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(平成19年度:事例7)TDK(株)によるアルプス電気(株)からの磁気ヘッド製造事業用の固定資産の譲受け

第1 本件の概要

 本件は,ハードディスクドライブ(以下「HDD」という。)用磁気ヘッド事業等を営むTDK株式会社(以下「TDK」という。)が,同事業を営むアルプス電気株式会社(以下「アルプス電気」という。)から,同社が保有するHDD用磁気ヘッド事業に係る固定資産を譲り受けることを計画したものである。
 関係法条は,独占禁止法第16条である。

第2 一定の取引分野

1 製品の概要

 磁気ヘッドは,磁気によりデータやプログラムをディスク(磁気ディスク)に保存する装置であるHDDの主要な部品の一つであり,記録媒体であるディスクに信号を記録するための磁界発生(書込)及びディスクからの記録信号磁束の検出(読出)を行う電磁変換素子で,電気信号と磁気信号を相互に変換するための装置である。
 HDDのディスク上に記録された大容量の情報を高速で再生させるため,ディスクは毎分数千から1万回転という超高速で回転していることから,磁気ヘッドがディスクの記録面の磁性体に接触すると,摩擦により磨耗してしまう。そこで,磁性体表面と磁気ヘッドの間は,ディスクの高速回転で空気の流れを作り,磁気ヘッドを浮き上がらせ,極めて接近しながらも,わずかな隙間を保つようになっており,磁気ヘッドは,ディスク表面からわずか0.02マイクロメートル(μm=100万分の1m)のところを浮上している。
 磁気ヘッドの仕様は,HDDのサイズにより異なるが,同一の製造設備を用いて製造されている。サイズの異なるHDDに対応した磁気ヘッドを製造する必要がある場合には,製造設備における設定の変更(プログラムの変更)により極めて短期間で対応することが可能となっている。

2 磁気ヘッドに関する技術

(1) 磁気ヘッドに求められる技術

 現在,HDDの性能を高めるために,特に高密度化及び大容量化が求められている。このような高密度化及び大容量化を実現するためには,磁気ヘッド以外に,ディスク,ヘッド制御,装置制御等の複数の技術要因が関係してくる。そのため,磁気ヘッドでは,読出能力を大きくし,かつ書込密度を高くする技術が特に重視されている。

(2) 最近の技術の流れ

 最近の技術の流れとしては,書込方式では,LMR方式(注1)での記録密度の限界がみえてきたため,PMR方式(注2)の製品が増えてきている。また,読出方式では,GMR方式(注3)からTMR方式(注4)へと移行が進んできており,TMR方式の技術により記録密度は飛躍的に良くなってきているといわれている。
 このような技術の進化を背景に,磁気ヘッドメーカーの間でTMR/PMR製品の開発競争が行われ,平成18年第1四半期から平成19年第1四半期にかけて,アルプス電気を除く磁気ヘッドメーカーが同製品の量産化を実現している。
 なお,アルプス電気では,TMR方式とは異なる他方式の磁気ヘッドの開発を優先して進めてきたため,今後主流となるTMR方式の磁気ヘッドの開発に出遅れたという経緯がある。

(注1) 信号を記録層の膜面に平行な磁化として記録する面内磁気記録方式(Longitudinal Magnetic Recording)
(注2) 信号を記録層の膜面に垂直な磁化として記録する垂直磁気記録方式(Perpendicular Magnetic Recording)。LMR方式に比べて狭い面積に記録できるため,より面記録密度を高められるとされる。
(注3) 巨大磁気抵抗効果(Giant Magneto Resistive 効果)を利用した方式
(注4) トンネル磁気抵抗(Tunneling Magneto Resistive 効果)を利用した方式。GMR方式よりも磁気抵抗比が高いため,より微弱な信号も読み取ることができるとされる。

3 磁気ヘッドの取引

 全世界における磁気ヘッドのメーカーは当事会社のほか4社存在し,この4社はいずれもHDDメーカーである。
 ユーザーであるHDDメーカーは,磁気ヘッドやメディアなどの部品を調整しながらHDDを製造していることから,HDDメーカーは自社仕様で製造するように磁気ヘッドメーカーに指定している。そのため,磁気ヘッドメーカーは,採用に当たっては,HDDの機種ごとにHDDメーカーにサンプルを提示して,設計から試作,量産化と技術の認定を受ける必要がある。
 磁気ヘッドメーカーは,HDDメーカーから過去の価格や調査会社の発表する市況を参考に「HDD価格の何%」という形で算出された価格を基に価格交渉を行う。

4 一定の取引分野の画定

(1) 商品の範囲

 磁気ヘッドはHDDメーカーの指定する仕様に基づいて製造され,全量が発注元のHDDメーカーに部品として納入される。HDDメーカーと発注先の磁気ヘッドメーカーは,磁気ヘッドの開発,生産,価格設定等において一体ともいうべき関係にあり,HDDの競争においては,その主要な構成部品である磁気ヘッドについても,HDDメーカーが内製する場合,磁気ヘッドメーカーに外注する場合を問わず,技術開発を中心とした激しい競争が行われている。
 また,磁気ヘッドは,各種サイズの違いはあっても機能は変わらないことに加えて,仕様の異なる磁気ヘッドについては供給の代替性が認められる。
 こうしたことから,内製も含め,「HDD用磁気ヘッド」において一定の取引分野が成立すると判断した。

(2) 地理的範囲

 磁気ヘッドについては,ユーザーであるHDDメーカーは国籍を問わず,自らが必要とする技術要件を満たし,適切な価格での納入が期待できる磁気ヘッドメーカーと取引を行っている。また,磁気ヘッドメーカーは,製品の本体価格について,いずれの地域向けのものであっても同一の価格で販売している。
 したがって,磁気ヘッドについては,実態として日本市場を含む世界全体で一つの市場が形成されていると判断した。

第3 本件企業結合が競争に与える影響の検討

1 市場規模

 平成18年度の磁気ヘッドの出荷数量はHGA(注)ベースで約14億個,出荷金額で約56億ドルと,HDD2.5インチ用を中心に緩やかな拡大傾向にある。

 (注) 磁気ヘッドはスライダー上に形成されており,このスライダーをサスペンションに取り付けたものを,Head Gimbal Assembly(HGA)という。

2 市場シェア・HHI

 本件企業結合により,当事会社の合算販売数量シェア・順位は約40%・第1位となる。また,本件企業結合後のHHIは約3,000,HHIの増分は約600である。

順位 会社名 シェア
1 TDK(日本) 約30%
2 A社(米国) 約30%
3 B社(米国) 約15%
4 C社(日本) 約10%
5 アルプス電気(日本) 約10%
6 D社(日本) 約5%
(1) 当事会社合算 約40%
合計 100%

 (注)平成18年度実績
 (出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)

3 価格の動向

 HDDメーカーと磁気ヘッドメーカーは,磁気ヘッドの開発,生産,価格設定等において一体ともいうべき関係にあるところ,磁気ヘッドメーカーがHDDの製造販売市場とは無関係に独自の価格設定を行うことは困難であり,磁気ヘッドの価格はHDDの価格に連動する形で下落を続けている。

4 需要者からの競争圧力

 大手コンピュータメーカー等は,HDDメーカーに対して非常に強い価格交渉力を有しているところ,HDDメーカーから磁気ヘッドメーカーへの技術的要請,価格引下げ要請は激しい。

5 競争事業者の存在

 10%以上のシェアを有する競争事業者が複数存在する。

6 競争事業者の供給余力

 磁気ヘッドメーカーの稼働率には余裕があり,競争事業者が自らの製造量を増やすことは十分に可能である。

7 隣接市場(競合品)

 平成18年以降,半導体を用いたフラッシュメモリの記憶容量の増大と価格低下が急速に進行しているところ,小型HDDに代わりフラッシュメモリが搭載される動きが出てきている。
 磁気ヘッドを内製していないHDDメーカーであるE社とF社は,HDD2.5インチ以上の機種に相当する更なる記憶容量を有するフラッシュメモリの開発及び増産を行っており,今後,大容量のHDDについても,フラッシュメモリの価格が低下していけば,フラッシュメモリに急速に移行していくと考えられる。

8 技術革新の動向

 磁気ヘッドメーカーは,HDDメーカーが求めるHDDの高密度化,大容量化に向けた技術開発でしのぎを削っており,新技術を搭載した製品を量産化できるかどうかがシェアを変動させる要因となっている。
 アルプス電気は,今後主流となるTMR方式の磁気ヘッドの開発に出遅れたこともあり,同社とHDDメーカーとの取引は,既に縮小に向かっている。

第4 独占禁止法上の評価

1 単独行動による競争の実質的制限について

 磁気ヘッドメーカーによる独自の価格設定が困難であること,需要者からの競争圧力は非常に強いと認められること,競争事業者に供給余力があること及びHDDの競合品であるフラッシュメモリが存在することから,当事会社の単独行為により,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

2 協調的行動による競争の実質的制限について

 ユーザーであるHDDメーカーからの磁気ヘッドメーカーへの技術的要請,価格引下げ要請は激しいこと,技術革新によりシェアの変動が大きいことなどから,当事会社と競争事業者の協調的行動により,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

第5 結論

 以上の状況から,本件行為により,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

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平成19年度における主要な企業結合事例

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