化学製品の原料メーカーが,新規に開発した添加剤の販売拡大を図るため,競争業者に当該添加剤をOEM供給することは,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X社(化学製品の原料メーカー)

2 相談の要旨

(1) X社は,化学製品の原料となる添加剤Aの製造販売を行う事業者である。
 Y社は,同じく化学製品の原料となるが,添加剤Aとは別の性質を持つ添加剤Bの製造販売を行う事業者である。我が国における添加剤Bの販売市場におけるY社のシェアは,約60パーセントである。添加剤Bは品質により様々な種類があるところ,Y社は添加剤B1を製造販売している。
 また,添加剤Bの販売市場には,シェア約30パーセントを有し,高い研究開発力を持つZ社が存在している。Z社は,最近,添加剤B2という添加剤B1の有力な競争品を開発し,今後積極的に販売することが見込まれている。

(2) X社は,自社が製造する添加剤Aと,Y社が製造する添加剤B1を組み合わせ,添加剤B1の性質を保持しつつ,その混ざりにくさを改善した添加剤B3を開発し,販売を開始した。
 しかし,X社は,添加剤Bの販売市場において有力な販路を有していないこと等から,X社の添加剤B3の売上げは伸び悩んでいる。
 そこで,X社は,添加剤B3の知名度を高め,少しでも添加剤B3の売上げを増やすこと,ユーザーからX社への添加剤B3の直接の引き合いを増やすこと等を目的として,添加剤Bの販売市場において競争関係にあるY社に添加剤B3を供給し,Y社が自社のブランドで販売するというOEM供給を行うことを検討している。
 なお,Y社は,添加剤B3であればこれまでとは違った切り口でユーザーに売り込むことができるとして,添加剤B3の販売に前向きである。

(3) Y社がOEM供給を受ける数量は,あらかじめ定めるものではなく,X社はY社が供給を希望する都度,希望数量を供給する。また,X社及びY社は,互いに添加剤B1及び添加剤B3の販売価格や販売先等には一切関与せず,独自に販売を行うこととしている。

(4) X社を含む添加剤Bメーカーがユーザーに添加剤Bを販売する際の価格に占める製造原価の割合は約30パーセントであり,X社は,Y社の添加剤B3の販売のインセンティブを高め,ひいては自社ブランドでの売上げを伸ばすため,Y社に対して製造原価に近い価格でOEM供給することを予定している。

 このようなX社の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 本件は,X社が,添加剤Bの販売市場において競争関係にあるY社に対して添加剤B3をOEM供給するものであり,このような取組によって,一定の取引分野における競争が実質的に制限される場合には,不当な取引制限(独占禁止法第3条)として問題となる。

(2) 本件は,X社が,添加剤Bの販売市場において約60パーセントのシェアを有するY社にOEM供給するものであるが

ア X社とY社は,互いに添加剤B1及び添加剤B3の販売価格や販売先等には一切関与せず,それぞれ独自に販売を行うとしていること

イ X社はY社に対して,添加剤B3を製造原価に近い価格でOEM供給するとしており,かつ,添加剤B3の原価率は約30パーセントであるため,2社間には価格競争の余地があること

ウ 添加剤Bの販売市場には,高い研究開発力を持つZ社が存在し,かつ,添加剤B3という新製品が市場に本格的に投入されることで,今後とも品質及び価格の両面で活発な競争が行われていくと考えられること
から,本件OEM供給は,我が国の添加剤Bの販売市場における競争を実質的に制限するものではない。
 なお,本件OEM供給によって添加剤B3の知名度が向上すれば,添加剤Bの販売市場において,X社の自社ブランドでの添加剤B3の販売が伸びるなどX社の競争力が増し,添加剤Bに係る競争が活発になることが期待される。

4 回答の要旨

 X社が,新規に開発した添加剤の販売拡大を図るため,Y社に当該添加剤をOEM供給することは,独占禁止法上問題となるものではない。

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