2 代理店の再販売価格の拘束

 産業用部品メーカーが,ユーザーとの間で,産業用部品の販売価格を取り決め,代理店に対し,当該価格でユーザーに納入するように指示することは,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X社(産業用部品メーカー)

2 相談の要旨

(1) X社は,国内における産業用部品Aの製造販売を行う事業者である。産業用部品Aの販売市場におけるX社のシェアは35パーセント,第2位である。

(2) X社は,多数のユーザーに対し,直接又は代理店を通じて産業用部品Aを販売している。X社のユーザーであるZ社は,全国5か所の工場ごとに産業用部品Aを購入しており,そのうち4か所の工場についてはX社から直接,また,1か所の工場についてはX社の代理店であるY社を通じて購入している。Z社の産業用部品Aの購入価格は,X社又はY社とZ社の各工場との間で決定されており,一律ではない。

(3) Z社は,X社に対し,(1)これまで工場ごとに行っていた価格交渉を今後は本社が一括して行う,(2)すべての工場における購入価格を一律にするという取引方法に変更したい旨を申し入れた。

(4) そこで,X社はこの申入れを踏まえ
ア Y社に対し,X社がZ社と取り決めた価格でZ社に納入するよう指示すること

イ Y社にZ社向け産業用部品Aの物流,代金回収及び在庫保管の責任を負ってもらうこととし,その履行に対する手数料を,Y社のZ社への納入価格とY社のX社からの購入価格との差額とすることを検討している。
 取引方法変更後は,Y社は,Z社に自ら積極的に営業することなく,Z社の納入指示を受けてからX社に産業用部品Aを発注し,それをZ社に納入するようになる。Y社は,Z社からの急な納入指示に備えて,少量のZ社向けの産業用部品Aの在庫を持っていれば足りるため,Y社が負う在庫保管に伴う危険負担は,極めて低くなる。

(5) X社は,Y社以外にも多数の代理店と取引しており,また,Y社は,Z社以外にも多数のユーザーと取引している。X社が指示するのは,Y社がZ社に納入する際の価格のみである。

 このようなX社の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 本件は,X社が,代理店であるY社に対し,X社とZ社との間であらかじめ取り決めた価格でZ社に納入するよう指示するものであることから,同指示が再販売価格の拘束に該当するかという観点から検討する。

(2) メーカーが代理店の販売価格(再販売価格)を拘束することは,原則として,不公正な取引方法(独占禁止法第2条第9項第4号)に該当し,独占禁止法上問題となる。

 本件は
ア X社は,Z社との間であらかじめ取り決めた価格で納入するようY社に指示すること

イ Y社は,物流,代金回収及び在庫保管の責任を負うが,Y社が負う在庫保管に伴う危険負担は極めて低いと考えられること
 から,実質的にみてX社がZ社へ直接販売していると認められる。また,X社が指示するのはY社がZ社に納入する際の価格のみであり,Y社がZ社以外のユーザーに販売する際の価格や,Y社以外の代理店が販売する際の価格を指示するものではないことから,X社の産業用部品Aについての価格競争に与える影響はほとんどないと考えられる。
 したがって,X社のY社に対する指示は,再販売価格の拘束には該当せず,独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 X社が,ユーザーであるZ社との間で,産業用部品Aの販売価格を取り決め,代理店であるY社に対し,当該価格で産業用部品Aをユーザーに納入するように指示することは,独占禁止法上問題となるものではない。

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