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(平成14年度:事例5)エー・アンド・エム スチレン(株)及び出光石油化学(株)によるポリスチレン事業の統合について

(平成14年度:事例5)エー・アンド・エム スチレン(株)及び出光石油化学(株)によるポリスチレン事業の統合について

第1 本件の概要等

1 本件の概要

 本件は,旭化成(株)及び三菱化学(株)が折半出資しているエー・アンド・エムスチレン(株)(以下「A&Mスチレン」という。)及び出光石油化学(株)(以下「出光石化」という。)が,ユーザーの海外移転等により国内市場が縮小傾向にあることから,更なる合理化,効率化を目的に合弁会社を設立することにより,ポリスチレン事業を統合するものである(新会社の名称は,「PSジャパン(株)」)。

2 製品概要

 ポリスチレンは,エチレン及びベンゼンを原料として生産されるスチレンモノマーを重合(分子量の比較的小さい化合物を結合させて大きな分子量の化合物とすること。)して製造され,一般用ポリスチレン及び耐衝撃性ポリスチレンに大別される。耐衝撃性ポリスチレンは,一般用ポリスチレンに比べ,衝撃性は高いものの,透明性で劣っている。ポリスチレンは,ペレットの状態で出荷され,製品の輸送は容易となっている。
 ポリスチレンは,成形加工性に優れており,家電製品・事務機器や包装用途に使用されている。一般用ポリスチレン及び耐衝撃性ポリスチレンは,おおむね同一の用途で使用することも可能である。

第2 独占禁止法上の考え方

1 一定の取引分野

 一般用ポリスチレン及び耐衝撃性ポリスチレンは,おおむね同一の用途で使用することも可能であり,また,両者の基本的な製造工程は同一であって,それぞれ製造設備に重要な変更を加えることなく生産することが可能であることから,両者を合わせたポリスチレンの製造・販売分野に一定の取引分野が成立すると判断した。

2 競争への影響

(1) 市場の状況

 本件統合により,当事会社の合算販売数量シェア・順位は45%弱・第1位となる。また,上位3社累積シェアは,約85%となる。

ポリスチレンの国内販売数量シェア
順位 メーカー シェア
1

A&Mスチレン

約35%
2 A社 約25%
3 B社 約15%
4 出光石化 約10%
5 C社 約10%
  輸入 約5%
(1) 当事会社合算 約45%
  合計 100%

 (出所:当事会社提出資料)

(2) 考慮事項

ア 競争事業者
 販売数量シェア約25%,同約15%及び同約10%を有する有力な競争事業者が存在する。

イ 取引先変更の容易性
 ポリスチレンは国内外のメーカー間に品質差がみられず,また,ユーザーによる使い慣れの問題もない。
 さらに,ユーザーの海外移転によって国内需要が縮小傾向にある中,当事会社以外の他の国内メーカーは一定の供給余力を有しているほか,後記ウの輸入圧力の存在を踏まえると,ユーザーにおいては,当事会社の価格の状況に応じ,輸入品も含め,取引先を変更することは容易である。
 また,ユーザーの多くは,前記のとおり取引先の変更が容易であるため,低廉な価格による調達を重視する観点から,複数のメーカーから購入するとともに,より低い価格を提示したメーカーからの調達割合を増加させるとの方針を採っており,ユーザーの価格交渉力は強いものとなっている。

ウ 輸入
 ポリスチレンは,国内品と輸入品との間で品質差はなく,また,ペレット状の固形物であり,輸入に当たっての運搬・取扱いは容易である。また,国内の流通においても,実際に輸入品を取り扱う商社等が存在し,国内品とほぼ同様の販売・配送が可能となっていることから,ユーザーは国内市況と海外市況の状況に応じて国内品から輸入品に切り替えることは容易であるとしている。また,国内への主要な輸入元であるアジア地域のメーカーの供給余力は,国内需要を上回っている状況にある。
 このような状況の下,ユーザーは,国内市況と海外市況の状況に応じて,輸入品の購入割合を増減させたり,今後,国内市況と海外市況との差が縮小した場合には,輸入品の調達を再開するとしている。
 現状では,輸入品の割合は約5%に過ぎないものの,輸入に関する前記の状況を考慮すれば,国内品の価格の状況に応じて,輸入品が増加する蓋然性が高いものと考えられ,輸入圧力が当事会社に対する有効な牽制力となると考えられる。

 (3) 独占禁止法上の評価

 ポリスチレンは,競争事業者や輸入の供給余力があり,取引先の変更も容易となっている。さらに,輸入が容易であり,国内品の価格の状況に応じて輸入量が増加する蓋然性が高く,輸入圧力が一定程度働いていると認められることから,本件統合により,ポリスチレンの取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと考えられる。

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