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10 事業者団体によるエネルギー消費量の表示に係る算出方法の統一

10 事業者団体によるエネルギー消費量の表示に係る算出方法の統一

 化学製品メーカーを会員とする事業者団体が,ガイドラインを策定し,会員が化学製品の製造に係るエネルギー消費量を表示する場合には特定の算出方法を用いる旨を定めることについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X協会(化学製品メーカーを会員とする団体)

2 相談の要旨

(1)X協会は,工業製品の材料として用いられる化学製品Aのメーカーを会員とする団体である。我が国の化学製品Aの製造販売分野におけるX協会の会員の合算シェアは,ほぼ100パーセントである。

(2)X協会の会員は,それぞれ,自社が製造販売する化学製品Aについて,環境に配慮した製品であることを訴求する観点から,製造に要したエネルギー消費量を国際基準により算出し,表示している。
 ユーザー(工業製品メーカー)は,化学製品Aの仕入先選択において,エネルギー消費量を判断材料の一つとしている。

(3)最近,エネルギー消費量に係る国際基準が改定され,その際,改定から3年間は移行期間として,改定前の国際基準(以下「旧基準」という。)によることも可能とされているため,現在,2種類の基準が並存している。
 X協会の会員が改定後の国際基準(以下「新基準」という。)を用いることに特段の支障はない。ただし,新基準では,エネルギー消費量の計算に含める要素が旧基準よりも増えることから,算出されるエネルギー消費量の数値はより大きくなる。

(4)現在,X協会の会員の中には,旧基準による表示を行う会員と新基準による表示を行う会員が混在している状況にある。このため,X協会は,ユーザーの製品選択に混乱が生じることを懸念している。
 そこで,X協会は,ガイドラインを策定し,会員が化学製品Aの製造に係るエネルギー消費量を表示する場合には新基準による算出方法を用いるよう定めることを検討している。ただし,X協会は,会員に対し,ガイドラインの遵守を強制しないこととしている。

  • 本件の概要図

 このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1)事業者団体が,営業の種類,内容,方法等に関連して,消費者の商品選択を容易にするため表示・広告すべき情報に係る自主的な基準を設定し,また,社会公共的な目的のため営業の方法等に係る自主規制等の活動を行うことについては,独占禁止法上の問題を特段生じないものも多い。
 一方,事業者団体の活動の内容,態様等によっては,多様な営業の種類,内容,方法等を需要者に提供する競争を阻害することとなる場合もあり,独占禁止法上問題となるおそれがある(独占禁止法第8条第3号,第4号及び第5号)。このような活動における競争阻害性の有無については,[1]競争手段を制限し需要者の利益を不当に害するものではないか,及び[2]事業者間で不当に差別的なものではないかの判断基準に照らし,[3]社会公共的な目的等正当な目的に基づいて合理的に必要とされる範囲内のものかの要素を勘案しつつ,判断される(事業者団体ガイドライン第2-8(2))。

(2)本件は,X協会が,化学製品Aの製造に要するエネルギー消費量を表示する場合の算出方法を新基準に統一しようとするものであるが,
 [1] 表示の裏付けとなる基準の取決めであって,会員の多様な製品の開発,製造等に係る競争手段を制限するものではないこと
 [2] 新基準の採用に特段の支障はなく,会員間で不当に差別的なものではないこと
 [3] 算出方法の統一はユーザーの適切な商品選択に資するものであること
 [4] 会員に強制するものではないこと
から,会員の活動を制限したり,会員間の競争を阻害するものではないため,独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 X協会が,ガイドラインを策定し,会員が化学製品の製造に係るエネルギー消費量を表示する場合には特定の算出方法を用いる旨を定めることは,独占禁止法上問題となるものではない。

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