12 事業者団体による火気器具の消耗品の使用期限の設定

 火気器具メーカー等を会員とする団体が,火気器具による事故を防ぐために,火気器具に用いる消耗品の使用期限を設定し,会員に対し,消耗品の使用期限を表示するよう要請することについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X協会(火気器具メーカー及び火気器具Aに用いる消耗品メーカーを会員とする団体)

2 相談の要旨

(1)X協会は,火気器具Aのメーカー及び火気器具Aに用いる消耗品(以下「消耗品A」という。)のメーカーを会員とする団体である。
 我が国における火気器具A及び消耗品Aの製造販売分野におけるX協会の会員のシェアはそれぞれ100パーセントである。
   
(2)火気器具Aのメーカーは,火気器具A及び消耗品Aを製造販売している。
 なお,火気器具A及び消耗品Aは,JIS規格によって細かな構造まで定められていることから,いずれのメーカーであっても消耗品Aの形状が同じであり,品質にも差がなく互換性がある。

(3)消耗品Aは未使用の状態であっても長期間経過すると劣化して使用できなくなるが,現状,いずれの火気器具Aのメーカーも消耗品Aの使用期限を設けていない。

(4)一般消費者は防災道具の一つとして火気器具A及び消耗品Aを備蓄することが多いところ,近年,長期間経過した消耗品Aを使用することによる火気器具Aの事故が増加している。

(5)X協会は,消耗品Aの経年劣化による火気器具Aの事故を防ぐため,今後,第三者の研究機関による消耗品Aの耐久年数の試験を実施し,会員から意見を聴取した上で,消耗品Aの使用期限を設定し,会員に対し,消耗品Aに使用期限を表示することを要請することを検討している。

  • 本件の概要図

 このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1)事業者団体が,環境の保全や安全の確保等の社会公共的な目的に基づく必要性から品質に係る自主規制等を行う場合がある。このような活動については,独占禁止法上の問題を特段生じないものも多いが,一方,活動の内容,態様等によっては,多様な商品又は役務の開発・供給等に係る競争を阻害することとなる場合もあり,独占禁止法第8条第3号,第4号又は第5号の規定に違反するかどうかが問題となる。
 このような活動に係る競争阻害性の有無については,[1]競争手段を制限し需要者の利益を不当に害するものではないか,及び[2]事業者間で不当に差別的なものではないかの判断基準に照らし,[3]社会公共的な目的等正当な目的に基づいて合理的に必要とされる範囲内のものかの要素を勘案しつつ,判断される。
 なお,以上のような判断基準に照らし自主規制等が競争を阻害することがないようにするとの観点から,自主規制等の活動を行おうとするに際しては,事業者団体において,関係する構成事業者からの意見聴取の十分な機会が設定されるべきであるとともに,必要に応じ,当該商品又は役務の需要者や知見のある第三者等との間で意見交換や意見聴取が行われることが望ましい。
 また,自主規制等の利用・遵守については,構成事業者の任意の判断に委ねられるべきであって,事業者団体が自主規制等の利用・遵守を構成事業者に強制することは,一般的には独占禁止法上問題となるおそれがある(事業者団体ガイドライン第2-7(2)〔自主規制等,自主認証・認定等〕)。

(2)本件において,X協会が,近年増加している消耗品Aの経年劣化による火気器具Aの事故を防ぐために消耗品Aの使用期限を設定することは,一般消費者の安全を確保するために合理的に必要とされる範囲内のものであって,会員に遵守を強制しない限り,独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 X協会が,火気器具Aによる事故を防ぐために,消耗品Aの使用期限を設定し,会員に対し,消耗品Aの使用期限を表示するよう要請することは,独占禁止法上問題となるものではない。

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