことなく,短期間のうちに,ある商品から他の商品に製造・販売を転換し得るか否かについても考慮される。例えば,供給に要する設備等の相違や切替えに要する費用の大きさ等を検討した結果,甲商品と乙商品について,甲商品の価格が上昇した場合に,乙商品の広範な範囲の供給者が乙商品の生産設備や販売網等を,多大な追加的費用やリスクを負うことなく,短期間のうちに,甲商品へ切り替えることが可能であると認められるときには,甲商品及び乙商品をもって商品の範囲が画定される場合がある。
 商品の効用等の同種性の程度について評価を行う場合には,次のような事項を考慮に入れる。
(1) 用途
 ある商品が取引対象商品と同一の用途に用いられているか,又は用いることができるか否かが考慮される。
 同一の用途に用いることができるか否かは,商品の大きさ,形状等の外形的な特徴や,強度,可塑性,耐熱性,絶縁性等の物性上の特性,純度等の品質,規格,方式等の技術的な特徴などを考慮して判断される(ただし,これらの特徴がある程度異なっていても,同一の用途に用いることができると認められる場合がある(後記(3)参照)。)。
 なお,取引対象商品が複数の用途に用いられている場合には,それぞれの用途ごとに,同一の用途に用いられているか,又は用いることができるか否かが考慮される。例えば,ある用途については甲商品と乙商品の効用等が同種であると認められ,別の用途については甲商品と丙商品の効用等が同種であると認められる場合がある。
(2) 価格・数量の動き等
 価格水準の違い,価格・数量の動き等が考慮される場合がある。
 例えば,甲商品と乙商品は同一の用途に用いることは可能ではあるが,価格水準が大きく異なり,甲商品の代わりとして乙商品が用いられることが少ないために,甲商品と乙商品は効用等が同種であると認められない場合がある。
 また,甲商品と乙商品は同一の用途に用いることは可能ではあり,かつ,価格水準にも差はないが,甲商品の使用から乙商品の使用に切り替えるために設備の変更,従業員の訓練等の費用を要することから,事実上,甲商品の替わりとして乙商品が用いられることが少ないために,甲商品と乙商品は効用等が同種であると認められない場合がある。
 他方,甲商品と乙商品の効用等が同種であれば,甲商品の価格が引き上げられた場合,需要者は甲商品に代えて乙商品を購入するようになり,その結果として,乙商品の価格が上昇する傾向があると考えられるので,甲商品の価格が上昇した場合に乙商品の販売数量が増加し,又は乙商品の価格が上昇するときには,乙商品は甲商品と効用等が同種であると認められる場合がある。
(3) 需要者の認識・行動
 需要者の認識等が考慮される場合がある。
 例えば,甲商品と乙商品に物性上の特性等に違いがあっても,需要者が,いずれでも同品質の商品丙を製造するための原料として使用することができるとして甲商品と乙商品を併用しているため,甲商品と乙商品は効用等が同種であると認められる場合がある。
 また,過去に甲商品の価格が引き上げられた場合に,需要者が甲商品に替えて乙商品を用いたことがあるか否かが考慮される場合もある。

3 地理的範囲

(1) 基本的考え方
 地理的範囲についても,商品の範囲と同様に,まず,需要者からみた各地域で供給される商品の代替性の観点から判断される。各地域で供給される商品の代替性は,需要者及び供給者の行動や当該商品の輸送に係る問題の有無等から判断できることが多い。例えば,甲地域における供給者が,ある商品について価格を引き上げた場合に,甲地域の需要者が,当該商品に係る輸送上の問題を生ずることなく乙地域の供給者から当該商品を購入することが予測されるために,甲地域における価格引上げが妨げられることとなるときは,甲地域と乙地域は同一の地理的範囲に属することとなる。
 また,商品の範囲を画定する場合と同様に,例えば,ある商品について,甲地域の一部である乙地域の需要者が特に乙地域の供給者から購入する傾向がみられる場合には,甲地域について一定の取引分野の地理的範囲が画定されると同時に,乙地域について一定の取引分野の地理的範囲が画定されることがある。
 さらに,需要者からみた代替性のほかに,供給者にとっての代替性についても,前記2の商品の範囲の考え方に準じて判断される。
 需要者及び供給者の行動や当該商品の輸送に係る問題の有無等について評価を行う場合には,次のような事項を考慮に入れる。
ア 供給者の事業地域,需要者の買い回る範囲等
 需要者が,通常,どの範囲の地域から当該商品を購入することができるかという点については,需要者の買い回る範囲(消費者の購買行動等)や,供給者の販売網等の事業地域及び供給能力等が考慮される。
 過去に当該商品の価格が引き上げられた場合に,需要者がどの範囲の地域の供給者から当該商品を購入したかが考慮される場合もある。
イ 商品の特性
 商品の鮮度の維持の難易の程度,破損のしやすさや重量物であるかどうかなどの商品の特性は,当該商品の輸送することができる範囲や輸送の難易の程度に影響する。これらの点からも,需要者が,通常,どの範囲の地域から当該商品を購入することができるかが考慮される。
ウ 輸送手段・費用等
 輸送手段,輸送に要する費用が価格に占める割合や輸送しようとする地域間における当該商品の価格差より大きいか否かなどからも,需要者が,通常,どの範囲の地域から当該商品を購入することができるかが考慮される。
 また,これらの輸送に伴う費用の増加要因の検討に当たっては,原料費等輸送に伴う費用以外の地域的な差異も考慮されることとなる。
(2) 国境を越えて地理的範囲が画定される場合についての考え方
 前記(1)の基本的考え方は,国境を越える場合にも当てはまる。すなわち,ある商品について,内外の需要者が内外の供給者を差別することなく取引しているような場合には,日本において価格が引き上げられたとしても,日本の需要者が,海外の供給者にも当該商品の購入を代替し得るために,日本における価格引上げが妨げられることがあり得るので,このような場合には,国境を越えて地理的範囲が画定されることとなる。
 例えば,内外の主要な供給者が世界(又は東アジア)中の販売地域において実質的に同等の価格で販売しており,需要者が世界(又は東アジア)各地の供給者から主要な調達先を選定しているような場合は,世界(又は東アジア)市場が画定され得る。

4 その他

 取引段階,特定の取引の相手方等その他の要素についても,当事会社グループとその取引の相手方との取引の実態に応じて,前記2及び3と同様の考え方に基づいて,一定の取引分野が画定される。
 例えば,当事会社グループと甲商品を直接取引している需要者に大口需要者と小口需要者が存在し,それぞれに特有の取引が行われている場合がある。このような場合において,物流面の制約等のために,小口需要者向けの甲商品の価格が引き上げられたとしても,小口需要者が大口需要者向けの甲商品を購入することができず,大口需要者向けの甲商品が小口需要者向けの甲商品の価格引上げを妨げる要因とならないときは,甲商品の大口需要者向け取引分野と小口需要者向け取引分野が,それぞれ画定されることとなる。

第3 競争を実質的に制限することとなる場合

1 「競争を実質的に制限することとなる」の解釈

(1) 「競争を実質的に制限する」の考え方
 判例(東宝株式会社ほか1名に対する件(昭和28年12月7日東京高等裁判所判決))では,「競争を実質的に制限する」について,次のような考え方が示されている。
ア 株式会社新東宝(以下「新東宝」という。)は,自社の制作する映画の配給について自ら行うこともできたが,東宝株式会社(以下「東宝」という。)との協定により,当該配給をすべて東宝に委託することとし,自らは,映画の制作のみを行っていた。新東宝は,当該協定失効後も引き続き当該協定の内容を実行していたが,昭和24年11月に,右協定の失効を理由として,新東宝の制作した映画は自らこれを配給することを言明したことから,東宝との間に紛争が生じた。この紛争の中で,右の協定が法違反であるとして,公正取引委員会による審判が開始され,公正取引委員会は,昭和26年6月5日の審決において,東宝と新東宝の協定は,法第3条(不当な取引制限)及び第4条第1項第3号(注3)の規定に違反すると認定した。
(注3)法第4条第1項(現行法では,この規定は存在しない。)
事業者は,共同して左の各号の一に該当する行為をしてはならない。
第3号 技術,製品,販路又は顧客を制限すること
イ 被審人東宝の審決取消しの訴えに対して,東京高等裁判所は,競争の実質的制限に関し,「競争を実質的に制限するとは,競争自体が減少して,特定の事業者又は事業者集団がその意思で,ある程度自由に,価格,品質,数量,その他各般の条件を左右することによって,市場を支配することができる状態をもたらすことをいう」と判示した。
(2) 「こととなる」の考え方
 法第4章の各規定では,法第3条又は法第8条の規定と異なり,一定の取引分野における競争を実質的に制限する「こととなる」場合の企業結合を禁止している。この「こととなる」とは,企業結合により,競争の実質的制限が必然ではないが容易に現出し得る状況がもたらされることで足りるとする蓋然性を意味するものである。したがって,法第4章では,企業結合により市場構造が非競争的に変化して,当事会社が単独で又は他の会社と協調的行動をとることによって,ある程度自由に価格,品質,数量,その他各般の条件を左右することができる状態が容易に現出し得るとみられる場合には,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなり,禁止される。

2 企業結合の形態と競争の実質的制限

 企業結合には様々な形態があるが,
(1) 水平型企業結合(同一の一定の取引分野において競争関係にある会社間の企業結合をいう。以下同じ。)
(2) 垂直型企業結合(例えば,メーカーとその商品の販売業者との間の合併など取引段階を異にする会社間の企業結合をいう。以下同じ。)
(3) 混合型企業結合(例えば,異業種に属する会社間の合併,一定の取引分野の地理的範囲を異にする会社間の株式保有など水平型企業結合又は垂直型企業結合のいずれにも該当しない企業結合をいう。以下同じ。)
 に分類することができる。
 水平型企業結合は,一定の取引分野における競争単位の数を減少させるので,競争に与える影響が最も直接的であり,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる可能性は,垂直型企業結合や混合型企業結合に比べ高い。これに対し,垂直型企業結合及び混合型企業結合は,一定の取引分野における競争単位の数を減少させないので,水平型企業結合に比べて競争に与える影響は大きくなく,一定の場合を除き,通常,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるとは考えられない。
 企業結合審査の対象となる企業結合が,水平型企業結合,垂直型企業結合,混合型企業結合のいずれに該当するかによって,当該企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるか否かを判断する際の検討の枠組みや判断要素が異なる。
 以下では,水平型企業結合,垂直型企業結合,混合型企業結合に分けて,当該企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるか否かを判断する際の検討の枠組みや判断要素を明らかにする。
 なお,例えば,水平型企業結合に該当する側面と垂直型企業結合に該当する側面とを併せもつ企業結合については,それぞれの側面に応じて,以下に示す検討の枠組みや判断要素に即して検討を行うこととなる。

第4 水平型企業結合による競争の実質的制限

1 基本的考え方

 前記のとおり,水平型企業結合は,一定の取引分野における競争単位の数を減少させるので,競争に与える影響が最も直接的であり,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる企業結合は,水平型企業結合に多い。
 水平型企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるのは,当事会社グループの単独行動による場合と,当事会社グループとその一又は複数の競争者(以下「競争者」という。)が協調的行動をとることによる場合とがあり,個々の事案においては,2つの観点から問題となるか否かが検討される。したがって,例えば,ある企業結合について,単独行動による競争の実質的制限の観点からは問題とならなくても,協調的行動による競争の実質的制限の観点からは問題となる場合がある。
(1) 単独行動による競争の実質的制限
 水平型企業結合が単独行動により一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるのは,商品が同質的か差別化されているかに応じて,典型的には,次のような場合である。
ア 商品が同質的なものである場合
 商品が同質的なものである場合,例えば,当事会社グループが当該商品の価格を引き上げたとき,他の事業者が当該商品の価格を引き上げなければ,需要者は購入先をそれらの他の事業者に振り替えるので,通常,当事会社グループの売上げは減少し,他の事業者の売上げが拡大することになる。したがって,当事会社グループが当該商品の価格等をある程度自由に左右することは困難である場合が多い。
 しかし,当事会社グループの生産・販売能力が大きいのに対し,他の事業者の生産・販売能力が小さい等の事情から,当事会社グループが当該商品の価格を引き上げた場合に,他の事業者が当該商品の価格を引き上げないで売上げを拡大することや,需要者が購入先をそのような他の事業者に振り替えることができないときがある。
 このような場合には,当事会社グループが当該商品の価格等をある程度自由に左右することができる状態が容易に現出し得るので,水平型企業結合が,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる。
イ 商品が差別化されている場合
 例えば,商品がブランドで差別化されている場合において,あるブランドの商品の価格が引き上げられた場合,需要者はそれに代わるものとして他のブランドの商品を一様に購入の対象とするわけではなく,価格が引き上げられたブランドの商品の次に需要者にとって好ましい(代替性の高い)ブランドの商品が購入されることになると考えられる。
 このような場合,当事会社グループがあるブランドの商品の価格を引き上げたとしても,当事会社グループが当該商品と代替性が高いブランドの商品も販売しているときには,価格を引き上げたブランドの商品の売上げが減少しても当該商品と代替性の高いブランドの商品の売上げの増加で償うことができるので,当事会社グループ全体としては売上げを大きく減少させることなく,商品の価格を引き上げることができると考えられる。
 したがって,商品がブランド等により差別化されている場合,代替性の高い商品を販売する会社間で企業結合が行われ,他の事業者が当該商品と代替性の高い商品を販売していないときには,当事会社グループが当該商品の価格等をある程度自由に左右することができる状態が容易に現出し得るので,水平型企業結合が,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる。
(2) 協調的行動による競争の実質的制限
 水平型企業結合が協調的行動により一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるのは,典型的には,次のような場合である。
 例えば,事業者甲が商品の価格を引き上げた場合,他の事業者乙,丙等は当該商品の価格を引き上げないで,売上げを拡大しようとし,それに対し,事業者甲は,価格を元の価格にまで引き下げ,あるいはそれ以上に引き下げて,事業者乙,丙等が拡大した売上げを取り戻そうとすることが多いと考えられる。
 しかし,水平型企業結合によって競争単位の数が減少することに加え,当該一定の取引分野の集中度等の市場構造,商品の特性,取引慣行等から,各事業者が互いの行動を高い確度で予測することができるようになり,協調的な行動をとることが利益となる場合がある。このような場合,事業者甲の価格引上げに追随して他の事業者が商品の価格を引き上げたときに,例えば,事業者乙が当該商品の価格を引き上げないで売上げを拡大しようとしても,他の事業者が容易にそれを知り,それに対抗して当該商品の価格を元の価格まで引き下げ,あるいはそれ以上に引き下げて,奪われた売上げを取り戻そうとする可能性が高い。したがって,事業者乙が当該商品の価格を引き上げないことにより獲得できると見込まれる一時的な利益は,事業者甲に追随して価格を引き上げたときに見込まれるものより小さなものとなりやすい。
 このような状況が生み出される場合には,各事業者にとって,価格を引き上げないで売上げを拡大するのではなく互いに当該商品の価格を引き上げることが利益となり,当事会社とその競争者が協調的行動をとることにより当該商品の価格等をある程度自由に左右することができる状態が容易に現出し得るので,水平型企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる。
(3) 競争を実質的に制限することとならない場合
 水平型企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるか否かについては,個々の事案ごとに後記2及び3の各判断要素を総合的に勘案して判断するが,企業結合後の当事会社グループが次の[1]~[3]のいずれかに該当する場合には,水平型企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるとは通常考えられず,第4の2及び3に記した各判断要素に関する検討が必要となるとは通常考えられない。
[1] 企業結合後のハーフィンダール・ハーシュマン指数(以下「HHI」という。)が1,500 以下である場合(注4)
[2] 企業結合後のHHIが1,500超2,500 以下であって,かつ,HHIの増分が250以下である場合(注5)
[3] 企業結合後のHHIが2,500を超え,かつ,HHIの増分が150以下である場合
 なお,上記の基準に該当しない場合であっても,直ちに競争を実質的に制限することとなるものではなく個々の事案ごとに判断されることとなるが,過去の事例に照らせば,企業結合後のHHIが2,500以下であり,かつ,企業結合後の当事会社グループの市場シェアが35%以下の場合には,競争を実質的に制限することとなるおそれは小さいと通常考えられる。
(注4)HHIは,当該一定の取引分野における各事業者の市場シェアの2乗の総和によって算出される。市場シェアは,一定の取引分野における商品の販売数量(製造販売業の場合)に占める各事業者の商品の販売数量の百分比による。ただし,当該商品にかなりの価格差がみられ,かつ,価額で供給実績等を算定するという慣行が定着していると認められる場合など,数量によることが適当でない場合には,販売金額により市場シェアを算出する。
 国内需要者向けの輸入があれば,市場シェアの算出に当たり国内への供給として算入する。
 なお,各事業者の生産能力シェア,輸出比率又は自己消費のウェイトについても,需要に対応して余剰生産能力,輸出分又は自己消費分を直ちに国内市場における販売に回し,その市場シェアを拡大することができると認められる場合があるので,必要に応じてこれらの点も考慮に入れる。
 ごく一部の主要事業者の市場シェアしか把握できない等の理由により,HHIの値が上に示した数値を超えるか否か判断できないような場合には,生産集中度調査から得られた関係式(HHI=最上位企業の市場シェア(%)の2乗×0.75+上位3社累積市場シェア(%)×24.5-466.3)を用いた推計値によって検討するものとする。
(注5)企業結合によるHHIの増分は,当事会社が2社であった場合,当事会社のそれぞれの市場シェア(%)を乗じたものを2倍することによって計算することができる。

2 単独行動による競争の実質的制限についての判断要素

 次の判断要素を総合的に勘案して,水平型企業結合が単独行動により一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるか否か判断する。
(1) 当事会社グループの地位及び競争者の状況
ア 市場シェア及びその順位
企業結合後の当事会社グループの市場シェアが大きい場合には,それが小さい場合に比べ,当事会社グループが商品の価格を引き上げようとしたときに,他の事業者が当該商品の価格を引き上げないで,当事会社グループに代わって当該商品を十分供給することが容易ではないので,当事会社グループの当該商品の価格引上げに対する他の事業者の牽制力は弱くなると考えられる。
 したがって,企業結合後の当事会社グループの市場シェアが大きい場合及び企業結合による市場シェアの増分が大きい場合には,それだけ当該企業結合の競争に及ぼす影響が大きい。
 同様に,企業結合後の当事会社グループの市場シェアの順位が高い場合及び企業結合により順位が大きく上昇する場合には,それだけ当該企業結合の競争に及ぼす影響が大きい。
 例えば,市場シェアの順位が上位である会社間の企業結合は,その順位が下位である会社間の企業結合に比べ,競争に及ぼす影響が大きい。
 企業結合による市場シェアの変化の算定に当たっては,入手可能な最新の当事会社グループの市場シェアを基に計算することを原則とするが,より長期的な販売数量や売上高の変化,需要者の選好の変化,技術革新の速さや程度,商品の陳腐化の状況,市場シェアの変動の状況等によって,当該企業結合後の市場シェアに大きな変動が見込まれる場合や競争者が投資の減退傾向を背景に既に競争圧力を形成していない状況にある場合には,その点も加味して競争に与える影響を判断する。
イ 当事会社間の従来の競争の状況等
 従来,当事会社間で競争が活発に行われてきたことや当事会社の行動が市場における競争を活発にしてきたことが,市場全体の価格引下げや品質・品揃えの向上などにつながってきたと認められる場合には,企業結合後の当事会社グループの市場シェアやその順位が高くなかったとしても,当該企業結合によりこうした状況が期待できなくなるときには競争に及ぼす影響が大きい。
 例えば,当事会社間で競争が活発に行われてきており,一方の市場シェアの拡大が他方の市場シェアの減少につながっていたような場合,企業結合後は,一方の当事会社の売上げの減少を他方の当事会社の売上げの増加で償うことができ,当事会社グループ全体としては売上げを大きく減少させることなく,商品の価格を引き上げることができると考えられるので,当該企業結合の競争に及ぼす影響が大きい。
 また,商品がブランド等により差別化されている場合であって各当事会社の販売する商品間の代替性が高い場合には,企業結合後は,一方の商品の売上げの減少を当該商品と代替性の高い商品の売上げの増加で償うことができ,当事会社グループ全体としては売上げを大きく減少させることなく,商品の価格を引き上げることができると考えられるので,当該企業結合の競争に及ぼす影響が大きい。
ウ 共同出資会社の扱い
 出資会社が行っていた特定の事業部門の全部を共同出資会社によって統合することにより,出資会社の業務と分離させる場合には,出資会社と共同出資会社の業務の関連性は薄いと考えられる。
 したがって,例えば,ある商品の生産・販売,研究開発等の事業すべてが共同出資会社によって統合される場合には,共同出資会社について,市場シェア等を考慮することになる。
 他方,出資会社が行っていた特定の事業部門の一部が共同出資会社によって統合される場合には,共同出資会社の運営を通じ出資会社相互間に協調関係が生じる可能性がある。出資会社相互間に協調関係が生じるかどうかについては,共同出資会社に係る出資会社間の具体的な契約の内容や結合の実態,出資会社相互間に取引関係がある場合にはその内容等を考慮する。
 例えば,ある商品の生産部門のみが共同出資会社によって統合され,出資会社は引き続き当該商品の販売を行う場合,共同出資会社の運営を通じ出資会社相互間に協調関係が生じるときには,出資会社の市場シェアを合算する等して競争に及ぼす影響を考慮することになる。他方,出資会社は引き続き当該商品の販売を行うが,共同出資会社の運営を通じ出資会社相互間に協調関係が生じることのないよう措置が講じられている場合には,競争に及ぼす影響はより小さいと考えられる(ただし,後記3(1)エ参照)。
エ 競争者の市場シェアとの格差
 企業結合後の当事会社グループの市場シェアと競争者の市場シェアとの格差が大きい場合には,それが小さい場合に比べ,当事会社グループが商品の価格を引き上げようとしたときに,競争者が当該商品の価格を引き上げないで,当事会社グループに代わって当該商品を十分供給することが容易ではないので,当事会社グループの当該商品の価格引上げに対する競争者の牽制力は弱くなると考えられる。
 したがって,企業結合後の当事会社グループの市場シェアと競争者の市場シェアとの格差が大きい場合には,それだけ当該企業結合の競争に及ぼす影響が大きい。
 他方,企業結合後の当事会社グループと同等以上の市場シェアを有する競争者が存在する場合には,当事会社グループがある程度自由に価格等を左右することを妨げる要因となり得る。
 なお,競争者のシェアとの格差を考慮するに当たっては,競争者の供給余力や競争者の販売する商品と当事会社グループの販売する商品との代替性の程度を考慮する(後記オ参照)。
オ 競争者の供給余力及び差別化の程度
 競争者の供給余力が十分でない場合には,当事会社グループが当該商品の価格を引き上げたとき,当該商品の価格を引き上げないで売上げを拡大することができず,当事会社グループが当該商品の価格を引き上げることに対して牽制力が働かないことがある。このように,競争者の供給余力が十分でない場合には,企業結合後の当事会社の市場シェアと競争者の市場シェアとの格差がさほど大きくないときであっても,当該企業結合の競争に及ぼす影響が小さいとはいえないことがある。
 逆に,当該商品の需要が継続的構造的に減少しており,競争者の供給余力が十分である場合には,当事会社グループの価格引上げに対する牽制力となり得る。
 また,商品がブランド等により差別化されている場合であって当事会社の販売する商品間の代替性が高い場合には,競争者の販売する商品と当事会社グループが販売する商品との代替性の程度を考慮する。代替性が低い場合には,企業結合後の当事会社の市場シェアと競争者の市場シェアとの格差がさほど大きくないときであっても,当該企業結合の競争に及ぼす影響が小さいとはいえないことがある。
カ 国境を越えて地理的範囲が画定される商品の扱い
 第2の一定の取引分野に係る検討の結果,国境を越えて地理的範囲が画定され得る商品としては,例えば,国境を越える取引における制度上・輸送上の条件が日本国内の取引と比較して大きな差異がないものであって,品質面等において内外の商品の代替性が高い商品や,非鉄金属など鉱物資源のように商品取引所を通じて国際的な価格指標が形成されている商品がある。このような商品については,当該地理的範囲における当事会社グループの市場シェア・順位,当事会社間の従来の競争の状況,競争者の市場シェアとの格差,競争者の供給余力・差別化の程度等を加味して,競争に与える影響を判断する。
(2) 輸入
 輸入圧力が十分働いていれば,当該企業結合が一定の取引分野における競争を制限することとなるおそれは小さいものとなる(注6)。
 需要者が当事会社グループの商品から容易に輸入品に使用を切り替えられる状況にあり,当事会社グループが当該商品の価格を引き上げた場合に,輸入品への切替えが増加する蓋然性が高いときには,当事会社グループは,輸入品に売上げを奪われることを考慮して,当該商品の価格を引き上げないことが考えられる。
 輸入圧力が十分働いているか否かについては,現在輸入が行われているかどうかにかかわらず,次の[1]~[4]のような輸入に係る状況をすべて検討の上,商品の価格が引き上げられた場合に,輸入の増加が一定の期間(注7)に生じ,当事会社グループがある程度自由に価格等を左右することを妨げる要因となり得るか否かについて考慮する。
[1] 制度上の障壁の程度
輸入圧力を評価するに当たっては,当該商品について,関税その他の輸入に係る税制等の制度上の規制が存在し,それが今後とも障壁として作用するか否かを検討する必要がある。制度上の障壁が存在しなければ,それだけ輸入圧力が働きやすい。また,制度上の障壁が存在するために現時点で輸入が少ない場合であっても,近い将来に制度上の障壁が除かれることが予定されているような場合には,輸入がより容易に行われるようになり,輸入圧力が高まる可能性がある。
 他方,制度上の障壁が存在し,それが維持されるような場合には,当事会社グループが商品の価格を引き上げたとしても,輸入が増加する余地は小さく,輸入圧力は低いものにとどまるものと考えられる。
 現在,相当量の輸入が行われている場合には,通常,制度上の障壁が低いことが推認されるが,例えば,輸入割当制度の存在により,輸入増加の余地が限られるような場合には,輸入圧力は限定的なものにとどまる点に留意する必要がある。
[2] 輸入に係る輸送費用の程度や流通上の問題の有無
 輸入に係る輸送費用が低く,かつ,輸入に係る流通上の問題が存在しない場合には,それだけ国内製品の価格が引き上げられたときに輸入品が日本国内に流入しやすい環境にあると考えられる。
 他方,重量物で付加価値が低い商品など,輸入に係る輸送費用がかさむ場合には,需要者にとって輸入品を購入する誘引は小さい可能性がある。また,輸入に当たって,物流・貯蔵設備等,日本国内における流通・販売体制が整備されていないために,輸入品の安定供給が期待できない場合にも,需要者は輸入品の購入を敬遠する可能性がある。このような場合には,当事会社グループが商品の価格を引き上げたとしても輸入が増加せず,輸入圧力が働きにくいと考えられる。
 現在,相当量の輸入品が国内に入ってきている場合には,このような輸送や流通上の問題が少ないことを示唆しているものと考えられる。
[3] 輸入品と当事会社グループの商品の代替性の程度
 輸入品と当事会社グループの商品との代替性が高い場合には,それだけ需要者は躊躇なく輸入品を購入・使用することが可能と考えられる。
 他方,輸入品と当事会社グループの商品に品質差がある場合,輸入品の品揃えに問題がある場合,又は需要者の使い慣れの問題がある場合には,輸入品が選好されない可能性がある。このような場合には,当事会社グループが商品の価格を引き上げたとしても輸入が増加せず,輸入圧力は働きにくいと考えられる。
 輸入品と当事会社グループの商品との代替性の程度を評価するに当たっては,輸入品と当事会社グループの商品との価格水準の違いや価格・数量の動き等の過去の実績を参考にする場合がある。
 例えば,当事会社の商品の価格が上昇した場合に,輸入品の販売数量が増加した実績があるときには,輸入品との代替性が高いと認められることがある。
 また,主な需要者が輸入品を使用した経験の有無やその評価,輸入品採用の意向などから,当事会社グループの商品と輸入品との代替性が高いか否かを判断できる場合がある。
[4] 海外の供給可能性の程度
 当事会社グループが商品の価格を引き上げた場合の輸入増加の可能性の程度を評価する必要がある。
 海外の事業者が安い生産費用で十分な供給余力を有している場合には,それだけ国内価格の上昇に応じて輸入が増加する蓋然性が高いと考えられる。海外製品の輸入や海外の事業者の日本向け輸出への具体的な計画がある場合には,そうでない場合に比べて,輸入増加の蓋然性が高い。また,海外に有力な競争者が存在し,現に相当程度,国内への供給を行っている場合や,近い将来にその事業者が国内に物流・販売拠点を設け,商品を供給する具体的な計画を有しており,その実現可能性が高い場合には,輸入圧力が働きやすいと考えられる。
 また,日本以外の市場へ当該商品を供給しているが,国内価格次第で日本へ仕向地を変更する蓋然性が高い海外事業者が存在する場合や,国内価格次第で設備能力等の増強を行い日本への供給を行う蓋然性の高い海外事業者が存在する場合には,国内価格の上昇に応じて輸入が増加する可能性が高く,輸入圧力の要因となり得る。さらに,海外の有力な事業者が生産能力を増強する結果,海外における供給量が増加する場合に,海外での市場価格が下落し,国内製品との間に内外価格差が生じることがあるが,こうした内外価格差が生じるときには,輸入圧力が高まる可能性がある。
(注6)ここでいう「輸入」とは,前記第2の3において画定された地理的範囲以外の地域から商品が供給されることをいう。このため,国境を越えた一定の地域が地理的範囲と画定された場合は,当該地理的範囲以外の地域から当該地理的範囲に向けて行われる商品の供給をもって「輸入」とみることとする。
(注7)おおむね2年以内を目安とするが,産業の特性によりこれよりも短期間の場合もあれば長期間の場合もある。後記(3)の参入における「一定の期間」についても同様である。
(3) 参入
 参入が容易であり,当事会社グループが商品の価格を引き上げた場合に,より低い価格で当該商品を販売することにより利益をあげようとする参入者が現れる蓋然性があるときには,当事会社グループは,参入者に売上げを奪われることを考慮して,商品の価格を引き上げないことが考えられる。したがって,参入圧力が十分働いていれば,当事会社グループがある程度自由に価格等を左右することを妨げる要因となる。
 参入圧力が十分働いているか否かについては,前記(2)の輸入に係る分析と同様に,次の[1]~[4]のような参入に係る状況をすべて検討の上,参入が一定の期間に行われ,当事会社グループがある程度自由に価格等を左右することを妨げる要因となり得るか否かについて考慮する。
[1] 制度上の参入障壁の程度
 参入圧力を評価するに当たっては,当該商品について,法制度上の参入規制が存在し,それが参入の障壁となっているか否か,また,今後とも当該規制が維持されるか否かを検討する必要がある。法制度上の参入規制が存在しなければ,それだけ参入圧力が働きやすい。また,参入規制が参入の障壁となっている場合であっても,近い将来に当該規制が除かれることが予定されているような場合には,参入がより容易になり,参入圧力が高まる可能性がある。
 他方,参入規制が参入の障壁となっており,それが維持されるような場合には,当事会社グループが商品の価格を引き上げたとしても,参入が行われず,参入圧力は低いものにとどまるものと考えられる。
 近時,一定の参入が行われている場合には,通常,参入規制が存在しないか,存在したとしても参入の障壁となっていないものと考えられる。
[2] 実態面での参入障壁の程度
 参入のための必要資本量が小さく,参入者にとって技術条件,原材料調達の条件,販売面の条件等において問題が存在しない場合には,それだけ参入が容易な環境にあると考えられる。また,生産設備に重要な変更を加えることなく当該商品を供給し得るような事業者が存在すれば,当該事業者にとって参入は容易であると考えられる。
 参入に相当の資本量が必要である場合には,当事会社グループが商品の価格を引き上げた場合に参入が行われるか否かの企業行動について評価することとなる。
 また,立地条件,技術条件,原材料調達の条件,販売面の条件等において参入者が既存事業者に比べて不利な状況に置かれているような場合には,参入が期待できない要因となる。
 他方,近時,一定の参入が行われ,それが成功している場合には,通常,実態面での参入障壁が低いことを示唆しているものと考えられる。
[3] 参入者の商品と当事会社の商品の代替性の程度
 参入者が供給するであろう商品と当事会社グループの商品との代替性が高い場合には,それだけ需要者は躊躇なく参入者の商品を購入・使用することが可能と考えられる。
 他方,参入者が当事会社グループと同等の品質の商品を同等の品揃えで製造・販売することが困難であるような場合,又は需要者の使い慣れの問題から参入者の商品が選好されないような場合には,参入が行われにくくなる可能性があり,また,参入が行われたとしても当事会社グループの商品に対する十分な競争圧力とはなりにくいと考えられる。
[4] 参入可能性の程度
 当事会社グループが商品の価格を引き上げた場合の参入の可能性の程度を評価する必要がある。
 現に他の事業者が十分な規模で参入を計画している場合や,当該一定の取引分野における価格次第で設備の新設や変更等を行い,当該取引分野への供給を行う蓋然性の高い参入者が存在する場合には,そうでない場合に比べて,参入圧力は高いと考えられる。
 また,一般的に,今後大きな需要拡大が見込まれる蓋然性の高い成長市場に供給される商品,技術革新が頻繁な商品,ライフサイクルが短い商品,既存技術を代替する有力な新技術に対する開発投資が旺盛な商品等,市場構造が動態的に変化しやすい場合には,そうでない場合よりも高い参入圧力が生じやすいと考えられる。
(4) 隣接市場からの競争圧力
 第2において画定された一定の取引分野に関連する市場,例えば,地理的に隣接する市場及び当該商品と類似の効用等を有する商品(以下「競合品」という。)の市場における競争の状況についても考慮の対象となる。
 例えば,隣接市場において十分に活発な競争が行われている場合や,近い将来において競合品が当該商品に対する需要を代替する蓋然性が高い場合には,当該一定の取引分野における競争を促進する要素として評価し得る場合がある。
 需要の減少により市場が縮小している商品について,競合品が当該商品に対する需要を代替する蓋然性が高い場合も同様である。
ア 競合品
 当該商品と効用等は類似しているが別の市場を構成している競合品の市場が存在する場合には,販売網,需要者,価格等の面からみた効用等の類似性により,競合品が,当事会社グループがある程度自由に価格等を左右することをある程度妨げる要因となり得る。
イ 地理的に隣接する市場の状況
 当該一定の取引分野の地理的範囲が限られている場合,それに隣接して同一の商品が供給されている別の地理的市場が存在するときには,その近接度,物流手段,交通手段,当該市場の事業者の規模等により,当該隣接市場における競争が,当事会社グループがある程度自由に価格等を左右することをある程度妨げる要因となり得る。

(5) 需要者からの競争圧力
 当該一定の取引分野への競争圧力は,次の取引段階に位置する需要者側から生じることもある。需要者が,当事会社グループに対して,対抗的な交渉力を有している場合には,取引関係を通じて,当事会社グループがある程度自由に価格等を左右することをある程度妨げる要因となり得る。需要者側からの競争圧力が働いているか否かについては,次のような需要者と当事会社の取引関係等に係る状況を考慮する。
[1] 需要者の間の競争状況
 需要者の商品の市場における競争が活発であるときには,需要者は,供給者からできるだけ低い価格で当該製品を購入しようとする場合もあると考えられる。
 例えば,原材料メーカーの企業結合の場合,当該原材料を使用する完成品の市場における競争が活発であるときには,当該原材料の需要者である完成品メーカーは,完成品の価格を低くするため,できるだけ低い価格で当該原材料を調達しようとするものと考えられる。この場合,当事会社グループが当該商品の価格を引き上げると売上げが大きく減少する可能性があるので,当事会社グループが価格等をある程度自由に左右することをある程度妨げる要因となり得る。
[2] 取引先変更の容易性
 需要者が,ある供給者から他の供給者への供給先の切替えを行うことが容易であり,切替えの可能性を当該供給者に示すことによって価格交渉力が生じているときには,需要者からの競争圧力が働いていると考えられる。例えば,需要者が,電子商取引や入札購買によって競争的に供給者を選択している場合,容易に内製に転換することができる場合,当該商品以外を含めて多様に取引を変更することが容易な状況にあり購買者圧力が形成されている場合,大規模な量販店のように取引規模が大きく複数の購買先を有している場合等,需要者の調達方法,供給先の分散の状況や変更の難易の程度などからみて,当該需要者の価格交渉力が強いときには,当事会社グループが価格等をある程度自由に左右することをある程度妨げる要因となり得る。
[3] 市場の縮小
 当該商品の需要が減少して継続的構造的に需要量が供給量を大きく下回ることにより,需要者からの競争圧力が働いている場合には,当事会社グループが価格等をある程度自由に左右することをある程度妨げる要因となり得る。
(6) 総合的な事業能力
 企業結合後において,当事会社グループの原材料調達力,技術力,販売力,信用力,ブランド力,広告宣伝力等の総合的な事業能力が増大し,企業結合後の会社の競争力が著しく高まることによって,競争者が競争的な行動をとることが困難となることが見込まれる場合は,その点も加味して競争に与える影響を判断する。
(7) 効率性
 企業結合後において,規模の経済性,生産設備の統合,工場の専門化,輸送費用の軽減,研究開発体制の効率化等により当事会社グループの効率性が向上することによって,当事会社グループが競争的な行動をとることが見込まれる場合には,その点も加味して競争に与える影響を判断する。
 この場合における効率性については,[1]企業結合に固有の効果として効率性が向上するものであること,[2]効率性の向上が実現可能であること,[3]効率性の向上により需要者の厚生が増大するものであることの3つの観点から判断する。
 なお,独占又は独占に近い状況をもたらす企業結合を効率性が正当化することはほとんどない。
[1] 企業結合固有の効率性向上であること
 当該効率性の向上は,企業結合に固有の成果でなくてはならない。そのため,規模の経済性,生産設備の統合,工場の専門化,輸送費用の軽減,次世代技術・環境対応能力など研究開発の効率性等予定される効率性に関する各要因について,それが,より競争制限的とはならない他の方法によっては生じ得ないものである必要がある。
[2] 効率性の向上が実現可能であること
 当該効率性の向上は,実現可能なものでなくてはならない。この点については,例えば,当該企業結合を決定するに至るまでの内部手続に係る文書,予定される効率性に関する株主及び金融市場に対する説明用の資料,効率性の向上等に関する外部専門家による資料等を検討することとなる。
[3] 効率性の向上により需要者の厚生が増大するものであること
 当該効率性の向上により,製品・サービスの価格の低下,品質の向上,新商品の提供,次世代技術・環境対応能力など研究開発の効率化等を通じて,その成果が需要者に還元されなくてはならない。この点については,前記(2)に示した資料のほか,例えば,価格低下等の効果をもたらし得る能力向上に関する情報,需要・供給両面の競争圧力の下で価格低下,品質向上,新商品提供等を行ってきた実績等を検討することとなる。
(8) 当事会社グループの経営状況
ア 業績不振等
当事会社グループの一部の会社又は企業結合の対象となったその事業部門が業績不振に陥っているか否かなどの経営状況も,当事会社グループの事業能力を評価する上において考慮する。
イ 競争を実質的に制限することとなるおそれは小さい場合
企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるか否かについては,個々の事案ごとに各判断要素を総合的に勘案して判断するが,次の場合には,水平型企業結合が単独行動により一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるおそれは小さいと通常考えられる。
[1] 当事会社の一方が継続的に大幅な経常損失を計上しているか,実質的に債務超過に陥っているか,運転資金の融資が受けられない状況であって,企業結合がなければ近い将来において倒産し市場から退出する蓋然性が高いことが明らかな場合において,これを企業結合により救済することが可能な事業者で,他方当事会社による企業結合よりも競争に与える影響が小さいものの存在が認め難いとき。
[2] 当事会社の一方の企業結合の対象となる事業部門が,継続的に大幅な損失を計上するなど著しい業績不振に陥っており,企業結合がなければ近い将来において市場から退出する蓋然性が高いことが明らかな場合において,これを企業結合により救済することが可能な事業者で,他方当事会社による企業結合よりも競争に与える影響が小さいものの存在が認め難いとき。

3 協調的行動による競争の実質的制限についての判断要素

 次の判断要素を総合的に勘案して,水平型企業結合が協調的行動により一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるか否か判断する。
(1) 当事会社グループの地位及び競争者の状況
ア 競争者の数等
 一定の取引分野における競争者の数が少ない又は少数の有力な事業者に市場シェアが集中している場合には,競争者の行動を高い確度で予測しやすいと考えられる。
 また,各事業者が同質的な商品を販売しており,費用条件が類似している場合などには,各事業者の利害が共通することが多いため,協調的行動がとられやすくなり,また,競争者が協調的な行動をとるかどうかを高い確度で予測しやすいと考えられる。
 したがって,企業結合によりこのような状況が生じる場合には,競争に及ぼす影響が特に大きい。
イ 当事会社間の従来の競争の状況等
 互いに市場シェアを奪い合う関係にあった場合や一方が価格引下げに積極的であった場合など,従来,当事会社間で競争が活発に行われてきたことや当事会社の行動が市場における競争を活発にしてきたことが,市場全体の価格引下げや品質・品揃えの向上などにつながってきたと認められる場合には,企業結合後の当事会社グループの市場シェアやその順位が高くなかったとしても,当該企業結合によりこうした状況が期待できなくなるときには競争に及ぼす影響が大きい。
ウ 競争者の供給余力
 自社の供給余力が大きくない場合には,例えば,価格を引き下げて市場シェアを拡大し,あるいは競争者の市場シェアを奪うことができる余地は限られるため,それによって得られる利益は大きくなく,競争者と協調的な行動がとられやすいと考えられる。
 他方,自社の供給余力は大きいが,競争者の供給余力が小さい場合には,例えば,商品の価格を引き下げて売上げを拡大しても,近い将来に競争者の価格引下げにより奪われる売上げには限りがあり,当該商品の価格を引き下げて売上げを拡大することによる利益を期待し得るので,競争者と協調的な行動をとる誘因は小さくなると考えられる。
エ 共同出資会社の扱い
 出資会社が行っていた特定の事業部門の全部を共同出資会社によって統合することにより,出資会社の業務と分離させる場合には,出資会社と共同出資会社相互間の業務の関連性は薄いと考えられる。
 したがって,例えば,ある商品の生産・販売,研究開発等の事業すべてが共同出資会社によって統合される場合には,共同出資会社について,競争者と協調的な行動をとるとみられるかどうかを考慮することとなる。
 他方,出資会社が行っていた特定の事業部門の一部が共同出資会社によって統合される場合等には,出資会社についても,競争者と協調的な行動をとるとみられるかどうかを考慮することとなる。
 出資会社間についても競争者と協調的な行動をとるとみられるかどうかを考慮すべきかどうかの判断に当たっては,共同出資会社に係る出資会社間の具体的な契約の内容や結合の実態,出資会社相互間に取引関係がある場合にはその内容等を考慮する。
 例えば,ある商品の生産部門のみが共同出資会社によって統合され,出資会社は引き続き当該商品の販売を行う場合,共同出資会社の運営を通じ出資会社相互間に協調関係が生じることのないよう措置が講じられているときであっても,生産費用が共通となることから価格競争の余地が減少し,他の出資会社を含め競争者と協調的な行動をとる誘因が生じると考えられる。このような場合,出資会社が他の出資会社を含め競争者と協調的な行動をとるとみられるかどうかを考慮することとなる。
(2) 取引の実態等
ア 取引条件等
 事業者団体が構成事業者の販売価格や数量に関する情報を収集・提供している場合など,価格,数量など競争者の取引条件に関する情報が容易に入手することができるときには,競争者の行動を高い確度で予測しやすく,また,競争者が協調的行動をとっているかどうか把握することも容易であると考えられる。さらに,このような場合には,例えば,価格を引き下げて売上げの拡大を図る行動がとられたときには,他の競争者は容易にそれを知り,価格引下げにより奪われた売上げを取り戻そうとする可能性が高いので,そのような行動をとる誘因は小さくなると考えられる。
 他方,大口の取引が不定期に行われている場合には,例えば,価格を引き下げて大口の取引を受注することによる利益が大きく,また,その機会も頻繁ではないので,競争者と協調的な行動をとる誘因は小さくなり,また,競争者の行動を予測することが困難であると考えられる。
 逆に,小口の取引が定期的に行われている場合には,競争者と協調的な行動がとられやすいと考えられる。
イ 需要動向,技術革新の動向等
 需要の変動が大きい場合や,技術革新が頻繁であり,商品のライフサイクルが短い場合などは,例えば,価格を引き下げて売上げを拡大し,あるいは競争者の売上げを奪うことにより,大きな利益を得ることができる可能性が高いので,競争者と協調的な行動をとる誘因は小さくなり,また,競争者の行動を予測することが困難であると考えられるので,競争者と協調的な行動がとられにくいと考えられる。
ウ 過去の競争の状況
 協調的行動がとられることとなるか否かを判断するに当たっては,過去の市場シェアや価格の変動状況も考慮される。
 例えば,市場シェアや価格の変動が激しい場合には,他の事業者がどのような行動をとるか予測することは困難であることが多いと考えられるので,競争者と協調的な行動がとられにくいと考えられる。
 他方,市場シェアや価格の変動があまりない場合には,他の事業者がどのような行動をとるか予測しやすく,競争者と協調的な行動がとられる可能性がより高いと考えられる。また,例えば,価格改定について協調的行動がとられたことがある場合には,当該商品について協調的行動がとられやすい取引実態等がある可能性が高いと考えられる。
(3) 輸入,参入及び隣接市場からの競争圧力等
 輸入圧力が十分に働いていれば,例えば,協調的に国内品の価格を引き上げたとしても,輸入品が増加し,売上げを奪われることになるので,協調的行動がとられる可能性は低くなると考えられる。
 現在相当量の輸入が行われており,海外の事業者の生産費用や事業戦略等が国内の事業者と異なる場合には,海外の事業者と国内の事業者の利害が一致しにくく,協調的な行動がとられにくい可能性がある。このような状況において国内品の価格が引き上げられた場合には,輸入品が増加するので,当事会社グループとその競争者が協調的行動により価格等をある程度自由に左右することは困難であると考えられる。ただし,海外の事業者が国内において既存業者として定着しているような場合等においては,当該事業者が当事会社を含む競争者と協調的行動をとることも考えられる。
 また,現在の輸入量が小さい場合であっても,例えば,国内の事業者が協調的に国内品の価格を引き上げた場合に,輸入品が容易に増加し,国内品の売上げを奪う場合には,協調的行動がとられる可能性は低くなると考えられる。
 国内の事業者が価格を引き上げた場合に,輸入圧力が働くか否かは,前記2(2)[1]~[4]と同様の観点から,制度上の障壁の程度,輸入に係る輸送費用の程度や流通上の問題の有無,輸入品と国内品の代替性の程度及び海外の供給可能性の程度を検討し,当事会社及び他の国内の事業者が協調して価格を引き上げた場合に,需要者が国内品から輸入品に容易に切り替えられるため,一定の期間(注7)に輸入が増加し,価格引上げを妨げることとなるか否かについて検討する。
 また,参入についても同様に考えられる。参入の可能性については,前記2(3)[1]~[4]と同様の観点から,制度上の参入障壁の程度,実態面での参入障壁の程度,参入者の商品と既存事業者の商品の代替性の程度及び参入可能性の程度を検討し,当事会社及び他の事業者が協調して価格を引き上げた場合に,一定の期間(注7)に参入が行われ,価格引上げを妨げることとなるか否かについて検討する。
 隣接市場からの競争圧力や需要者からの競争圧力も,同様に,協調的行動がとられることを妨げ,あるいは,当事会社グループとその競争者が協調的行動により価格等をある程度自由に左右することを妨げる要因となり得る。
 例えば,需給状況,主な需要者の調達方法及び供給先の分散の状況又は変更の難易の程度などからみて,需要者の価格交渉力が強い場合には,当事会社グループとその競争者が協調的行動をとることが困難である場合が多いと考えられる。
(4) 効率性及び当事会社グループの経営状況
 前記2(7)及び(8)に準じて判断する。

第5 垂直型企業結合及び混合型企業結合による競争の実質的制限

1 基本的考え方

 前記のとおり,垂直型企業結合及び混合型企業結合は,一定の取引分野における競争単位の数を減少させないので,水平型企業結合に比べて競争に与える影響は大きくなく,市場の閉鎖性・排他性,協調的行動等による競争の実質的制限の問題を生じない限り,通常,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるとは考えられない。垂直型企業結合及び混合型企業結合についても,単独行動による競争の実質的制限と協調的行動による競争の実質的制限の2つの観点から検討される。
(1) 単独行動による競争の実質的制限
 垂直型企業結合及び混合型企業結合が単独行動により一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるのは,典型的には,次のような場合である。
 垂直型企業結合が行われると,当事会社グループ間でのみ取引することが有利になるため,事実上,他の事業者の取引の機会が奪われ,当事会社グループ間の取引部分について閉鎖性・排他性の問題が生じる場合がある。例えば,複数の原材料メーカーより原材料を購入し,かつ,大きな市場シェアを有する完成品メーカーと原材料メーカーが合併し,当事会社の完成品メーカー部門が当事会社の原材料部門からのみ原材料を調達する場合,他の原材料メーカーは,事実上,大口の需要先との取引の機会を奪われる可能性がある。また,例えば,複数の完成品メーカーに原材料を販売し,かつ,大きな市場シェアを有する原材料メーカーと当該原材料の需要者である完成品メーカーが合併し,当事会社の原材料メーカー部門がその完成品メーカー部門にのみ原材料を販売するようになる場合,他の完成品メーカーは,事実上,主要な原材料の供給元を奪われる可能性がある。有力なメーカーと有力な流通業者とが合併した場合も,他のメーカーが新規参入をするに当たって,自ら流通網を整備しない限り参入が困難となるときには,競争に及ぼす影響が大きい。
 なお,垂直型企業結合後も当事会社が競争者と取引を継続する場合において,企業結合前と比較して競争者が取引上不利に取り扱われることにより,実効性のある競争が期待できなくなるときも,競争に及ぼす影響が大きい。
 当事会社グループの市場シェアが大きい場合には,垂直型企業結合によって当事会社グループ間の取引部分についてこのような閉鎖性・排他性の問題が生じる結果,当事会社グループが当該商品の価格その他の条件をある程度自由に左右することができる状態が容易に現出し得るときがある。このような場合,垂直型企業結合は,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる。
 混合型企業結合が行われ,当事会社グループの総合的な事業能力が増大する場合にも,市場の閉鎖性・排他性等の問題が生じるときがある。例えば,企業結合後の当事会社グループの原材料調達力,技術力,販売力,信用力,ブランド力,広告宣伝力等の事業能力が増大し,競争力が著しく高まり,それによって競争者が競争的な行動をとることが困難になり,市場の閉鎖性・排他性等の問題が生じるときがある。
(2) 協調的行動による競争の実質的制限
 垂直型企業結合及び混合型企業結合が協調的行動により一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるのは,典型的には,次のような場合である。
 例えば,メーカーと流通業者との間に垂直的企業結合が生じることによって,メーカーが垂直型企業結合関係にある流通業者を通じて,当該流通業者と取引のある他のメーカーの価格等の情報を入手し得るようになる結果,当事会社グループのメーカーを含むメーカー間で協調的に行動することが高い確度で予測することができるようになる場合がある。このような場合には,当事会社グループとその競争者が当該商品の価格等をある程度自由に左右することができる状態が容易に現出し得るので,垂直型企業結合が,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる。
 混合型企業結合が行われた場合にも,同様の問題が生じる場合がある。
(3) 競争を実質的に制限することとならない場合
 垂直型企業結合及び混合型企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるか否かについては,個々の事案ごとに後記2の各判断要素を総合的に勘案して判断するが,企業結合後の当事会社グループの市場シェアが下記[1]又は[2]に該当する場合には,垂直型企業結合及び混合型企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるとは通常考えられない。
[1] 当事会社が関係するすべての一定の取引分野において,企業結合後の当事会社グループの市場シェアが10%以下である場合
[2] 当事会社が関係するすべての一定の取引分野において,企業結合後のHHIが2,500以下の場合であって,企業結合後の当事会社グループの市場シェアが25%以下である場合
 なお,上記の基準に該当しない場合であっても,直ちに競争を実質的に制限することとなるものではなく個々の事案ごとに判断されることとなるが,過去の事例に照らせば,企業結合後のHHIが2,500以下であり,かつ,企業結合後の当事会社グループの市場シェアが35%以下の場合には,競争を実質的に制限することとなるおそれは小さいと通常考えられる。

2 垂直型企業結合及び混合型企業結合による競争の実質的制限の判断要素

(1) 単独行動による競争の実質的制限の判断要素
 次の判断要素を総合的に勘案して,垂直型企業結合及び混合型企業結合が単独行動により一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるか否か判断する。
ア 当事会社グループの地位及び競争者の状況
 企業結合後の当事会社グループの市場シェアが小さく,その順位も低い場合には,市場の閉鎖性・排他性の問題が生じる可能性は小さい。
 また,当事会社グループの市場シェアと競争者の市場シェアの格差が小さい場合や,競争者の供給余力が大きい場合には,代替的な取引先を確保することができる可能性が大きいので,市場の閉鎖性・排他性の問題が生じる可能性は小さい。
イ 輸入・参入,総合的な事業能力,効率性等
 第4の2(2)~(8)に準じて判断する。
ウ その他
 企業結合の当事会社の一部が他の当事会社の潜在的な競争者である場合には,当該企業結合によって一部の当事会社の新規参入の可能性を消滅させることになることも考慮する。
(2) 協調的行動による競争の実質的制限の判断要素
 第4の3(1)~(3)並びに2(7)及び(8)に準じて判断する。

第6 競争の実質的制限を解消する措置

1 基本的な考え方

 企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合においても,当事会社が一定の適切な措置を講じることにより,その問題を解消することができる場合がある(以下,このような措置を「問題解消措置」という。)。
 問題解消措置としてどのような措置が適切かは,個々の企業結合に応じて,個別具体的に検討されるべきものであるが,問題解消措置は,事業譲渡等構造的な措置が原則であり,当事会社グループが価格等をある程度自由に左右することができないように,企業結合によって失われる競争を回復することができるものであることが基本となる。ただし,技術革新等により市場構造の変動が激しい市場においては,一定の行動に関する措置を採ることが妥当な場合も考えられる。
 また,問題解消措置は,原則として,当該企業結合が実行される前に講じられるべきものである。
やむを得ず,当該企業結合の実行後に問題解消措置を講じることとなる場合には,問題解消措置を講じる期限が適切かつ明確に定められていることが必要である。また,例えば,問題解消措置として事業部門の全部又は一部の譲渡を行う場合には,当該企業結合の実行前に譲受先等が決定していることが望ましく,そうでないときには,譲受先等について公正取引委員会の事前の了解を得ることが必要となる場合がある。
 なお,当事会社グループの申出に基づき,企業結合後の競争条件の変化を踏まえ,当該措置を継続する必要性を評価した結果,当該措置の内容を変更又は終了しても競争を実質的に制限することとなるおそれがない状況になったと判断される場合には,問題解消措置の内容を変更又は問題解消措置を終了することを認めることがある。

2 問題解消措置の類型

 典型的な問題解消措置としては,次のようなものが考えられる。これらが適切な措置となるよう,単独で,あるいは組み合わせて,講じることが考えられる。
(1) 事業譲渡等
 企業結合によって一定の取引分野における競争が実質的に制限されることとなるという問題を解消するために最も有効な措置は,新規の独立した競争者を創出し,あるいは,既存の競争者が有効な牽制力を有することとなるよう強化する措置である。
 このような措置としては,当事会社グループの事業部門の全部又は一部の譲渡,当事会社グループと結合関係にある会社の結合関係の解消(議決権保有の取止め又は議決権保有比率の引下げ,役員兼任の取止め等),第三者との業務提携の解消などがある。
 なお,需要が減少傾向にあるなどのために,当事会社グループの事業部門(例えば,製造販売・開発部門)の全部又は一部の譲受先が容易に出現する状況になく,商品が成熟しており,研究開発,需要者の要求に応じた商品の改良などのサービス等が競争上あまり重要でないなど特段の事情が認められる場合には,競争者に対して当該商品の生産費用に相当する価格での引取権を設定する(長期的供給契約を締結する)ことを問題解消措置とすることが有効であると判断されるときもある。
(2) その他
ア 輸入・参入を促進する措置等
 需要が減少傾向にある等のために,当事会社グループの事業部門の全部又は一部の譲受先が容易に出現する状況にないなどの理由から,事業譲渡等を問題解消措置として講じることができないと認められる場合には,例外的に輸入・参入を促進すること等によって,企業結合によって一定の取引分野における競争が実質的に制限されることとなるという問題を解消することができると判断される場合がある。
 例えば,輸入に必要な貯蔵設備や物流サービス部門等を当事会社グループが有している場合,それらを輸入業者等が利用することができるようにし,輸入を促進することにより,企業結合によって一定の取引分野における競争が実質的に制限されることとなるという問題を解消することができると判断される場合がある。また,当事会社が有している特許権等について,競争者や新規参入者の求めに応じて適正な条件で実施許諾等をすることにより,企業結合によって一定の取引分野における競争が実質的に制限されることとなるという問題を解消することができると判断される場合がある。
イ 当事会社グループの行動に関する措置
 前記(1)及び(2)アのほか,当事会社グループの行動に関する措置を講じることにより,企業結合によって一定の取引分野における競争が実質的に制限されることとなるという問題を解消することができると判断される場合がある。
 例えば,商品の生産は共同出資会社において行うが,販売は出資会社がそれぞれ行うこととしている企業結合の場合,出資会社相互間及び出資会社と共同出資会社間において当該商品の販売に関する情報の交換を遮断すること,共同資材調達の禁止など独立性を確保する措置を講じることにより,企業結合によって一定の取引分野における競争が実質的に制限されることとなるという問題を解消することができると判断される場合がある(ただし,前記第4の3(1)エ参照)。また,事業を行うために不可欠な設備の利用等について,結合関係にない事業者を差別的に取り扱うことを禁止することにより,市場の閉鎖性・排他性の問題が生じることを防止することができると判断される場合がある。

(付)禁止期間の短縮について

 法第10条第8項(法第15条第3項,法第15条の2第4項,法第15条の3第3項及び法第16条第3項において読み替えて準用する場合を含む。)において,会社は,届出受理の日から30日を経過するまでは株式取得等(株式取得,合併,共同新設分割,吸収分割,共同株式移転及び事業等の譲受けをいう。以下同じ。)をしてはならないと規定されている。しかし,同項において,公正取引委員会は,必要があると認める場合には,当該期間を短縮することができる旨規定されている。この禁止期間の短縮は,次の[1]及び[2]の要件を満たしている場合に認めることができるものとする。
[1] 一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないことが明らかな場合
 前記第4の1(3)及び第5の1(3)に該当する案件については,これに該当する場合が多いと考えられる。
[2] 禁止期間を短縮することについて届出会社が書面で申し出た場合

企業結合審査のフローチャート

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