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(平成10年度:事例11)大和證券(株)と(株)住友銀行の業務提携

(平成10年度:事例11)大和證券(株)と(株)住友銀行の業務提携

1 本件の概要

 本件は,大和證券(株)(以下「大和證券」という。)がリテール部門とホールセール・デリバティブ部門を分社化するに当たって,ホールセール・デリバティブ部門について(株)住友銀行(以下「住友銀行」という。)との共同出資で合弁会社を設立しようとするものであり(併せて,本件合弁会社の営業に当たり,大和證券の関連部門及び住友キャピタル証券(株)(以下「住友キャピタル証券」という。)から営業譲渡が行われる。),本件合弁会社である大和証券エスビーキャピタル・マーケッツ(株)(以下「大和SBCM」という。)の株式を大和證券及び住友銀行がそれぞれ5%を超えて取得するものであることから,当委員会に対し,法第11条第1項ただし書の規定による認可申請を行ったものである。

本件の概要図

2 独占禁止法上の考え方

 公正取引委員会は,法第11条第1項ただし書の規定による認可をどのような場合に行うかについて,「独占禁止法第11条の規定による金融会社の株式保有の認可に関する考え方」(平成9年12月 公正取引委員会。以下「11条ガイドライン」という。)を公表し,認可についての考え方を明らかにしている。大和SBCMは,ホールセール業務(株式・債券の引受け,販売,トレーディング業務及びM&A等のインベストメントバンキング業務)及びデリバティブ業務を行うことから,11条ガイドラインに認可類型として掲げた「金融会社」に該当するため,次の2つの場合に該当しない限り,認可を行うこととしている。

(1) 9条ガイドラインにおける「事業支配力が過度に集中すること」の考え方に照らして,申請会社,株式発行会社及び申請会社が株式の所有により事業活動を支配している国内の会社の事業支配力が過度に集中することとなること

(2) 申請会社又は株式発行会社の株式保有により一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなること

(1) 事業支配力の過度の集中

 9条ガイドラインにおいて,事業支配力が過度に集中することとなる場合として3つの類型を挙げている(事例10参照)。住友銀行による大和SBCMの株式所有比率は40%であり,大和證券が60%を出資していることから,大和SBCMは,大和證券の子会社である。そこで,大和證券グループ(大和證券+国内の子会社+実質子会社)が,3つの類型に該当するかについて検討すると,第1類型については同グループの総資産は15兆円を超えていないこと,第2類型については総資産が15兆円を超える金融会社が存在しないこと,第3類型については5以上の事業分野で有力な事業者が存在しないことから,本件株式取得により,大和證券グループの事業支配力が過度に集中することとはならないと判断した。
 なお,住友銀行の株式取得については,大和SBCMへの出資比率は40%であるものの,単独の筆頭株主ではないことから,同社は住友銀行の実質子会社ではなく,事業支配力の過度の集中の問題は生じない。

(2) 一定の取引分野における競争の実質的制限

 大和證券,住友銀行,住友キャピタル証券においては,債券の引受け,売買等の取引分野において事業が重複するが,合弁会社のシェアについてみると,株式引受けは20%程度であるほかはいずれも10%程度であり,住友キャピタル証券からの譲渡によるシェアの増加は1~2%程度とわずかであること,有力な競争業者が多数存在していること等を踏まえると,大和證券及び住友銀行による本件株式取得により一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

 以上から,本件取得については第11条第1項ただし書の規定に基づいて認可するのが相当であると判断した。

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