6 不動産情報サイト運営業者による不当表示を排除する取組

 我が国における主要な不動産情報サイト運営業者5社が,不当表示の抑止及び一般消費者の被害拡大を防止するため,不動産情報サイトに関して,[1]不動産業者が当該サイトを利用するルール及びルール違反に対する処分基準を統一すること,[2]ルールに違反した不動産物件及び不動産業者の情報を共有することについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 不動産情報サイトをそれぞれ運営する事業者5社(以下「5社」という。)

2 相談の要旨

(1)5社は,それぞれ,インターネット上に不動産情報を検索できるサイトを設けて,不動産業者から対価を得て不動産物件の情報を掲載し,一般消費者に無料で情報を提供する事業者である。
 また,5社が運営する不動産情報サイトは,我が国における主要な不動産情報サイトである。
      
(2)5社の不動産情報サイトには,不動産物件ごとに,賃料,面積,間取り,築年数,設備,駅までの所要時間等の項目に関する情報が掲載されているところ,これらの情報は不動産業者が入力している。
 一般消費者は,不動産情報サイトにおいて,項目ごとに希望条件を選択して物件を検索し,物件の問い合わせ先として表示されている不動産業者を通じて,物件の状況確認や見学をしてから,条件が合えば当該不動産業者と賃貸契約している。

(3)不動産業者の中には,実在しない条件の良い物件を表示する「おとり広告」等の不当表示を行い,一般消費者から連絡があった場合に,他の物件を勧める悪質な不動産業者が存在している。
 このような不動産のおとり広告等の不当表示は,不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号。以下「景品表示法」という。)及び同法に基づいて認定された不動産の表示に関する公正競争規約(以下「不動産公正競争規約」という。)で禁止されているが,近年,インターネットの普及により,不動産情報サイトの利用者が増加している状況において,一層その被害が拡大している。

(4)現在,5社は,不当表示を防止するため,それぞれ,不動産情報サイトを利用する不動産業者の義務や禁止行為等のルール(以下「利用ルール」という。)を設けた上で,不動産業者が不当表示を行った場合の処分基準を定め,それぞれが独自に調査を行った結果,不当表示が判明した場合に不動産業者に是正を求めたり,また,ルール違反を繰り返す不動産業者に対しては掲載停止などの処分を講じている。
 しかしながら,5社の利用ルール及び処分基準は5社それぞれに異なった内容であり,また,不当表示が判明した不動産物件及び不動産業者に関する情報が5社間で共有されていないことから,1社が不当表示を是正させたとしても,他の不動産情報サイトに乗り換えて,同じ不当表示が繰り返されており,効果的に不当表示を排除することができておらず,一般消費者への被害が拡大している。

(5)5社は,不動産情報サイト上における不当表示を効果的に排除するため,次の取組を行うことを計画している。
  ア 5社の利用ルールを景品表示法及び不動産公正競争規約の規定・運用に沿った内容とし,不当表示に対する処分基準を統一する。これにより,不当表示を繰り返す不動産業者に対し,5社は一定期間の利用停止や取引停止を統一的に行うこととなる。
  イ 不当表示が判明した場合,5社間で当該不当表示に係る不動産物件及び不動産業者の情報を共有する。
 なお,5社は,互いの不動産情報サイトの料金やサービス内容等に一切関与しない。

  • 本件の概要図

 このような5社の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1)事業者が,契約,協定その他何らの名義をもってするかを問わず,他の事業者と共同して対価を決定し,維持し,若しくは引き上げ,又は数量,技術,製品,設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し,又は遂行することにより,公共の利益に反して,一定の取引分野における競争を実質的に制限することは,不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)として問題となる(同法第3条)。
 また,事業者が,正当な理由がないのに,競争者と共同して,ある事業者に対し,供給を拒絶し,又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限することは,共同の取引拒絶(独占禁止法第2条第9項第1号)として問題となる(同法第19条)。

(2)本件において,5社が,利用ルールを景品表示法及び不動産公正競争規約の規定・運用に沿った内容とし,不当表示に対する処分基準を統一することは,不動産業者による不当表示を抑止するために行うものであって,5社間で料金,サービスの内容等の競争手段を制限するものではないことから,独占禁止法上問題となるものではない。
 また,5社が,不当表示が判明した場合に,当該不当表示に係る不動産物件及び不動産業者に係る情報を共有することは,違法行為による一般消費者への被害拡大を防止するために行われるものであって,競争を阻害するものではないことから,これにより,各社が不当表示を理由として当該不動産業者に対し,取引の停止等を行ったとしても,共同の取引拒絶として独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 5社が,不当表示の抑止及び一般消費者の被害拡大を防止するため,不動産情報サイトに関して,[1]不動産業者が当該サイトを利用するルール及びルール違反に対する処分基準を統一すること,[2]ルールに違反した不動産物件及び不動産業者の情報を共有することは,独占禁止法上問題となるものではない。

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