10 事業者団体による共同物流スキームの構築

 国際航空貨物利用運送事業者等を会員とする団体が,A空港・B空港間の共同物流事業を行うことは,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X協議会(国内の国際航空貨物利用運送事業者等〔以下「フォワーダー」という。〕を会員とする団体)

2 相談の要旨

(1) X協議会は,国内のフォワーダーを会員とする団体である。会員の国際航空貨物取扱量の合計は,国内のフォワーダーの総国際航空貨物取扱量の約80パーセントを占めている。

(2) 今般,A空港が新たに国際航空貨物を取り扱うことになったため,A空港の近隣に所在し以前から国際航空貨物を取り扱っていたB空港とA空港との間に国際航空貨物の陸上輸送が多く発生することが見込まれる。そこで,X協議会は,物流効率化等を目的として,A空港・B空港間で国際航空貨物の陸上輸送の共同物流事業を行うことを検討している。
具体的には,X協議会が入札により運送業者を数社選定し,当該運送業者に,A空港・B空港間のトラックによる定期便を運行させ,当該定期便で国際航空貨物を陸上輸送しようというものである。
この共同物流事業の利用は任意であり,X協議会の会員がA空港・B空港間で独自の輸送を行うことは何ら妨げられない。また,X協議会の会員だけでなく,非会員も当該共同物流事業を利用することができる。

(3) 本件共同物流事業を利用する場合には,X協議会に対し,会員は1キログラム当たりα円,非会員は1キログラム当たりβ円(α<β)の利用料金を支払う。このように会員と非会員の利用料金に差を設けるのは,会員のみが負担している本件共同物流事業の開始のための初期費用を,非会員にも合理的な範囲内で負担してもらおうというものである。
なお,フォワーダーが国際航空貨物の荷主から収受する輸送に係る運賃の大部分は,航空機による輸送費用で占められており,本件共同物流事業の利用料が当該運賃に占める割合はごく僅かである。

 このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 事業者団体による共同事業が独占禁止法上問題となるかどうかについては,共同事業の内容,共同事業参加事業者の市場シェアの合計等及び共同事業の態様(共同事業への参加・利用の強制,事業者間の差別的取扱い)の各事項を総合的に勘案して判断される(事業者団体ガイドライン第2-11-(2)〔共同事業の考え方〕)。

(2) 本件取組は,次のことから,合理化効果が期待できるものであり,また,国際航空貨物運送の受託に係るフォワーダー間の競争に悪影響を与えるものでもなく,独占禁止法上問題となるものではない。
ア A空港・B空港間における相当量の国際航空貨物をまとめて輸送することで,一定の費用削減が見込まれる。
イ 国際航空貨物の荷主から収受する運賃のうち,本件共同物流事業の利用者間で共通化されるのはごく一部分であるため,本件取組は各社が競争するインセンティブにほとんど影響を与えるものではない。
ウ 会員,非会員共に,A空港・B空港間で独自の輸送を行うことは何ら妨げられない。
エ 利用料金に関する会員・非会員間の差は,会員が別途負担している初期費用を,非会員にも合理的な範囲で負担をしてもらうために生じるものである。

4 回答の要旨

 X協議会が,本件共同物流事業を行うことは,独占禁止法上問題となるものではない。

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