27 安全規格の制定及び認証 [団体ガイドライン7(2),7-4]

1 相談者

 ビニル建材メーカーの団体(平成10年度)

2 相談の要旨

(1) ビニル建装材は,主にメーカーから建装材問屋を通じて総合建設会社や工務店に販売されており,メーカー直販はない。建装材問屋ではおおむね2年ごとにビニル建装材のカタログ(見本帳)を作り,カタログを総合建設会社や工務店に配布してビニル建装材の販売を行っていることから,当該カタログに自社製品が掲載されるか否かがビニル建装材の売上げに大きな影響を与えている。

(2) ビニル建装材には,人体の健康・安全及び環境問題への影響に配慮した3種類の安全規格(A,B,C)がある。建装材問屋では安全規格をクリアしていない製品はカタログに掲載しないので,メーカーではいずれかの安全規格をクリアする製品を製造するとともに,その安全規格マークを取得している。現在,カタログには需要者のニーズの高い製品を製造することができるC規格によるものが最も多く掲載されている。

(3) しかし,C規格は,外国で策定された基準であって将来の変更予測が難しいこと,また,規格の使用料金が引き上げられる動きがあることから,当団体では,今般,C規格を基にした新たな安全規格としてD規格を制定することとした。また,団体として,D規格の自主認証を行い,その認定マークの利用を認めていくこととしている。
 ついては,団体として,D規格の使用を会員に限定し,非会員には使用させないこととしたいが,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 事業者団体が行う商品又は役務の規格等の自主規制に係る競争阻害性の有無の判断については,

[1] 競争手段を制限し需要者の利益を不当に害するものではないか,

[2] 事業者間で不当に差別的なものではないか,

[3] 社会公共的な目的等正当な目的に基づいて合理的に必要とされる範囲内のものか,

の要素を勘案しつつ,判断される。ただし,自主認証等を利用しなければ事業活動が困難な状況において,特定の事業者による自主認証等の利用を正当な理由なく制限することは,独占禁止法上問題となるおそれがある。
 [団体ガイドライン7-(2)(自主規制等,自主認証・認定等),7-4(自主認証・認定等の利用の制限)]

(2) 相談の場合においては,

[1] 需要者のニーズにこたえる商品性の高い製品を製造するためのものであること,

[2] 会員はD規格を自由に使用でき,他の規格を使用することもできること,

[3] D規格の制定が人体への安全性の確保と環境問題への対応を図ること

から,事業者間の競争手段を制限し,需要者の利益を害するものではなく,独占禁止法上問題ないものと考えられる。
 また,D規格の自主認証を行い,認定マークの使用を会員のみに限定することは,現時点では他にも規格があり,非会員の事業活動を困難にさせるものではないことから,独占禁止法上問題ないものと考えられる。
 しかし,今後,D規格が最も有力な規格となり,当該規格によらなければカタログに製品が掲載されず,総合建設会社等に商品情報の提供ができないような状況となった場合には,D規格の使用を会員のみに制限することは,非会員のビニル建装材の分野における事業活動を困難にさせるおそれがあり,独占禁止法上問題となるおそれがある。

4 回答の要旨

 団体が,ビニル建装材の安全性と環境問題への対応に配慮しつつ,需要者のニーズにこたえる商品性の高い製品を製造することを目的として,新しいD規格を制定し,その使用を会員に限定することは,独占禁止法上問題ない。

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