11 事業者団体による宿泊料金の過度な値上げ抑制の要請

 宿泊業者を会員とする団体が,会員に対して,我が国で開催される国際的な大規模行事の開催期間中に会員が設定する宿泊料金に関し,海外で開催された過去の当該行事において宿泊料金が高騰した事例を示し,過度な値上げの抑制を要請することについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X協会(宿泊業者を会員とする団体)

2 相談の要旨

(1)X協会は,ホテル,旅館等の宿泊業者を会員とする団体である。

(2)我が国で国際的な大規模行事の開催が予定されているところ,当該行事の開催期間中において海外や国内の開催地域外からの多数の来場者が見込まれ,当該期間中,開催地域の宿泊施設の客室数が大幅に不足することが見込まれる。

(3)海外で開催された過去の国際的な大規模行事では,実際に開催地域の宿泊施設の客室数が大幅に不足したため,当該行事の開催期間中の宿泊料金が高騰した事例等が報道されている。

(4)このため,X協会は,国際的な大規模行事の運営団体から,当該行事の開催期間中における宿泊料金の過度な値上げの防止策を講じるよう要請されている。
   
(5)そこで,X協会は,会員に対して,海外で開催された過去の国際的な大規模行事において宿泊料金が高騰した事例を示し,当該行事の開催期間中における宿泊料金の過度な値上げを抑制するよう要請することを検討している。

  • 本件の概要図

 このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1)事業者団体が,標準価格,目標価格等価格設定の基準となるものを決定し,これにより市場における競争を実質的に制限することは,独占禁止法第8条第1号の規定に違反する。また,市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても,原則として独占禁止法第8条第4号又は第5号の規定に違反する(事業者団体ガイドライン第2-1-(1)-3〔標準価格等の決定〕)。

(2)本件において,X協会が,会員に対して,海外で開催された過去の国際的な大規模行事において宿泊料金が高騰した事例を示し,宿泊料金の過度な値上げの抑制を一般的に要請する限りにおいては,宿泊料金の設定の基準を決定するものではないため,独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 X協会が,会員に対して,我が国で開催される国際的な大規模行事の開催期間中に会員が設定する宿泊料金に関し,海外で開催された過去の当該行事において宿泊料金が高騰した事例を示し,過度な値上げの抑制を一般的に要請することは,独占禁止法上問題となるものではない。

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