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5 事業者団体による社会公共的な観点から策定された自主基準の遵守

5 事業者団体による社会公共的な観点から策定された自主基準の遵守

 二輪車用品のメーカー及び販売業者の団体が,会員が製造・販売する二輪車用マフラーについて, 社会公共的な観点から,合理的に必要とされる範囲内で製造・販売に関する自主基準を設定し,かつ,会員事業者に同基準の遵守を義務付けることは,直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X連合会(二輪車用品のメーカー及び販売業者の団体)

2 相談の要旨

(1) X連合会は,二輪車用品のメーカー及び販売業者の団体であり,国内において製造・販売される二輪車用マフラー(排気音等を低減させる装置)の約50パーセントは,X連合会の構成事業者が供給している。

(2) 二輪車用マフラーは,二輪車の部品として組み込まれているが,二輪車のユーザーの中には,自己の趣味・嗜好に応じて,他のマフラーに付け替えることがある。このため,国産又は外国産の様々な製品が多く供給されている。

(3) 二輪車用マフラーについては,法令によって,公道において使用するときの排気音の上限が定められているが,規制の対象は二輪車のメーカーとユーザーのみであり,二輪車用マフラーのメーカー及び販売業者には,何ら規制が課されていない。このため,規制を満たさない二輪車用マフラーの流通・公道での使用が社会問題化しており,二輪車用マフラーのメーカー及び販売業者に対しても法的規制を課すことが検討されている。

(4) X連合会は,このような状況を踏まえ,二輪車のメーカー及びユーザーに課せられた法令上の排気音の上限基準をそのまま取り入れた自主基準を定め,会員事業者である二輪車用品のメーカー及び販売業者に対して,当該自主基準を満たさない二輪車用 マフラーの製造を禁止し,かつ,(輸入)販売を制限する旨を取り決め,それを遵守させることを検討している。

 このような自主基準を設定し,会員事業者に遵守を義務付けることは独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 一般に,事業者団体が,会員事業者が供給する商品又は役務の品質,規格等に関連して,環境の保全や安全の確保等の社会公共的な目的に基づく必要性から自主規制等の活動を行うことは,独占禁止法上の問題を特段生じないことも多い。しかしながら,活動の内容,態様等によっては,会員事業者による多様な商品又は役務の開発・供給等に係る競争を阻害することとなる場合があり,この場合独占禁止法上問題となるおそれがある(独占禁止法第8条第1項第3号,第4号及び第5号)。
 また,自主規制等の利用・遵守については,会員事業者の任意の判断に委ねられるべきであって,事業者団体が自主規制等の利用・遵守を会員事業者に強制することは,一般的には独占禁止法上問題となるおそれがある(独占禁止法第8条第1項第4号)。

【参考】
 環境の保全や安全の確保等の社会公共的な目的に基づいて合理的に必要とされる商品又は役務の種類,品質,機能等に関する自主的な基準を設定することは,原則として独占禁止法違反とならない(需要者の利益を不当に害さないものに限る。また,7-2又は7-3に該当するものを除く。)。[事業者団体ガイドライン7-6(社会公共的な目的に基づく基準の設定)]

 構成事業者に,自主規制等を利用若しくは遵守すること又は自主認証・認定等を利用することを, 強制することは,独占禁止法違反となるおそれがある(当該自主規制等がその内容から競争を阻害するおそれのないことが明白である場合を除く。)。[事業者団体ガイドライン7-3(自主規制等の強制)]

(2) X連合会が,会員事業者の製造又は販売する二輪車用マフラーの基準(以下「自主基準」という。)を設け,自主基準を満たさない二輪車用マフラーの製造を禁止し,かつ,(輸入)販売を制限する旨を取り決めることは,現実に社会問題化している法令による排気音の上限基準の規制を満たさない二輪車用マフラーの公道での使用等を防止すること等を目的として行われるものであり,社会公共的な目的に資するものである。

(3) 通常,ユーザーは,法令の上限基準を超える排気音が発生するマフラーを使用することができないのであるから,X連合会の自主基準は,ユーザーの利益を不当に害するものとはいえず,会員事業者がその遵守を義務付けられたとしても,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 X連合会が二輪車のメーカー及びユーザーに課せられた法令上の排気音の上限基準を満たす自主基準を設定し,その遵守を二輪車用品のメーカー及び販売業者である会員事業者に義務付けることは,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

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