7 文具メーカーによる事務機器用の消耗品の認識設定

 市場における有力な文具メーカーが,新たな事務機器を開発するに当たって,同機器に使用する消耗品の材質を自社の商標(マーク)により認識する仕組みを用いることについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X社(文具メーカー)

2 相談の要旨

(1)X社は,事務機器Aのメーカーである。我が国の事務機器Aの販売分野におけるX社のシェアは約35パーセント(第1位)である。

(2)事務機器Aは消耗品を搭載して使用するものである。

(3)事務機器Aは,複数のメーカーが製造しているが,メーカーによって消耗品の形状等が異なることから,消耗品に互換性はない。
 また,消耗品の製造には特許等の技術的制約はないものの,小売価格が安価で利益幅が小さいことから,従来から,消耗品を専門に製造する事業者(以下「独立系事業者」という。)は存在しない。

(4)X社は,事務機器Aの発売以来,自社の消耗品の表面に商標(マーク)を付している。
 X社は,消耗品について,新たな材質による商品化を複数進めているところ,材質ごとに異なるマークで商標登録する予定である。

(5)X社は,新たな材質での消耗品の商品化に合わせ,現行の材質に加え,新たな材質の消耗品にも一台で対応できる事務機器A(以下「新型機」という。)を開発中である。
 新型機には,ユーザーが使用する消耗品の材質によってそれぞれ別個の動作が必要になるため,消耗品の材質に応じた動作変更機能が必要となる。

(6)X社は,新型機に,消耗品の材質を自動的に判別する機能を持たせるため,消耗品に付したマークの読み取りにより材質を認識する仕組みを検討している。
 ただし,消耗品表面の汚れ等により,事務機器Aがマークを認識しない場合もあり得ることから,使用する消耗品の材質について,ユーザーによる簡易な手動設定によっても認識できるようにすることを検討しているため,材質を自動的に認識するか,手動設定で認識するかの違いが,動作変更機能自体に何ら影響を与えるものではない。

  • 本件の概要図

 このようなX社の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1)事業者が,国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について,その取引を不当に妨害する場合には,競争者に対する取引妨害(一般指定第14項)に該当し,不公正な取引方法として独占禁止法上問題となる(同法第19条)。

(2)本件は,ユーザーが使用する消耗品の材質に応じた動作変更が必要となるX社の新型機について,消耗品の材質を自動的に認識させる機能を持たせるため,消耗品に付している自社の商標の読み取りという方法を用いるものである。
 今後,独立系事業者が参入してきた場合,独立系事業者は当該商標を使用できないが,消耗品の材質の認識はユーザーによる簡易な手動設定の方法によっても可能になっており,認識方法の違いが,新型機の使用に必要な動作変更機能自体に直接影響を与えるものではないことから,独立系事業者とユーザーとの取引を不当に妨害するとはいえず,独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 X社が,新型機器を開発するに当たって,同機器に使用する消耗品の材質を自社の商標(マーク)により認識する仕組みを用いることは,独占禁止法上問題となるものではない。

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