62 ホームヘルパーの賃金の標準額の策定 [団体ガイドライン10-1]

1 相談者

 在宅介護サービス業者の団体(平成11年度)

2 相談の要旨

(1) 介護保険制度の導入に伴い,在宅介護サービスが有望な市場であると見込み,異業種からの参入が活発に行われると考えられ,また,訪問介護を行う者(以下「ホームヘルパー」という。)の数も増加すると予想される。しかし,ホームヘルパーが増加したとしても,質の悪い者が増加すれば,十分なサービスを提供することができず,業界の信用を損なうことになるので,業界としては能力水準の高いホームヘルパーを確保することにより,十分なサービスを提供する必要があるものと考えている。実際,ホームヘルパーでも実務能力がある人が求められており,3級のホームヘルパーよりも,より実務能力のある1級,2級のホームヘルパーの需要が高い。

(2) 優秀なホームヘルパーを確保していくためには,十分な給与が保障され,職業としての選択肢になることが必要である。
 なお,在宅介護サービスについては,料金の約7割を人件費が占めている。

(3) ホームヘルパーに対する給与保障に十分な水準を示すため,会員がホームヘルパーに支払う賃金について,団体で標準的な賃金を定めることは,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 事業者団体が,構成事業者の供給する商品又は役務に係る平均原価,統一的なマークアップ基準等又は所要資材等の標準的な数量,作業量等及び単価を示す方法により,原価計算又は積算の指導を行うことは,事業者の現在又は将来の事業活動に係る価格等重要な競争手段の具体的な内容について目安を与えるものであり,独占禁止法上問題となるおそれがある。
[団体ガイドライン10-1(統一的なマークアップ基準等を示す方法による原価計算指導等)]

(2) 一般に,団体において,会員事業者の労働者の賃金水準や標準的な賃金額を決定することは,労働の対価を決めるものであって,基本的には労働問題として取り扱われるものであり,独占禁止法上の問題ではないと考えられる。
 しかし,相談の場合においては,ホームヘルパーの賃金は,在宅介護サービスの料金の相当な部分を占めており,ホームヘルパーの賃金を決めることにより,ほぼ在宅介護サービスの料金が決まるような状況にあるため,ホームヘルパーの賃金を決めることによって,会員事業者が提供する在宅介護サービスの料金について目安を与えることとなるおそれがあり,独占禁止法上問題となる。

4 回答の要旨

 団体が,会員がホームヘルパーに支払う賃金についての標準額を定めることは,ホームヘルパーの賃金を決めることにより,ほぼ在宅介護サービスの料金が決まるような状況にあるため,独占禁止法上問題となる。

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