2 健康食品メーカーによる販売地域の制限

 市場における有力な健康食品メーカーが,販売代理店に対し,一定の販売地域を割り当て,地域外での販売を禁止するという厳格な地域制限を行うことについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X社(健康食品メーカー)

2 相談の要旨

(1)X社は,健康食品Aのメーカーであり,我が国の健康食品Aの製造販売分野におけるシェアは約20パーセント(第2位)である。
 また,X社の競争事業者として,シェア約25パーセント(第1位)を有するB社,シェア約10パーセント(第3位)を有するC社の外に複数のメーカーが存在する。

(2)健康食品Aは,各メーカーの製品とも品質差が小さくブランドごとの製品差別化が進んでおらず,ブランド間での価格競争が活発である。

(3)X社は,販売代理店を通じて小売業者に健康食品Aを販売している。
 X社は,販売代理店との取引契約において販売地域に関する規定を設けていないことから,同じ都道府県内に複数の販売代理店がある地域もあれば,一店舗も販売代理店がない地域もあり,効率的な販売を行えていない。

(4)X社は,健康食品Aの効率的な営業拠点を構築するため,販売代理店ごとに担当販売地域を指定し,指定した地域外での販売を禁止する規定を新たに取引契約に設けることを検討している。
 なお,X社は,販売代理店による小売業者への健康食品Aの販売価格について制限を課していない。

  • 本件の概要図

 このようなX社の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1)市場における有力なメーカー(注1)が流通業者に対し一定の地域を割り当て地域外での販売を制限する,いわゆる「厳格な地域制限」を行い,これによって当該商品の価格が維持されるおそれがある場合(注2)には,拘束条件付取引(一般指定第12項)に該当し,不公正な取引方法として独占禁止法上問題となる(同法第19条)(流通取引慣行ガイドライン第2部第2-3〔流通業者の販売地域に関する制限〕)。

  (注1)「市場における有力なメーカー」と認められるかどうかについては,当該市場におけるシェアが10パーセント以上,又はその順位が上位3位以内であることが一応の目安となる。
      ただし,この目安を超えたのみで,その事業者の行為が違法とされるものではなく,当該行為によって「当該商品の価格が維持されるおそれがある場合」に違法となる。
      市場におけるシェアが10パーセント未満であり,かつ,その順位が上位4位以下である下位事業者や新規参入者が厳格な地域制限を行う場合には,通常,当該商品の価格が維持されるおそれはなく,違法とはならない。

  (注2)「当該商品の価格が維持されるおそれがある場合」に当たるかどうかは,以下の事項を総合的に考慮して判断することになる。
    [1] 対象商品をめぐるブランド間競争の状況(市場集中度,商品特性,製品差別化の程度,流通経路,新規参入の難易性等)
    [2] 対象商品のブランド内競争の状況(価格のバラツキの状況,当該商品を取り扱っている流通業者の業態等)
    [3] 制限の対象となる流通業者の数及び市場における地位
    [4] 当該制限が流通業者の事業活動に及ぼす影響(制限の程度・態様等)
      例えば,市場が寡占的であったり,ブランドごとの製品差別化が進んでいてブランド間競争が十分に機能しにくい状況の下で,市場における有力なメーカーによって厳格な地域制限が行われると,当該ブランドの商品をめぐる価格競争が阻害され,当該商品の価格が維持されるおそれが生じることとなる。

(2)本件は,X社が,販売代理店に対し,一定の販売地域を割り当て,地域外での販売を禁止するという厳格な地域制限を行うものであり,当該販売代理店の割り当てられた地域では,当該販売代理店はX社の健康食品Aのみを販売することとなるが,健康食品Aの製造販売分野においては,B社,C社等の複数の有力な競争事業者が存在しており,ブランドごとの製品差別化が進んでおらず,また,ブランド間の価格競争が活発であることから,X社の健康食品Aの販売価格が維持されるおそれはなく,独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 X社が,販売代理店に対し,一定の販売地域を割り当て,地域外での販売を禁止するという厳格な地域制限を行うことは,独占禁止法上問題となるものではない。

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