1 本件の概要
本件は,事業の再編成,重複店舗の見直し等による経営効率化を目的として,関西圏を営業基盤とする(株)大和銀行(以下「大和銀行」という。),(株)近畿大阪銀行及び(株)奈良銀行が共同で持株会社(持株会社の名称は,「(株)大和銀ホールディングス」)を設立して経営統合を行い,その後,首都 圏を営業基盤とする(株)あさひ銀行(以下「あさひ銀行」という。)が当該統合に参加するものである。
2 独占禁止法上の考え方
(1) 一定の取引分野
ア 役務の範囲
本件については,金融分野における競争への影響の検討に当たり,預金業務,貸出業務,外国為替業務,証券業務及び信託業務についてそれぞれ一定の取引分野が成立すると判断したが,これらのうち,競争への影響が大きい預金業務及び貸出業務について重点的に検討した。
イ 地理的範囲
大和銀行及びあさひ銀行は全国的に営業展開しているため,全国市場について一定の取引分野が成立するとともに,当事会社の営業地域,地域経済の実態等からみて都道府県別その他の地域別にも一定の取引分野が成立すると判断した。
(2) 競争への影響
ア 近年,我が国においては金融市場の自由化が進みつつあるところ,直接金融の進展により企業の資金調達手段が多様化するとともに,都市銀行等による中小企業向け取引の拡充等の動きにより,都市銀行や地方銀行という枠を超えた競争が活発化する動きがみられる。また,地方銀行,信用金庫等の地域金融機関においても,個人・企業に対して多様な商品・サービスの提供等を行う動きがあり,地域金融機関間での競争も活発化しつつある。
イ 本件統合により,預金業務及び貸出業務の合算シェアは,全国市場ではともに約10%で,その順位は第5位となる。
また,地域的市場についてみると,特に埼玉県での貸出業務において,当事会社の合算シェアが40%強で,その順位は第1位となるが,本件統合による増加分は僅少であるほか,都市銀行,地方銀行等の有力な競争業者が存在する。さらに,大阪府内の大阪市を除く複数の地域において,貸出業務における当事会社の合算シェアが20%強から25%強で,その順位はそれぞれ第1位となるが,これらの地域においては都市銀行,地方銀行,信用金庫等の有力な競争事業者が存在する。
上記の事情を総合的に勘案すれば,上記2(1)で画定したいずれの取引分野においても,競争を実質的に制限することとはならないと判断した。