4 福祉用具メーカーによる店舗販売業者のみに対するリベートの供与

 市場における有力な福祉用具メーカーが,福祉用具を販売するに当たって,インターネット販売業者を対象とせずに,店舗販売業者のみを対象とするリベートを新たに設けることについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X社(福祉用具メーカー)

2 相談の要旨

(1)X社は,福祉用具Aのメーカーであり,我が国の福祉用具Aの販売分野におけるシェアは約30パーセント(第1位)である。
 また,福祉用具Aのメーカーは,X社以外に複数存在している。

(2)X社は,福祉用具Aを,小売業者を通じて一般消費者に販売している。
 福祉用具Aの販売方法について特段の法規制はない。小売業者には,[1]店舗での販売及び[2]インターネットを利用した販売の2つの販売形態がある(以下,店舗での販売を行う小売業者を「店舗販売業者」,インターネットを利用した販売を行う小売業者を「インターネット販売業者」という。)。
 福祉用具Aの販売価格は,店舗販売業者よりインターネット販売業者の方が1割程度安い。

(3)福祉用具Aは,身体に装着して使用するものであり,効能の違いにより複数の商品が販売されている。また,同じ商品であっても,一般消費者の個体差や症状に応じて多数の種類がある。

(4)X社の福祉用具Aの売上高は年々減少している。その原因として,店舗販売において,[1]販売員が商品の効能に関する適切な説明をできていないこと,[2]種類ごとの在庫が十分に確保されておらず,販売機会の喪失が大きいことが考えられた。

(5)X社は,今後,福祉用具Aを販売するに当たり,店舗販売業者に対し,[1]来店した一般消費者に直接適切な商品説明を行うための販売員教育を行うこと,[2]種類ごとに一定の在庫を常時確保することの両方の条件を満たす場合に,当該販売方法を支援するリベートを供与することを検討している。
 当該リベートは,X社の福祉用具Aの販売量によって変動・増加しない固定額で供与される。

(6)X社から小売業者に対する卸売価格は,店舗販売業者とインターネット販売業者とで,同等である。

  • 本件の概要図

 このようなX社の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1)メーカーの流通業者に対するリベートの供与の実態をみると,仕切価格の修正としての性格を有するもの,販売促進を目的としたもの等様々である。このように,リベートは,様々な目的のために支払われ,また,価格の一要素として市場の実態に即した価格形成を促進するという側面も有することから,リベートの供与自体が直ちに独占禁止法上問題となるものではない。
 しかし,流通業者がいくらで販売するか,競争品を取り扱っているかどうか等によってリベートを差別的に供与する行為それ自体が,流通業者の事業活動を制限する場合には,取引条件等の差別取扱い(一般指定第4項)に該当し,不公正な取引方法として独占禁止法上違法となる(同法第19条,流通・取引慣行ガイドライン第2部第3〔リベートの供与〕)。

(2)本件は,X社が,店舗販売業者を対象に,適切な商品説明を行うための販売員教育を行うこと及び種類ごとに一定の在庫を常時確保することを条件としてリベートを供与するものであり,当該販売方法を採らないことにより安値販売を行っているインターネット販売業者についてはリベートを受けることができないが,当該リベートは,店舗販売に要する販売コストを支援するためのものであり,X社はインターネット販売業者に対する卸売価格を引き上げるものではなく,その事業活動を制限するものではないことから,独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 X社が,福祉用具Aを販売するに当たって,インターネット販売業者を対象とせずに,店舗販売業者のみを対象とするリベートを新たに設けることは,独占禁止法上問題となるものではない。

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