ホーム >独占禁止法 >企業結合 >主要な企業結合事例 >平成10年度における主要な企業結合事例 >

(平成10年度:事例6)大阪商船三井船舶(株)とナビックスライン(株)の合併(平成11年2月合併届出受理,4月合併)(新会社名 商船三井(株))

(平成10年度:事例6)大阪商船三井船舶(株)とナビックスライン(株)の合併(平成11年2月合併届出受理,4月合併)(新会社名 商船三井(株))

1 本件の概要

 本件は,外航海運業者である大阪商船三井船舶(株)とナビックスライン(株)が,国際競争力を高めていくために経営基盤の強化,経営資源の効率的な活用を図ること等を目的として合併しようとするものである。
 両当事会社は,自社所有船舶及び他の船舶所有者から賃借又は傭船した船舶を運航する海運業者である。
 外航海運業は,日本と外国の港の間等において船舶により旅客や貨物の輸送を行うものであるが,両当事会社は貨物輸送を行っている。
 外航海運の貨物輸送は,定期船による場合と不定期船による場合とに分かれる。定期船による輸送は,外航海運業者が固定的な運航日程・ルートを設定して不特定多数の貨物を輸送するものであり,コンテナ化した貨物の輸送が多い。不定期船による輸送は,外航海運業者と個別の荷主との契約に基づき,両当事者の合意した運航日程及びルートにより鉄鉱石,石炭,原油等の貨物を輸送するものであり,契約期間は10年を超える長期のものからスポット的なものまで多岐にわたっている。

2 独占禁止法上の考え方

(1) 一定の取引分野

 定期船による輸送と不定期船による輸送とでは契約形態が異なっていることから,それぞれ別個に検討する必要がある。
 不定期船による輸送については,輸送される貨物の種類別に商慣行に差異が見られ,貨物の種類別に専用船化が進んでいる分野や専用船でしか運搬できない分野も存在することから,日本と外国の港の間の不定期船による輸送分野について,鉄鉱石,石炭,チップ,原油等の貨物の種類別に一定の取引分野が成立すると判断した。
 なお,定期船による輸送については,航路別に寄港地・目的地が異なっており,主要航路別に一定の取引分野が成立すると考えられるが,本件においては,両当事会社間で共通する主要航路が存在しないことから,本件で検討すべき一定の取引分野には含まれないと判断した。

(2) 競争への影響

 本件合併により,両当事会社の不定期船による鉄鉱石及びチップの輸送量シェアはそれぞれ約35%かつ第1位となる。また,石炭及び原油を加えた4つの取引分野それぞれにおいて上位2社(上位2社と結合関係のある会社を含む。)の累積集中度が50~70%となる。
 しかしながら,国内に有力な競争業者が存在するだけでなく,荷主にとって,取引先の選択に当たっては,国内の外航海運業者だけでなく,外国の外航海運業者も同等にその対象として取引を行うことが可能な状況にあると認められることから,競争業者としては,現に取引をしている国内の外航海運業者だけでなく,外国の外航海運業者も含まれ,これらの外航海運業者間において競争が行われ得るものと評価することができる。
 また,不定期船の運賃等は,貨物輸送量の増減とそれに伴う船腹の需給バランスの変化を主たる要因とする国際市況の影響を受けること,荷主が鉄鋼メーカー,電力会社,製紙メーカー,石油元売会社といった価格交渉力のある事業者であることから,荷主との価格交渉において,外航海運業者の取引上の地位は有利なものとはいえないと考えられる。
 これらの事情を総合的に勘案すれば,(1)において画定したいずれの取引分野においても,当事会社が単独で又は協調的行動をとることにより競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

ページトップへ