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(平成19年度:事例2)三菱ウェルファーマ(株)と田辺製薬(株)との合併

第1 本件の概要

 本件は,医療用医薬品の製造販売事業を営む三菱ウェルファーマ株式会社(以下「三菱ウェルファーマ」という。)と,同事業を営む田辺製薬株式会社(以下「田辺製薬」という。)が合併することを計画したものである。
 関係法条は,独占禁止法第15条である。

第2 一定の取引分野

1 医療用医薬品の概要等

 医療用医薬品とは,医師若しくは歯科医師によって使用され又はこれらの者の処方せん若しくは指示によって使用されることを目的として供給される医薬品をいう。
 医療用医薬品の製造販売については,薬事法の規定により,品目ごとに,臨床試験の試験成績に関する資料等を添付の上で事前に厚生労働大臣に申請し,同大臣の承認を得ることが義務付けられている。
 基礎研究の開始から臨床試験等を経て新薬が発売されるまでには,通常,少なくとも10年程度を要する。他方,後発医薬品(いわゆるジェネリック医薬品)の場合には,先発医薬品と同一成分であることから基礎研究や臨床試験等が省略でき,発売までの準備期間は通常2~3年程度である。
 医療用医薬品は,通常,製薬会社から卸売業者を経て医療機関等に販売されている。

2 医療用医薬品の価格について

(1) 薬価について

 薬価とは,健康保険法に基づき厚生労働省が定める医療用医薬品の公定価格であり,医療機関等が使用した医薬品について,健康保険から医療機関等に対して支払われる診療報酬等の基準となる価格である。薬価は医薬品の品目(銘柄・剤型・容量)別に定められている。

(2) 仕切価格等について

 製薬会社の卸売業者に対する販売価格は,仕切価格と呼ばれる。業界の慣行として,製薬会社各社は,仕切価格については銘柄ごとに一律の額を採用しており,取引先ごとに仕切価格を変えることは行われていない。
 また,製薬会社は,卸売業者に対し,取扱量や目標達成率等に応じて,「リベート」(注1)及び「アローアンス」(注2)と呼ばれる金員を支払っている。
 これらにより,卸売業者は,実質的には仕切価格よりも低い価格で製薬会社から医療用医薬品を仕入れている実態にある。
 なお,各製薬会社の仕切価格,リベート並びにアローアンスの額及び率は公表されていない。

(注1)「リベート」とは,重点品目の販売,卸売業者の購入総額等に応じて支払われる金員であって,経理上,仕切価格の修正として処理されるものをいう。
(注2)「アローアンス」とは,販売目標の達成率等に応じて支払われる金員であって,経理上,販売促進費として処理されるものをいう。

3 医療用医薬品の分類方法等

 一定の取引分野の画定に当たっては,ATC分類法(Anatomical Therapeutic Chemical Classification System)による分類を参考にした。
 ATC分類法は,医薬品の市場調査の基礎となる統一的分類方法を確立する目的で設定され,国際的に使用されている分類法であり,その分類上の基準は,医薬品の解剖学上の作用部位,適応症,用途,科学的組成,作用メカニズム等である。
 ATC分類法では,医薬品にレベル1からレベル3(一部はレベル4)までの記号(ATCコード)を付して分類を行う。ATCコードの具体例は下表のとおり。

 [ATCコードの具体例]

レベル 具体例
ATCコード 名称
1(大分類) J 一般的全身性抗感染剤
2(中分類) J07 ワクチン類(トキソイドを含む。)
3(小分類) J07A 単一ワクチン類
4(詳細分類) J07A2 破傷風トキソイド

 (注)レベルが1から4に進むにつれて分類が細分化される。

 ATC分類法では,分類の最小単位は原則として小分類であるが,小分類では分類しきれない一部の場合にのみ,小分類の下位に詳細分類が設定される。

4 一定の取引分野の画定

(1) 商品範囲

 ATC分類法で同一の小分類に属する医薬品は,多くの場合,作用部位,効能効果,作用メカニズム,用途等において共通性を有し,需要者にとって代替性を有することから,当事会社が販売している医療用医薬品のほとんどについてはATC分類法の小分類の範囲で商品範囲を画定した。ただし,以下の3種の小分類に属する商品については,需要者にとっての代替性の観点から,小分類の範囲とは異なる商品範囲を画定した。

ア 単一ワクチン類
 単一ワクチン類については,対応する疾患に応じて,小分類の下位に更に詳細分類が設定されており,異なる詳細分類に属する単一ワクチン類は用途が異なるため,需要者にとって代替性がない。このため,単一ワクチン類については,詳細分類の範囲をもって商品範囲を画定した。
 なお,単一ワクチン類の下位分類たる詳細分類のうち,破傷風の予防薬である後記第3-2の破傷風トキソイドについては,破傷風予防という効果の点では,混合ワクチン類の一種である破傷風混合ワクチン等も同等の効果を有する。しかし,破傷風混合ワクチン等の価格は破傷風トキソイドの価格の2倍ないし3倍程度高いことから,破傷風トキソイドの価格が相当程度上昇したとしても,通常,破傷風混合ワクチン等への需要代替が起きることはないと考えられる。よって,破傷風混合ワクチン等は,破傷風トキソイドとは異なる商品範囲に属するものと評価した。

イ 全身性止血剤
 ATC分類で全身性止血剤に属する医薬品のうち,三菱ウェルファーマ等7社が販売している「トロンビン」は,下表のとおり,その他の全身性止血剤とは効能・効果,作用メカニズム及び用法が異なるため,需要者にとって,両者間には代替性がないと考えられる。
 また,三菱ウェルファーマが製造販売する医薬品αは,ATC分類では全身性止血剤には含まれないが,その他の全身性止血剤をベースにビタミン類を加えた配合剤であり,下表のとおり,基本的な効能・効果,有効成分,作用メカニズム及び用法は,トロンビン以外の全身性止血剤と同様である。


トロンビン その他の全身性止血剤 医薬品α
主な効能・効果 通常の結さつ(注)によって止血困難な小血管,毛細血管及び臓器からの出血 毛細血管抵抗性の減弱及び透過性の亢進による出血あるいは出血傾向 毛細血管抵抗性の減弱及び透過性の亢進による出血あるいは出血傾向
有効成分及び
作用メカニズム
血中のフィブリノゲン(繊維素元)に作用してフィブリン(繊維素)を生成し,血液凝固により止血する。 有効成分aが細血管に作用して,血管透過性亢進を抑制し,血管強化により止血する。 有効成分aが細血管に作用して,血管透過性亢進を抑制し,血管強化により止血する。
 また,ビタミン類が血管強化を促し,血液凝固の原因物質を増加させる。
用法 通常,出血局所に直接,溶液を噴霧等するか,又は粉末のまま撒布する。 経口投与,注射又は点滴 経口投与

 (注)止血のため,手術糸等を結ぶこと。

 以上より,全身性止血剤等については,(1)トロンビン,(2)トロンビン以外の全身性止血剤に医薬品αを加えたもの(以下「特定全身性止血剤」という。)のそれぞれについて商品範囲を画定した。
 なお,特定全身性止血剤と一部の用途において代替可能な商品として,抗プラスミン剤があるが,特定全身性止血剤と比較すると,止血に関する作用メカニズムが異なっているほか,眼科領域,糖尿病及び高血圧性疾患に係る使用については,特定全身性止血剤のみが効能・効果を有し,抗プラスミン剤はこれに代替できない。
 これらの点を踏まえ,特定全身性止血剤の使用数量のうち,抗プラスミン剤により代替可能な割合を推計したところ,約20%であった。
 以上より,抗プラスミン剤は,特定全身性止血剤とは異なる商品範囲を構成する可能性が高い(注)と判断した。

 (注) 商品範囲としての特定全身性止血剤に抗プラスミン剤が含まれるかどうかについては,より詳細な検討を行う前に当事会社より問題解消措置の申出があったことから,抗プラスミン剤を含めずに商品範囲を画定し,審査を行った。

ウ その他の中枢神経系用剤
 その他の中枢神経系用剤については,詳細分類は設定されていないが,この小分類は,その名称が示すとおり他に分類されない中枢神経系用剤を便宜上まとめたにすぎないものであり,作用部位,効能効果,作用メカニズム,用途等において共通性を有しないものが含まれていることから,需要者にとっての代替性の観点から更に細分化して商品範囲を画定した。
 その他の中枢神経系用剤に属する商品として,三菱ウェルファーマは医薬品βを,田辺製薬は医薬品γをそれぞれ販売しているが,下表のとおり,両者は効能・効果が異なり,需要者にとって代替性はないと考えられることから,それぞれ別個の商品範囲に属するものと判断した。


医薬品β 医薬品γ
効能・効果 脳梗塞急性期に伴う,神経症候,日常生活動作障害,機能障害の改善 脊髄小脳変性症(注)における運動失調の改善

 (注)運動を司る小脳・脊髄等の神経が,外傷などの明らかな原因がないにもかかわらず変性し破壊され,これにより運動失調や自律神経障害等が起きる疾患の総称。

(2)地理的範囲

 各製薬会社の医療用医薬品はいずれも全国で販売されており,需要者にとって選択可能な製薬会社の範囲が地理的条件によって異なる状況にはないことから,地理的範囲は全国とした。

第3 本件企業結合が競争に与える影響の検討

1 検討を要する商品について

 前記第2-4のとおり画定された一定の取引分野のうち,当事会社間に競争関係があり,かつ,水平型企業結合のセーフハーバーに該当しない破傷風トキソイド及び特定全身性止血剤の取引分野について,本件企業結合が競争に与える影響を検討した。

2 破傷風トキソイドについて

(1) 市場規模

 破傷風トキソイドに係る平成18年度の市場規模は約25億円である。

(2) 市場シェア・HHI

 破傷風トキソイドの販売に係る市場シェアの状況は下表のとおりであり,行為後のHHIは約3,800,HHIの増分は約300である。

順位 会社名 シェア
1 A社 約50%
2 三菱ウェルファーマ 約35%
3 B社 約10%
4 田辺製薬 約5%
5 C社 約2%
  その他 約3%
(2) 当事会社合算 約40%
合計 100%

 (注)平成18年度実績
 (出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)

(3) 製造元

 当事会社ら破傷風トキソイドの販売元の多くは,ワクチン・トキソイド等の製造業者に製造を委託している。
 なお,破傷風トキソイドについては,製造元が厚生労働大臣の製造販売承認を受けており,販売元は同承認を必要としないため,これを受けていない。

(4) 製品差別化の有無

 破傷風トキソイドについては,いずれの製薬会社の製品も同一菌種から製造されており,同質性が高いため,特に差別化が図られているものではない。

(5) 参入について

 前記(3)のとおり,破傷風トキソイドについては,販売元の多くがワクチン・トキソイド等の製造業者に製造を委託している。このため,製造元から供給を受けることにより,破傷風トキソイドの販売元として参入することは容易かつ短期間に行える。

(6) 取引実態

 卸売業者は,通常,複数の販売元の医薬品を取り扱っており,仕入先製薬会社を切り替えることは比較的容易である。
 卸売業者は,販売元に対して通常定点発注(在庫量が一定量を下回ると不足分を発注する方法)を行っており,発注頻度はほぼ毎日である。

3 特定全身性止血剤について

(1) 市場規模

 特定全身性止血剤に係る平成18年度の市場規模は約35億円である。

(2) 市場シェア・HHI

 特定全身性止血剤の市場シェアの状況は下表のとおりであり,行為後のHHIは約7,300,HHIの増分は約800である。

順位 会社名 シェア
1 田辺製薬 約80%
2 三菱ウェルファーマ 約5%
3 D社 0~5%
4 E社 0~5%
5 F社 0~5%
  その他 0~5%
(1) 当事会社合算 約85%
合計 100%

 (注)平成18年度実績
 (出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)

(3) 参入・退出の状況等

 過去10年間の新規参入者は2社ある。このうちの1社はD社であり,参入後数年で順調にシェアを伸ばし,前記のとおり第3位のシェアを獲得するに至っている。
 また,過去5年間に市場から退出した競争事業者は1社ある。
 特定全身性止血剤については,先発医薬品に係る特許は既に存続期間を満了しており,参入に特段の障害はない。

(4) 隣接市場からの競争圧力

 前記第2-4-(1)イのとおり,特定全身性止血剤と一部の用途において代替可能な商品として,抗プラスミン剤がある。前記のとおり,特定全身性止血剤の使用数量のうち,抗プラスミン剤で代替可能な割合は約20%と推計され,両者は別の市場を構成する可能性が高いと評価されるが,抗プラスミン剤は,一定の競争圧力を有すると考えられる。

(5) 取引実態

 卸売業者は,通常,複数の販売元の医薬品を取り扱っており,仕入先製薬会社を切り替えることは比較的容易である。

第4 独占禁止法上の評価

1 破傷風トキソイド

(1) 単独行動による競争の実質的制限について

ア 当事会社合算シェアは約40%(第2位)となるものの,A社というシェア約50%(第1位)を有する有力な競争者が存在する。
イ 既存の製造元から供給を受けることにより,破傷風トキソイドの販売元としての参入は容易かつ短期間に行える。
ウ 田辺製薬のシェアは約5%と比較的少なく,本件合併の市場構造への影響は大きくないと考えられる。
エ 破傷風トキソイドは同質的な商品であり,医療機関等による使用銘柄の切替えは容易と考えられる。
 以上のことから,当事会社の単独行動により,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと考えられる。

(2) 協調的行動による競争の実質的制限について

 前記(1)イ及びウのほか,製薬会社各社の仕切価格,リベート及びアローアンスは公表されておらず,卸売業者への実質的な販売価格は外部から容易には察知しがたいと考えられることから,協調的行動により,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと考えられる。

2 特定全身性止血剤

(1) 単独行動による競争の実質的制限について

 田辺製薬のシェア・順位は約80%・第1位,三菱ウェルファーマのシェア・順位は約5%・第2位であって,行為後シェア・順位は約85%・第1位と非常に高くなる。
 これに対し,競争事業者のシェアはいずれも5%未満と低く,事業規模も小さいことから,牽制力として十分とは評価しがたい。
 また,特定全身性止血剤の一部の用途については,抗プラスミン剤が代替可能であるものの,代替可能と考えられる割合は約20%であり,一定の競争圧力は有するものの,牽制力として十分とはいえないおそれがある。
 よって,当事会社の単独行動により,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるおそれがあると考えられる。

(2) 協調的行動による競争の実質的制限について

 製薬会社各社の仕切価格,リベート及びアローアンスは公表されておらず,卸売業者への実質的な販売価格は外部から容易には察知しがたいと考えられるものの,当該一定の取引分野における当事会社合算シェアは約85%となる一方,競争事業者のシェアはいずれも5%未満と低く,実質的に1社の有力な事業者に市場シェアが集中することとなる。そのため,他の競争者にとって市場シェアの集中する当事会社の行動を予測しやすくなると考えられる。
 また,競争事業者は,市場シェアがいずれも5%未満と低く,多くはジェネリック医薬品メーカーであり事業規模も小さいことから,価格を引き下げて市場シェアを拡大し,競争者の市場シェアを奪うことができる余地は限られると考えられる。
 以上のことから,協調的行動により,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるおそれがあると考えられる。

第5 当事会社が申し出た問題解消措置

 本件合併について,特定全身性止血剤に関して検討を行っている過程で,当事会社は,以下の問題解消措置を採ることを申し出た。

 「三菱ウェルファーマが製造販売するすべての特定全身性止血剤について,これらに係る厚生労働大臣の製造承認(商標を含む。)を,第三者たる製薬会社に承継させる。当該承継の基本合意は,本件合併の実行日前までに締結し,その後,可能な限り速やかに承継を実行する。」

第6 問題解消措置を踏まえた独占禁止法上の評価

 厚生労働大臣の製造承認を第三者たる製薬会社に承継させることにより,承継の対象たる特定全身性止血剤の製造販売を行うことができるのは当該第三者のみとなり,当事会社はこれを行うことができなくなる。
 これにより,特定全身性止血剤については,本件合併による当事会社のシェアの増加はなくなり,前記第4-2記載の問題点は解消されると考えられる。

第7 結論

 以上の状況から,当事会社が申し出た措置が確実に実施された場合には,本件行為により,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

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平成19年度における主要な企業結合事例

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