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独占禁止法違反行為に対する差止請求制度についてのQ&A

独占禁止法違反行為に対する差止請求制度についてのQ&A

Q 差止請求をすると,同じ行為について公正取引委員会への申告はできなくなるのですか。

 A そのようなことはありません。同じ行為について裁判所に差止めを請求するとともに,公正取引委員会に対し,申告することもできます。

Q 消費者団体や事業者団体が差止請求訴訟を提起することはできますか。

 A 不公正な取引方法に係る独占禁止法違反行為によって,消費者団体や事業者団体が「その利益を侵害され,又は侵害されるおそれがある者」に該当し,これにより著しい損害を生じ,又は生ずるおそれがある場合であれば,差止請求をすることができます。ただし,これらの団体が,自らの被害の救済のためではなく,他人の被害を救済するために差止請求訴訟を提起すること(いわゆる団体訴訟)はできません。

Q どのような場合に「著しい損害」があったと認められるのですか。

 A 実際にどのような場合に「著しい損害」と認められるかは,個別のケースに応じて,裁判所が個々に判断することになります。

Q 差止めの内容として,どのようなことが命じられるのですか。

 A 侵害(違反)行為の取りやめが基本となりますが,例えば,再販売価格維持行為の場合,単に再販売価格維持行為の取りやめが命じられるだけでなく,指示した価格で販売していないという理由で販売店への出荷を停止することの取りやめが命じられることも考えられます。

Q 同じ行為に関して,公正取引委員会と裁判所の判断が異なるようなことはないのですか。

 A 各裁判所の間で,あるいは裁判所と公正取引委員会の間で独占禁止法違反行為についての違法性の判断が異なってしまっては,独占禁止法の解釈・運用について混乱が生じ,事業者の事業活動を過度に萎縮させるおそれがあります。
 このため,差止請求訴訟が提起されたときは,裁判所から公正取引委員会に対し,その事件に関する独占禁止法の適用等について意見を求めることができることになっているほか,公正取引委員会から裁判所にその事件に関する独占禁止法の適用等について意見を述べることができることになっています。これにより,独占禁止法に違反するかどうかの判断基準ができるだけ異なるものとならないことが期待されています。
 しかし,同一の行為であっても,例えば差止請求訴訟では,違法行為の存在を立証する十分な証拠を原告が提出できなかったために原告の請求が棄却されたものが,公正取引委員会の調査では,違反行為が認められて,排除措置が採られるというように,裁判所の判決と公正取引委員会の判断とが結果として異なる場合はあり得ます。

Q 差止請求に関して,仮処分命令を求めることはできますか。

 A 「著しい損害又は急迫の危険を避けるため」(民事保全法第23条第2項)必要がある場合には,仮処分命令を求めることができます。

Q 差止請求に係る提訴手数料はいくらになりますか。

 A 差止請求に係る提訴手数料は,基本的には差止めによって防止される損害額(訴訟の目的の価額)に応じて算定されることになると考えられます。

Q 差止請求制度が濫用される心配はありませんか。

 A 差止請求制度が,被害の救済のためではなく,競争業者の事業活動の妨害のために利用されることも考えられます。
このため,差止請求訴訟の提起が不正の目的によるものであることを被告が疎明して申し立てた場合には,裁判所が原告に相当の担保を立てることを命じることができる制度が設けられており,差止請求制度の濫用の防止が図られています。なお,当然のことながら,提訴が正当な目的による場合には,担保提供命令が出されることはありません。

Q 「担保」の額はどのように決まるのですか。

 A 担保の額は,被告が原告に対し,不当訴訟として損害賠償を請求した場合に認容される可能性のある損害賠償額を基準として,定められることになると考えられます。

Q 私的独占やカルテルについても,差止請求ができますか。

 A 差止請求ができるのは,独占禁止法違反行為のうち,不公正な取引方法に係るもののみです。ただし,私的独占については,その手段が不公正な取引方法に該当する行為であれば,独占禁止法第19条(不公正な取引方法の禁止)違反行為として,差止めを請求することができます。

Q 海外にも差止請求制度はありますか。

 A アメリカ,ドイツ,フランス等,多くの国々で,競争法違反行為に対する差止請求が認められています。

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