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(平成10年度:事例7) 日本石油(株)と三菱石油(株)の合併(平成11年2月合併届出受理,4月合併)(新会社名 日石三菱(株))

(平成10年度:事例7) 日本石油(株)と三菱石油(株)の合併(平成11年2月合併届出受理,4月合併)(新会社名 日石三菱(株))

1 本件の概要

 本件は,石油元売会社である日本石油(株)と三菱石油(株)が,石油産業における厳しい環境変化を踏まえ,経営資源を結集し,一層の効率化を図ること等を目的として合併しようとするものである。
 両当事会社は,自ら石油の精製を行い,これにより得られる石油製品及び他の石油精製業者から購入した石油製品を特約店等の流通業者等に販売している。
 両当事会社が共通して取り扱っている石油製品としては,ガソリン,灯油,軽油,ジェット燃料油,A重油,C重油,潤滑油(高級,並級),ナフサ及びアスファルトがある。

2 独占禁止法上の考え方

(1) 一定の取引分野

ア 商品範囲

 石油製品全体の販売で一定の取引分野が成立するとともに,前記1に掲げる各石油製品については,その用途がそれぞれ異なることから,各石油製品ごとの販売分野について一定の取引分野が成立すると判断した。

イ 地理的範囲

 石油元売会社は,両当事会社を含めそのほとんどが全国の流通業者等に石油製品を販売していることから,各石油製品の全国における販売分野について一定の取引分野が成立すると判断した。
 加えて,ガソリン,灯油及び軽油については,基本的には,石油元売会社が各都道府県の地域における小売市況を参考に仕切価格を設定していることから,各都道府県における販売分野についても一定の取引分野が成立すると判断した。
 また,アスファルトについては,ブロック(北海道,東北,関東,中部,近畿,中国,四国,九州及び沖縄)ごとに価格が形成されていること,アスファルトは温度が下がると固まってしまうために長時間の輸送が困難であり,ブロック内での輸送が中心であることから,各ブロック単位における販売分野についても一定の取引分野が成立すると判断した。

(2) 競争への影響

 以下の事情を総合的に勘案すれば,本件合併により,(1)において画定したいずれの取引分野においても,競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

ア 石油製品全体

 両当事会社(両当事会社と結合関係にある会社を含む。)の石油製品全体の販売シェアは,合併後約25%かつ第1位となる。
 しかしながら,他にも有力な競争業者が存在しており,特に,いわゆるメジャーの日本法人は,親会社が世界的に事業展開しているため,石油製品の調達能力を始めとして総合的事業能力が高い。
 また,平成8年に「特定石油製品輸入暫定措置法」が廃止されたことにより,元売会社以外による石油製品の輸入が容易になり,商社及び大口ユーザーの一部が輸入を開始していることから,輸入の拡大の可能性が認められ,輸入を石油製品の販売分野の競争を促進する要因として評価できるようになっている。

イ 各石油製品

(ア) ガソリン,灯油及び軽油
 ガソリン,灯油及び軽油のそれぞれについて,新会社の販売シェアは,全国で約25%かつ第1位となる。また,地域的にみた場合,多くの県において25%超かつ第1位になり,一部には30%を超す地域もある。
 しかしながら,上記の各石油製品とも,有力な競争業者が存在し,また,どの地域においても小売段階での競争が活発に行われており,これが元売会社間の競争を促すと考えられるとともに,輸入も容易になってきている。
 加えて,ほとんどの石油元売会社は全国で事業展開をしていることから,各都道府県における販売シェアは固定的なものではないと考えられる。

(イ) A重油,C重油及びアスファルト
 A重油,C重油及びアスファルト(東北地方,四国地方)のそれぞれについて,新会社の販売シェアは約25~30%かつ第1位となるが,それぞれの取引分野において有力な競争業者が存在する。

(ウ) 高級潤滑油
 高級潤滑油について,新会社の販売シェアは約25%かつ第1位となるが,有力な競争業者が存在するとともに,主なユーザーは価格交渉力のある事業者である。

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