複数の提携金融機関が,共同してATM手数料を引き上げることは,独占禁止法上問題となると回答した事例
1 相談者
A社(金融機関)
2 相談の要旨
(1) A社は,複数の金融機関とATM(Automated Teller Machine:現金自動支払機)の相互接続についての提携を行っており,現在,自社の顧客及び提携金融機関の顧客につき,土曜日の午前9時から午後2時までの間のATM手数料を無料としている。
(2) A社及び提携金融機関の合算シェアは,一定の地域において,ATMの設置箇所数で約40%となっている。
(3) A社は,土曜日の午前9時から午後2時までの間のATM手数料を105円に引き上げることを考えているが,同じATMを使用したにも関わらず,A社の顧客は105円の手数料がかかり,提携先金融機関の顧客は無料であると顧客が混乱するおそれがあるとしている。
このような混乱を避けるため,A社が提携先金融機関に対して呼びかけ,共同してATM手数料を105円に引き上げることは,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1) 事業者が,他の事業者と共同して,対価を決定するなど競争手段を相互に制限することにより,一定の取引分野における競争を実質的に制限する場合には,不当な取引制限に該当し,違法となる。[独占禁止法第3条(不当な取引制限)]
(2) 本件については,A社及び提携先金融機関は,ATM設置箇所について約40%と相当のシェアを有しており,共同して手数料の引上げやその具体的な額を取り決めることは,独占禁止法上問題となると考えられる。
4 回答の要旨
A社及び提携先金融機関が,共同してATM手数料の有料化又は具体的な価格を取り決めることは,独占禁止法上問題となる。