11 事業者団体による高額なポイント付与の自粛の要請

 小売業者を会員とする団体が,会員に対し,特定の商品の販売の際に会員が顧客に付与するポイントの点数を,団体が示す付与率を用いて計算されるもの以下とするよう要請することは,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例

1 相談者

 X協会(小売業者を会員とする団体)

2 相談の要旨

(1) X協会は,商品Aのほか日用品等を含む多様な商品を販売する小売業者を会員とする団体である。

(2) X協会の多くの会員は,顧客に対してポイントカードを発行し,ポイントカードを提示して商品を購入する顧客に対し,ポイントを付与するサービスを提供している。このポイントは,当該商品の販売金額に個々の会員が定める一定率(以下「付与率」という。)を掛けて算出されるものであり,顧客は,このポイントを次回の買物の支払に充てることができる。

(3) 会員が取り扱っている商品のうち,商品Aについては,小売業者は,販売に際して法令によって定められた対価を顧客から受領することが義務付けられている。ただし,商品Aの販売金額にポイントを付与することは法令上規制されていない。そのため,ポイントカードを発行している会員は,商品Aを購入する顧客からポイントカードが提示されれば,ポイントを付与し,そのポイントを商品Aの支払に充てるサービスは提供していないが,商品A以外の支払には充てられるようにしている。

(4) Y協会は,主に商品Aのみを取り扱っている小売業者を会員とする団体である。Y協会のほとんどの会員は,商品Aの販売の際,顧客にポイントを付与するサービスを提供していない。

(5) 最近,X協会の会員の中に高い付与率を設定する者が現れてきたことから,X協会は,Y協会から,X協会の会員がそのようなポイントサービスを提供すると,主に商品Aのみを取り扱っているY協会の会員から顧客が離れてしまうといった内容の強い抗議を受けた。

(6) そこで,X協会は,その会員に対し,ポイントの付与率を示し,会員が商品Aの販売の際に付与するポイントの点数を,当該付与率を用いて計算されるもの以下にするよう要請することを検討している。

 このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) X協会の会員は,価格,品質,品揃え等様々な側面で競争を行っている。顧客にポイントを付与するか,付与率をどの程度に設定するか,どのような方法で顧客にポイントを使用してもらうかということも,X協会の会員にとって重要な競争手段であると考えられる。

(2) X協会が,商品Aの販売金額にポイントを付与することは法令上規制されていないにもかかわらず,その会員に対し,会員が商品Aの販売の際に顧客に付与するポイントの点数を,X協会が示す付与率を用いて計算されるもの以下にするよう要請することは,会員が,自己の裁量で自由に決定することができる重要な競争手段を不当に制限し,独占禁止法上問題となるおそれがある(独占禁止法第8条第4号)。

4 回答の要旨

 X協会が,会員に対し,商品Aの販売の際に会員が顧客に付与するポイントの点数を,X協会が示す付与率を用いて計算されるもの以下にするよう要請することは,独占禁止法上問題となるおそれがある。

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