ホーム >独占禁止法 >相談事例集 >公的規制、行政などに関する行為 >

13 事業者団体によるリサイクルシステムの共同化

13 事業者団体によるリサイクルシステムの共同化

 鉛を使用した消耗品のメーカーを会員とする団体が,使用済消耗品の回収及び再資源化を促進するため,共同でリサイクルシステムを構築することは,直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 A協会(産業機械向け消耗品Xのメーカーを会員とする団体)

2 相談の要旨

(1) 消耗品Xについては,現在4社が国内で生産しており,全社ともA協会の会員である。

(2) 消耗品Xについては鉛が多く使用されていることから,使用済品については,従来は回収業者や解体業者により回収・リサイクルされていた。しかしながら,近年鉛の相場が下落したことにより,回収し精錬するコストが相対的に高くなったため,回収率が低下し,不法投棄が社会問題化した。

(3) このような状況を踏まえ,A協会は会員が自ら使用済の消耗品Xを回収・処理することを決定した。しかしながら,使用済の消耗品Xは全国において不定期に発生し,個々の会員が自社の製品のみを回収・処理するのでは費用等の点から実現困難であることから,以下のような共同の回収・処理システムの構築を検討しているが,独占禁止法上問題ないか。
 なお,当該リサイクルシステムの構築は,各会員が独自にリサイクルシステムを構築することを何ら妨げるものではない。

ア 既存の回収・解体業者の利用
 使用済の消耗品Xの回収・解体事業については,既存の回収業者及び解体業者が地域ごとに解体業者を中心とした回収網を作っていることから,これら各地域の事業者をグループ化し,各グループに回収・処理業務を委託する。
 なお,回収方法や回収事業者の選定は,各グループが独自に判断することとし,廃棄物処理法上の一定の基準を満たすことを求める以外は,何ら制限を設けるものではない。

イ 費用の負担
 上記グループへの委託費用については,各会員が販売実績に応じた額を負担し,実際に協会に納める費用の消耗品Xの販売価格に占める割合はおおむね10%と見込まれる。各会員が協会に納める費用を自社の製品価格に転嫁するか,また,転嫁する場合にはどの程度転嫁するかについては,各会員が自らの判断で決定する。

3 独占禁止法上の考え方

(1) リサイクル等に係る共同の取組に関する独占禁止法上の指針

ア リサイクル等に対する事業者の共同の取組に対して独占禁止法上の問題の有無を検討するに当たっては,その社会公共的な目的からみた必要性について十分考慮する必要がある。 [はじめに]

イ 事業者が製品の廃棄物について,共同事業としてリサイクル・システムを構築する場合,リサイクル等に要するコストが共通化されるが,当該製品の販売価格に対するこれらリサイクル等に要するコストの割合が小さい場合には,当該共同事業が製品市場それ自体に及ぼす影響は間接的であり,独占禁止法上問題となる可能性は低いと考えられる。[第1-1 製品市場]

ウ 多数の事業者が共同でリサイクル・システムを構築することにより,既存のリサイクル事業者の事業活動が困難となり,又は他の事業者がリサイクル市場へ参入することが困難となることによって,リサイクル市場における競争が実質的に制限される場合には,私的独占又は不当な取引制限に該当する。[第1-2 リサイクル市場]

(2) 本件については,以下の点から製品市場及びリサイクル市場における競争を制限するものではなく,独占禁止法上問題を生じるものではない。

ア 共同化の必要性・合理性
 使用済の消耗品Xは全国において不定期に発生すること等の理由から,会員が独自に回収・処理を行うことは困難であり,共同でリサイクルシステムを構築することには一定の必要性・合理性が認められる。

イ 製品市場における競争に与える影響
[1] 使用済の消耗品Xの回収・処理サービスは,各会員の消耗品Xの販売とは切り離して,A協会が独自に行うものであり,また,回収・処理に要する費用について,各会員が当該費用を自らの消耗品Xの販売価格に上乗せするかは,各会員の自らの判断によることから,消耗品Xの製品市場における競争に直接に影響を及ぼすものではない。

[2] 回収・処理に要する費用の負担を通じ,会員が消耗品Xを製造・販売するのに要する費用の一部が共通化されるため,会員による消耗品Xの自由な価格設定に影響を与えることも考えられる。しかしながら,本件については,当該費用の販売価格に占める割合はおおむね10%にとどまることから,会員の自由な価格設定が制限されるとまでは認められない。

ウ リサイクル市場における競争に与える影響
[1] 本件については,既存の解体業者等が既に構築している回収網を利用するものであり,また,回収業者の選定に関しても,一定の客観的な基準を満たすことを求める以外は,何ら制限を設けるものではなく,さらに,各回収業者は従来から回収業務を行っているところ,これら事業者が独自に回収,処理業務を行うことを妨げるものではない。したがって,本件については,リサイクル市場における競争が制限されるおそれがあるとは認められない。

[2] ただし,解体業者及び回収業者が,当該リサイクルシステムに参加するには,各地域のグループへの参加が条件とされているところ,特定の解体業者や回収業者が当該グループから不当に排除され,または新規に参入することを阻害される場合には,独占禁止法上問題となるおそれがある。

4 回答の要旨

 本件リサイクルシステムの構築は,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

ページトップへ