8 建設資材メーカーの相互的OEM供給

 建設資材メーカー2社が,運送コスト削減のため,遠隔地向け製品について相互にOEM供給を行うことについて,独占禁止法上問題となると回答した事例。

1 相談者

 A社(建設資材メーカー)

2 相談の要旨

(1) A社は,建設資材である甲製品の有力なメーカーである。
 甲製品メーカーは,A社のほか,B社及びC社の3社となっている。各社のシェアは,A社が50%弱,B社が40%強,C社が10%弱で,輸入品が数%程度ある。

(2) 甲製品については,長い不況で需要の低迷が続き,ピークに比べて需要が約3分の2となるなど採算が悪化していることから,A社は,製品価格の約1割を占める運送コストを削減するため,B社との間で,相互にOEM供給を行うことを検討している。
 この具体的内容としては,A社は関東地区に工場を有しており,B社は関西地区に工場を有していることから,A社の関西以西の顧客への販売相当量をB社へ,B社の関東以北の顧客への販売相当量をA社に,それぞれOEM供給を委託する。
 例えば,A社の九州の顧客に納入する場合,従来はA社の関東地区の工場から配送していたが,B社の関西地区の工場から配送することにより,運送コストを削減できる。

(3) OEM供給を受ける数量は,A社は自社販売数量の約30%,B社は自社販売数量の約40%である。A社,B社ともに,現在の工場の年間稼働率を考えれば,生産を受託できる生産余力があることから,相互にOEM供給を行うことが十分に可能である。また,甲製品の販売は,従来どおり独自に行い,互いに販売価格や取引先などには一切関与しない。
 なお,建設資材の性質上甲製品の販売価格のうち,製造コストが相当の部分を占める。
 以上のように,相互にOEM供給を行うことは,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

 競争関係にあるA社とB社が,相互にOEM供給を行おうとするものであることから,本件は,不当な取引制限の観点から検討する。

(1) 事業者が,他の事業者と共同して,製品の価格,数量等競争手段を相互に制限することにより,一定の取引分野における競争を実質的に制限する場合には,不当な取引制限に該当し,違法となる。[独占禁止法第3条(不当な取引制限)]

(2) 相談の場合において,A社とB社(以下「2社」という。)は,従来どおり独自に販売を行い,互いに販売価格や取引先などには一切関与しないとしているものの,
ア 2社が相互にOEM供給することにより,地域的にみれば,関西以西の顧客に販売される両社の製品は,ほとんどすべてB社の製造に係る製品,反対に関東以北はほとんどすべてA社の製造に係る製品となり,中部を除く地域において両社の製造コストが共通化され,また,甲製品の販売価格のうち製造コストが相当の部分を占めることから,2社の甲製品市場におけるシェアが約90%を占めることを踏まえると,2社の販売価格が同一水準になりやすいなど,販売分野での競争が減殺されるおそれが大きいこと
イ 相互にOEM供給を行うことを通じて,製造コストなど企業活動を行う上で重要な情報を知り得ることは,2社のシェアからすれば競争に与える影響が大きいと考えられること
から,2社が相互にOEM供給を行うことは,甲製品の製造販売分野における競争を実質的に制限し,独占禁止法上問題となると考えられる。

4 回答の要旨

 A社及びB社が,甲製品について相互に相談のOEM供給を行うことは,独占禁止法上問題となる。

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