協同組合が,組合員に対して,生産資材を自組合から購入することを義務付けることは,独占禁止法上問題となると回答した事例

1 相談者

 A協同組合(農業協同組合)

2 相談の要旨

(1) A協同組合は,「安心」・「安全」な農産物の生産活動とトレーサビリティ(生産履歴等の情報を記録し,追跡できるようにすること)システムを確保するため,農作物の栽培に使用する農薬,肥料等の生産資材の管理を徹底すること,生育状況,病害虫の状況,肥料,農薬の配布状況等の生産過程を記帳すること等を内容とする運営規程及び実施要領を作成することとしている。

(2) A協同組合が,運営規程及び実施要領において,組合員が使用する種苗以外の生産資材は,(1)A協同組合が定めた生産基準に記載されているものから選択すること,(2)生産資材はA協同組合から購入することを基本とすることを定めることは,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 独占禁止法第22条各号の要件を備え,かつ法律の規定に基づいて設立された組合の行為については,独占禁止法の適用が除外される。ただし,不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合には,適用除外とはならない。[一定の事業者団体に対する独占禁止法上の適用除外制度]

(2) 市場における有力な事業者が,取引先事業者に対し自己の競争者と取引しないよう拘束する条件を付けて取引する行為又は取引先事業者に自己の競争者との取引を拒絶させる行為を行い,これによって競争者の取引の機会が減少し,他に代わり得る取引先を容易に見出すことができなくなるおそれがある場合には,独占禁止法上問題となる。[独占禁止法第19条(一般指定第11項 排他条件付取引)]

(3) 本件については,A協同組合は地元農家のほとんどが加入する組合であるところ,相談の範囲では,A協同組合が,組合員に対して,生産資材を自組合から購入することを義務付けることは,トレーサビリティシステムの確保のために必要不可欠なものとは考えられず,当該義務を課すことにより競争者の取引の機会を減少させることにつながるおそれがあることから,独占禁止法上問題となると考えられる。

4 回答の要旨

 A協同組合が,組合員に対して,生産資材を自組合から購入することを義務付けることは,独占禁止法上問題となる。

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