1 競合する金属製品メーカー間の相互OEM供給

 金属製品のメーカー2社が,製造設備の効率的な利用を図るため,製品の本体及び付属品を相互にOEM供給することについて,直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X社及びY社(共に金属製品製造メーカー)

2 相談の要旨

(1) X社及びY社は,製品Aの製造・販売を行うメーカーである。
 我が国における製品Aの生産数量でみたシェアは,X社が約25パーセント,Y社が約20パーセントとなっている。また,X社及びY社のほかに競争事業者として,シェア約35パーセントを有するZ社,シェア約20パーセントを有するW社が存在する。

(2) X社及びY社は,それぞれ,製品Aの本体及び付属品の製造・販売を行っており,原則として,本体及び付属品をセットとして,取引先メーカーとの間で価格交渉を行い,取り決めた価格で全国で取引を行っている。

(3) 製品Aの用途には2種類あり,用途αにおいては,取引先メーカーの製品の販売市場における競争が活発に行われており,取引先メーカーは強い価格交渉力を有している。また,用途βにおいては,有力な競合品として製品Bが存在する。ただし,製品Aは用途別に製造設備及び製造方法が異なるわけではなく,本件OEM供給の対象は用途別に区分していない。

(4) X社においては付属品の製造設備について,Y社においては本体の製造設備について,一部老朽化し,生産効率が劣ってきたことから,これらの製造設備の利用を停止し,X社はY社から付属品の一部についてOEM供給を受け,Y社はX社から本体の一部についてOEM供給を受けることを検討している。

(5) OEM供給を受ける数量は,あらかじめ定めるものではないが,利用を停止する製造設備の生産能力等からみて,X社は自社販売数量の約13パーセント,Y社は自社販売数量の約14パーセントと見込んでおり,相互にOEM供給を行うことが十分に可能な数量となっている。
 また,X社及びY社は,従来どおり独自に販売を行い,互いに販売価格や販売先等には一切関与しない。
 なお,製品Aの本体の製造コストは,その総原価の大部分を占める。

 このようなX社とY社の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 本件は,製品Aの製造販売市場において競争関係にある事業者が,契約により,相互にOEM供給を行おうとするものであることから,競争事業者間の相互拘束として検討する必要があり,このような取組によって,一定の取引分野における競争が実質的に制限される場合には,不当な取引制限(独占禁止法第3条)として問題となる。

(2) X社とY社のシェアの合計は約45パーセントであり,本件取組により,製品AのOEM供給分については,契約当事者間で生産数量等の情報が共有化され,また,製品Aの本体については,総原価の相当の部分を占める製造コストが共通化されることになるが,

ア X社及びY社は,従来どおり独自に販売を行い,互いに販売価格や販売先等には一切関与しないとしている

イ X社及びY社が相互にOEM供給する数量は,それぞれ自社の生産数量の約13パーセントないし約14パーセント程度にすぎず,製造コストの共通化により販売市場に与える影響は小さいと考えられる

ウ 製品Aの製造販売市場については,X社及びY社以外に有力な競争事業者が複数存在する

エ 用途αでみれば,取引先は強い価格交渉力を有すると認められ,用途βでみれば,有力な競合品が存在すると認められる

ことから,これらを前提とすれば,本件取組により,我が国における製品Aの製造販売市場における競争が実質的に制限される状況が生じるとは認められない。

4 回答の要旨

 X社及びY社が,製造設備の効率的な利用を図るため,製品Aについて,製品の本体及び付属品を相互にOEM供給することは,現在の状況から判断すれば,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。ただし,本件取組を契機として,両社間で競争回避的な行為がなされる場合には,独占禁止法上問題となるおそれがあるので慎重な対応が必要である。

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