39 返品等に関する取引先への改善要請 [団体ガイドライン8-1]

1 相談者

 ペットフード製造業者の団体(平成9年度)

2 相談の要旨

(1) ペットフードは,メーカーと大手商社及び大手商社と卸売業者との間で売買契約が締結され,最終的にペット専門店やホームセンターを始めとする量販店に販売される。大手商社は形式的には売買契約の当事者であるが,メーカーの与信機能を果たしているにすぎず,商品の販売や物流に関与するわけではない。

(2) ここ数年,各メーカーとも,良品(きずもの,ハンパもの以外)の量販店からの返品に悩まされている。契約上は買取りであるにもかかわらず,売れ残った商品が卸売業者を通じて返品され,最終的にメーカーが処分せざるを得ない状況にある。
 また,メーカーは,量販店から店員の派遣を依頼されることがある。こうした労務提供の依頼は,量販店の都合により土曜日曜に集中することから,メーカーの社員だけで対応することは難しく,メーカーの負担でアルバイトを雇う必要が生じる場合もある。

(3) そこで,団体として,「流通・取引慣行ガイドラインに例示のある納入業者の責に帰すべき理由のない返品,メーカーの商品の販売促進と関係のない労務提供の要請に対しては,メーカーがこれに応じることは困難であり,これらについて特段の配慮をお願いする」旨の文書を作成し,会員から取引先である量販店に対し,配布することを検討している。
 団体として,このような取引慣行に関する改善要請を行うことは,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 営業の種類,内容,方法等は,事業者間の競争の手段となり得るものであり,事業者団体がこれを制限することにより,競争を阻害することは,独占禁止法第8条第1項第4号等の規定に違反し,また,これにより,市場における競争を実質的に制限することとなる場合には,独占禁止法第8条第1項第1号の規定に違反する。
 事業者団体が,特定の販売方法を構成事業者が用いないことを決定することは,独占禁止法上問題となるおそれがある。[団体ガイドライン8-1(特定の販売方法の制限)]

(2)
ア 相談の文書は,返品・労務提供について,「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(平成3年7月)において,独占禁止法上問題となる場合として掲載されている事例を紹介し,このような行為の改善を訴えることを内容とするものであり,団体が会員の具体的な営業方法を制限するものではないことから,このような文書を作成し,配布することは,その利用が会員の任意の判断にゆだねられている限り,独占禁止法上問題ない。

イ しかし,返品及び労務提供は,独占禁止法に抵触するような場合を除けば,一般的には取引条件の一部として納入業者間の競争手段になり得るものであることから,団体として,会員が一律にこれを行わないことを決定することは,独占禁止法上問題となるおそれがある。

4 回答の要旨

 団体が,返品,労務提供に関する会員の状況を説明し,取引慣行の改善について取引先量販店の理解を求める文書を作成し,配布することは,その使用が会員の任意の判断にゆだねられている限り,独占禁止法上問題ない。

ページトップへ