11 事業者団体による小売業者の団体に対する特売の自粛要請等

 食料品加工業者を会員とする団体が,不作により原材料の市況価格が高騰した場合に,小売業者による当該原材料を加工した食料品の特売を自粛するルールの徹底を小売業者の団体に要請することについて,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例

1 相談者

 X協会(食料品加工業者を会員とする団体)

2 相談の要旨

(1)X協会は,原材料αを加工した食料品Aをスーパーマーケット等の小売業者(以下「小売業者」という。)に販売する事業者を会員とする団体である。
   
(2)原材料αは,天候や自然災害によって収穫の影響を受けやすく,収穫状況によって,市況価格が大きく変動するものである。

(3)会員は,取引先である小売業者との間で,食料品Aについて,一定期間ごとに,事前に一定の数量及び価格で取引する契約を締結している(このような契約により行う取引を以下「契約取引」という。)。
 契約取引は,会員にとって,豊作により原材料αの市況価格が下落した場合に,小売業者が事前に契約した価格で一定の数量を購入してくれるというメリットがある一方,不作により原材料αの市況価格が高騰した場合には,小売業者から発注される量を事前に契約した価格で供給しなければならないというデメリットもある。
   
(4)小売業者は,原材料αと食料品Aの両方を販売しているところ,不作により原材料αの市況価格が高騰した場合に,食料品Aの小売価格を引き上げることなく,特売と称して原材料αと比べて廉価で販売することが多い。
 一方,会員は,契約取引に基づき,高騰した価格で購入した原材料αを食料品Aに加工し,小売業者に契約した価格で食料品Aを販売しなければならないことから,原材料αが一定の市況価格を超えた場合,食料品Aの販売価格よりも原材料αの仕入価格の方が高くなり,売れば売るほど赤字となって,経営状況が悪化する。

(5)このため,X協会は,天候不順や自然災害による不作の結果,原材料αの市況価格が高騰し,X協会が自ら定めた一定の市況価格を超えた場合に,食料品Aの特売を自粛するルールの徹底を小売業者の団体に要請し,これにより,消費者の食料品Aの需要量を減少させることを検討している。

  • 本件の概要図

 このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1)事業者団体が,構成事業者が供給し,又は供給を受ける商品又は役務の数量を制限し,これにより市場における競争を実質的に制限することは,独占禁止法第8条第1号の規定に違反する。また,市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても,原則として独占禁止法第8条第4号の規定に違反する(事業者団体ガイドライン第2―2―1〔数量の制限〕)。

(2)本件は,X協会が,原材料αの高騰時における会員の経営状況の悪化を防ぐために,X協会が定めた一定の市況価格を超えた場合に,小売業者による食料品Aの特売を自粛するルールの徹底を小売業者の団体に要請するものであるところ,これにより,食料品Aの需要量を減少させて,小売業者による食料品Aの発注数量を減少させることにより会員の供給数量を制限するものであることから,独占禁止法上問題となるおそれがある。

4 回答の要旨

 X協会が,不作により原材料αの市況価格が高騰した場合に,小売業者による食料品Aの特売を自粛するルールの徹底を小売業者の団体に要請することは,独占禁止法上問題となるおそれがある。

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