5 取引条件明確化のための活動

 事業者団体が,会員事業者と一般消費者との間で締結される取引契約書等に使用される用語について,一般消費者にとって分かりやすいものにするため,用語に関する基準を設定することは,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X協会(サービスAを提供する事業者の団体)

2 相談の要旨

(1) X協会は,一般消費者向けにサービスAを提供する事業者のほとんどが加盟する団体である。

(2) サービスAの一般消費者への提供に当たっては,サービスAを提供する事業者と一般消費者との間で取引契約書が締結されており,また,当該事業者はサービスAの内容を一般消費者に説明するために説明書,パンフレット等を作成している。
 この契約書等に使用される用語については,従来からの慣行で,業界特有の専門用語等が用いられてきたことから,一般消費者がサービスAの内容や契約内容を十分理解できていないということが問題となっている。
 そこで,X協会では,一般消費者の分かりやすさの向上及び正しい理解を促すことを目的として,会員事業者が契約書等に使用する用語についての自主基準を設定することを検討している。検討に当たっては,学識経験者,消費者代表等の有識者で構成される研究会を設け,これらの有識者の意見を自主基準に反映させている。

(3) X協会が検討している自主基準の内容は,X協会で専門的で分かりにくい用語を選び出し,これらの用語について,[1]原則として使用せず,X協会が提示する用語案で言い換えることとするもの,[2]原則として使用せず,会員事業者各社が丁寧な文章等で内容を説明することとするもの,[3]使用してよいが,使用に当たって会員事業者各社が補足説明,例示等をすることとするものに分類するとともに[1]の用語についての具体的な分かりやすい言換え用語案を提示するものである。
 X協会では,会員事業者各社のサービスAの内容の統一につながらないよう,会員事業者各社が同じ用語を用いていても,その意味合いが異なる用語については,言換え用語案は提示せず,会員事業者各社が文章等で内容を説明するようにしている。
 また,X協会は,この自主基準は,契約書等の分かりにくい用語を分かりやすい用語に改めるだけのもので,特定の事業者に対して差別的な内容のものではなく,遵守を強制するものでもないとしている。

このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 一般に,事業者団体が,会員事業者等の営業の種類,内容,方法等に関して,消費者の商品選択を容易にするため表示・広告すべき情報に係る自主的な基準を設定し,また,環境の保全や未成年者の保護等の社会公共的な目的に基づく必要性から自主規制等の活動を行うことは,独占禁止法上の問題を特段生じないものも多い。しかしながら,活動の内容,態様等によっては,多様な営業の種類,内容,方法等を需要者に提供する競争を阻害することとなる場合があり,この場合独占禁止法上問題となるおそれがある(独占禁止法第8条第1項第3号,第4号及び第5号)。
 また,自主規制等の利用・遵守については,会員事業者の任意の判断に委ねられるべきであって,事業者団体が自主規制等の利用・遵守を会員事業者に強制することは,一般的には独占禁止法上問題となるおそれがある(独占禁止法第8条第1項第4号)。

(2) 本件自主基準の設定については,

ア 一般消費者のサービスAについての正しい理解を促すことにつながるものである

イ 会員事業者各社のサービスAの内容の統一につながらないよう,会員事業者各社が同じ用語を用いていても,その意味合いが異なる用語については,言換え用語案を提示しないこととしており,会員事業者各社のサービスA自体の内容が制限されるものとは考えられない

ウ 特定の事業者に対して差別的な内容のものとは考えられない

エ 自主基準の遵守を強制するものではない

 ことから,会員事業者各社間の競争を阻害するおそれがあるとは認められず,独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 X協会が,会員事業者が取引契約書等に使用する用語についての自主基準を設定することは,独占禁止法上問題となるものではない。

ページトップへ