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(平成18年度:事例9)Seagate Technology によるMaxtor Corporation の子会社化について

第1 本件の概要

 本件は,ハードディスクドライブ(以下「HDD」という。)の製造販売事業を営むSeagateTechnology(本社ケイマン諸島。以下「シーゲイト」という。)が,自社の新設子会社を通じて,Maxtor Corporation(本社米国。以下「マックストア」という。)の株式を取得し,次いで,当該新設会社とマックストアを合併させることにより子会社化することを計画したものである。
 関係法条は,独占禁止法第10条及び第15条である。

第2 一定の取引分野

1 製品の概要

 HDDは,磁性物質の被膜を施したディスクを高速回転させ,ディスク表面に磁気ヘッドを近接させて,データを記録・読み出しさせる方式の記憶装置である。HDDは,データが記録される「ディスク」,ディスクの磁性面にデータを読み書きする「磁気ヘッド」,ディスクを回転させる「スピンドルモーター」等から構成されており,ほこり等の侵入を防ぐため,記憶媒体(=ディスク)と記録を行うための各種電気部品とが一体化されて,金属製の筐体で密閉されている。
 HDDは,大容量かつ高速アクセスが可能であることから,主として,コンピュータの補助記憶装置として利用されてきたが,近年,家庭電化製品のデジタル化が進み,音声映像等のデータをデジタル記録する用途が生じるとともに,HDD自体の記録容量の大容量化,小型化が進んだことから,DVDレコーダー,ポータブルオーディオ,カーナビなどの一般家庭電化製品分野での利用が増加している。

2 HDDの特性を決める要素及び用途

 HDDの容量,製品としての大きさに影響する「ディスク直径」,ディスク直径と記憶密度から決まる「容量」,アクセス時間(注1)に影響する「インターフェース伝送速度」(注2),「シークタイム」(注3)及び「回転速度」(注4)といった各要素の組合せによって,製品としてのHDDの特性が決まる。用途により,HDDに求められる特性は異なり,以下のように整理される。

(1) サーバやデータストレージシステム向け(以下「企業向け」という。)の場合は,リアルタイムで24時間稼動可能という性能が求められるため,データのアクセス時間が短く,信頼性が高いことが重視される。

(2) デスクトップパソコン向けの場合は,容量の大きさとともに,パソコンの価格競争が激化していることを受け,価格面での安さも重視される。

(3) ノートパソコン向けの場合は,容量の大きさとともに小型であること,持ち運びの際の衝撃に耐えられることが重視される。

(4) 家電向けの場合は,ポータブルオーディオや携帯電話などの小型家電については製品サイズが,それ以外の家電については容量及び価格面が重視される。
 なお,家電向けのうち3.5インチHDDと2.5インチHDDについては,デスクトップパソコン向け,ノートパソコン向けと同一製品が使用されている。

 (注1) 磁気ヘッドが所定の位置まで移動し,読み出すデータの位置までディスクが回転し,データを読み出して伝送するという一連の作業にかかる時間。
 (注2) インターフェースとは,コンピュータ本体とHDDを接続する際の規格のことで,インターフェースによってHDDとコンピュータ本体との間でデータをやりとりする際の速度が異なる。
 (注3) ハードディスクなどの記憶装置の中にあるデータを読み書きするために,ディスクヘッドが記録位置に移動するのに要する時間のことである。
 (注4) ディスクが回転する速度であり,これが速いほどHDDの読み書き速度が速くなる。

用途 ディスク直径
(インチ)
容量
(GB)
インターフェース
伝送速度
(Gbps)
シークタイム
(ms)
回転速度
(rpm)
企業向け 3.5 18~500 0.32,
1.5,3.0,
4.0
3.5~8.0 7,200~15,000
デスクトップパソコン向け 3.5 40~750 0.1,1.5 8.0~8.5 5,400~10,000
ノートパソコン向け 2.5 30~160 0.1,1.5 10.5~12.5 4,200~7,200
家電向け 3.5 80~500 0.1,1.5 7,200
2.5以下

 (出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)

3 HDDの取引

 全世界におけるHDDの主要メーカーは,当事会社のほか5社存在し,日本のユーザーを含む全世界のユーザーは,当事会社を含む主要メーカーからHDDを調達している。これら主要メーカーの市場シェアは,全世界のHDD需要の大半を占めている。
 HDDのユーザーは,主にコンピュータメーカーや家電メーカーであり,世界中に存在しているが,HDDについては,いずれの国籍のメーカーであっても性能差・品質差がないこと,HDDメーカー各社の主要生産拠点はアジア地域に集中しており,輸送コストが調達先の選定に影響を及ぼすようなものではないことから,ユーザーはHDDメーカーの所在地を問わず調達を行っている。特に,大手コンピュータメーカー等は,当事会社と直接取引を行っており,世界各地に所在する工場で必要とするHDDの数量を取りまとめ,本社が一括して調達を行っており,こうした取引実態は,日本のHDDメーカーやコンピュータメーカー等でも,同様にみられるものである。
 また,HDDの本体価格は,世界各地の生産拠点向けに納入されるものであっても,同一価格が基本である。

4 一定の取引分野の画定

 当事会社はともにHDDメーカーであることから,本件結合は水平型企業結合の面を持つ。また,HDDの製造に必要な主要デバイスについて内製を行っているシーゲイトと,それらの製品を外部から調達しているマックストアとの結合は,垂直型企業結合の面も持つことから,それぞれについて検討を行った。

(1) 水平型企業結合

ア 商品の範囲
 HDDのユーザーは,その用途に応じて,ディスク直径,容量,アクセス時間などの特性がそれぞれ異なるHDDを選択している。各用途のうち,デスクトップパソコン向けHDDと家電向け3.5インチHDDについては,求められる特性が類似しており,実際,デスクトップ向けのラインナップに属するHDDを家電メーカーに納品している。また,ノートパソコン向けHDDと家電向け2.5インチHDDについても,同様の状況にある。他方,企業向けHDDについては,他の用途に用いられるHDDを代替的に使用することができない。
 したがって,「企業向けHDD(3.5インチ)」,「デスクトップパソコン等向けHDD(3.5インチ)」(デスクトップパソコン向けHDD及び家電向け3.5インチHDD),「ノートパソコン等向けHDD(2.5インチ)」(ノートパソコン向けHDD及び家電向け2.5インチHDD)等のそれぞれについて,一定の取引分野を画定することができるが,マックストアは2.5インチ以下のHDDを取り扱っていないため,以下では,「企業向けHDD」及び「デスクトップパソコン等向けHDD」について検討を行う。

イ 地理的範囲
 HDDについては,いずれの国籍のメーカーであっても性能・品質面での差はなく,また,輸送コストがHDDの調達先の選定に影響を及ぼすようなものではないことから,ユーザーは国籍を問わず,自らが必要とする技術要件を満たし,適切な価格での納入が期待できるHDDメーカーを世界各地から選定し,取引を行っている。また,HDDメーカーは,製品の本体価格について,いずれの地域向けのものであっても同一の価格で販売している。これらのことから判断すると,HDDについて,実態として日本市場を含む世界全体で一つの市場が形成されていると考えられる。したがって,以下では,本件企業結合がHDDメーカーとコンピュータメーカー等との間の世界レベルでの取引に与える影響を分析することとした。

(2) 垂直型企業結合

 HDDメーカーは,ディスク,磁気ヘッドといった主要デバイスを調達して,HDDの製造販売を行っている。このため,各デバイスの製造販売市場を川上市場,HDDの製造販売市場を川下市場として,一定の取引分野の商品の範囲を画定した。
 また,主要デバイスメーカーとHDDメーカーの取引の実態は,上記(1)イにおけるHDDメーカーとパソコンメーカー等の取引の実態と同様のものであることから,以下では,本件企業結合が主要デバイスメーカーとHDDメーカーとの間の世界レベルでの取引に与える影響を分析することとした。

第3 本件企業結合が競争に与える影響の検討

1 市場規模

 平成16年のHDDの出荷台数は,情報産業の堅調な伸びを受けて史上最高を記録し,世界全体では2億9580万台,国内分は2755万台であった。今後も,コンピュータシステムにおける主要装置の地位を維持しつつ,デジタル家電等のコンピュータ向け以外の需要の拡大も見込まれており,今後も需要は拡大すると予測されている。
 当事会社がともに製造販売している3.5インチHDDの状況をみると,平成16年の全世界における出荷実績が2億2120万台であり,ノートパソコン等の普及により2.5インチHDDに対する需要が拡大しているといわれつつも,依然としてHDD需要の過半を占めている。

2 水平型企業結合

(1) 市場シェア・HHI

ア 企業向けHDD
 企業向けHDDの市場における各メーカーの販売数量シェアは,下表のとおりである。
 本件企業結合により,全世界における当事会社の合算販売数量シェア・順位は60~65%・第1位となる。
 また,本件企業結合後のHHIは4,600~4,700,HHIの増加分は1,400~1,500である。

順位 会社名 シェア
1 シーゲイト 45~50%
2 A社 15~20%
3 マックストア 10~15%
4 B社 10~15%
5 C社 0~5%
(1) 当事会社合算 60~65%
  合計 100%

 (注) 平成17年度実績。
 (出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)

イ デスクトップパソコン等向けHDD
 デスクトップパソコン等向けHDDの市場における各メーカーの販売数量シェアは,下表のとおりである。
 本件企業結合により,全世界における当事会社の合算販売数量シェア・順位は50~55%・第1位となる。
 また,本件企業結合後のHHIは3,600~3,700,HHIの増加分は1,300~1,400である。

順位 会社名 シェア
1 シーゲイト 30~35%
2 A社 25~30%
3 マックストア 20~25%
4 B社 10~15%
5 C社 5~10%
6 D社 0~5%
(1) 当事会社合算 50~55%
  合計 100%

 (注) 平成17年度実績。
 (出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)

(2) 考慮要因の検討

ア 競争事業者の存在
 企業向けHDD及びデスクトップパソコン等向けHDDには,それぞれ有力な競争事業者が複数存在する。

イ 取引先変更の容易性
 HDDメーカーは,主要ユーザーである大手コンピュータメーカーが求める性能・品質を満たす製品を供給するべく技術の向上を図ってきており,ユーザーが取引先を変更することを妨げるような技術差はない。また,各HDDメーカーの製品間に品質差がなく,コンピュータとの接続規格であるインターフェースも標準化されており,大手コンピュータメーカーが複数購買を行っていること,四半期ごとに行われる交渉において調達比率の変更を行っていることにもみられるとおり,ユーザーは容易に取引先を変更することができる。

ウ 供給余力
 競合HDDメーカーにおいては,今後のHDDの需要増を見込み,各社とも生産能力の増強を予定している。また,HDDの需要増を見込んで,主要デバイスのメーカーも生産能力の増強を進めており,主要デバイスの不足によるHDDの生産の停滞が起こる可能性もない。

エ 需要者からの競争圧力
 大手コンピュータメーカー等は,大量のHDDを調達しているところ,複数のHDDメーカーから購買を行っており,定期的に行われる取引交渉において価格の見直し,調達比率の変更を行っている。このように,ユーザーは非常に強い価格交渉力を有している。
 なお,過去にHDDメーカーの統合等が生じた場合,特定のHDDメーカーへの調達依存度が突出することがないよう,ユーザーはその価格交渉力を背景に調達比率の平準化を行っており,本件結合後に,当事会社が必ずしも結合前の合算シェアをそのまま獲得できるとは限らないと考えられる。

オ 参入
 異業種からの新規参入は困難であると考えられるが,既存のHDDメーカーが,従来製造していた製品とは異なる用途向けのHDDを製造することは比較的容易である。企業向けHDDの場合,メーカー数は本件結合により4社となるが,企業向け以外のHDDを製造しているメーカーが当該分野に参入してくる可能性は高い。

カ 技術革新
 HDDメーカーは,ディスクの小型化,大容量化などの技術開発にしのぎを削っており,新技術を搭載した製品を市場に投入することが,シェアを変動させる要因となっている。HDDメーカー各社による新製品の投入により,HDDの実質的な製品寿命は物理的な製品寿命よりも短くなっている。
 また,HDDの販売価格の低下はシェア拡大につながりやすいため,HDDメーカーは,コスト削減に係る技術革新を行うことにより,HDDの販売価格の引下げに努めている。

キ まとめ
 世界市場における競争は上記のとおりであり,日本において価格が引き上げられたとしても,日本の需要者が海外の供給者からのHDDの購入に代替し得るために,日本における価格引上げは行えない状況が認められる。

3 垂直型企業結合

 シーゲイトは,主要デバイスのうちディスクと磁気ヘッドを内製しており,マックストアはディスクの一部を内製している。本件結合後,マックストアは,これら部品を専らシーゲイトから調達することとなる(注)。このため,本件結合により,主要デバイスメーカーは,マックストアというユーザーを失うこととなるおそれがあることから,主要デバイスメーカーによるディスク及び磁気ヘッドの販売に及ぼす影響について,検討を行った。

 (注) シーゲイトが製造する主要デバイスは,すべて自家消費されている。

(1) 市場シェア

 本件企業結合により,川下市場であるHDDの全世界における製造販売分野での当事会社の合算シェアは40~45%となる。
 また,本件企業結合後のHHIは2,500~2,600となる。

順位 会社名 シェア
1 シーゲイト 25~30%
2 A社 15~20%
3 B社 15~20%
4 マックストア 10~15%
5 C社 5~10%
6 D社 5~10%
7 E社 5~10%
  その他 0~5%
(1) 当事会社合算 40~45%
  合計 100%

 (注) 平成17年度実績。
 (出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)

(2) ディスクに係る取引の状況

 ディスクについては,従来からマックストアも一部内製を行っており,ディスクメーカーのマックストアへの依存度は高くない。また,マックストアに代わる販売先となり得るHDDメーカーは複数存在している。このため,本件結合後に,マックストアがシーゲイトからディスクを調達し,専門ディスクメーカーからの調達を大幅に減少させたとしても,ディスクメーカーが受ける影響は小さい。

(3) 磁気ヘッドに係る取引の状況

 磁気ヘッドについては,磁気ヘッドメーカーのマックストアへの取引依存度は低くないが,本件結合に伴い,HDDのユーザーが調達比率の平準化を行う結果,当事会社以外のHDDメーカーのシェアが拡大する可能性があり,このため,磁気ヘッドメーカーとしては,こうしたHDDメーカーへの供給の機会が拡大すると認められる。また,HDDの市場自体が拡大しており,磁気ヘッドを含む主要デバイスの需要量も拡大すると見込まれているところ,主要デバイスメーカーは,マックストアからの調達が減少することに伴う売上減をある程度補うことができる。

第4 独占禁止法上の評価

1 水平型企業結合

(1) 単独行動による競争の実質的制限についての検討

 結合前のシェアに基づく当事会社の合算シェアが高くなるとはいえ,各HDDメーカーの製品間に品質差はなく,ユーザーが取引先を変更することが妨げられない状況にあるところ,企業向けHDD,デスクトップパソコン等向けHDDのいずれについても有力な競争事業者が複数存在しており,また,各社とも生産能力の増強を行うなどして生産余力を有していること,主力ユーザーである大手コンピュータメーカーは,大量のHDDを調達しているところ,複数のメーカーからHDDを購買しており,調達比率を変更しつつ価格の見直しをHDDメーカーに求めるなど非常に強い価格交渉力を有していること,ユーザーは,特定のHDDメーカーからの調達依存度が高まることとなる場合には,調達比率の見直しを行っており,本件においても競合HDDメーカーへの調達先の変更が生じることが予想されていることから,当事会社の単独行為により,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

(2) 協調的行動による競争の実質的制限についての検討

 主力ユーザーである大手コンピュータメーカーは,複数のメーカーからHDDを購買するとともに,調達比率の変更を頻繁に行っており,価格の引下げがシェアの拡大につながりやすい状況にあって,競争事業者の行動が予測しにくいこと,先行技術を反映した製品の投入が競争力の強化に有益であり,技術革新が頻繁に生じているところ,製品のライフサイクルは短く,価格の引下げを招きやすい状況にあることから,当事会社と競争事業者の協調的行動により,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

2 垂直型企業結合

(1) ディスク

 ディスクについては,従来から両当事会社とも内製を行っており,ディスクメーカーのマックストアへの依存度は高くなく,また,マックストアに代わる販売先となり得るHDDメーカーは複数存在していることから,本件行為により,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

(2) 磁気ヘッド

 磁気ヘッドについては,磁気ヘッドメーカーのマックストアとの取引依存度は低くないが,本件企業結合に伴うHDDのユーザーによるHDDメーカーの調達先の切替えやHDDの市場自体の拡大に伴い,マックストア以外のHDDメーカーに対する磁気ヘッドの販売の機会も拡大することとなると考えられることから,本件行為により,一定の取引分野における競争を実質的に制限することはならないと判断した。

第5 結論

 以上の状況から,本件行為により,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。

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公表事例において参入について検討を行った例

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