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平成28年 委員長と記者との懇談会概要(平成28年7月)

平成28年 委員長と記者との懇談会概要(平成28年7月)

1 日時 平成28年7月20日(水曜) 13時30分~14時30分(於 公正取引委員会)

2 概要

(1)説明

 近年,企業の活動が国境を越えて行われている中,反競争的行為のほか,企業結合事案も国境を越えて影響を及ぼすようになっている。また,特に2000年代において多くの国が競争法を導入するなど,競争法自体も国際化している。このため,国際的に競争法をどのように運用・適用していくのかということが,公正取引委員会としても重要な課題になっている。公正取引委員会としては,国際カルテル事件や外国企業が関係する企業結合事案に対する審査等において外国競争当局と連携・協力しているほか,独占禁止協力協定や外国競争当局との協力に関する覚書等の締結,また,先週7月14日にワシントンDCにおいて開催した日米競争当局意見交換といった外国競争当局との意見交換等を通じ,協力関係を構築しているところである。
 また,平成28年度におけるこれまでの公正取引委員会の法執行等の状況について紹介すると,独占禁止法上の措置については,コールマンジャパン株式会社に対し,同社が再販売価格の拘束を行っていたことから,本年6月15日,排除措置命令を行ったところである。また,7月6日には,義務教育諸学校で使用する教科書の発行者に対し,不公正な取引方法(不当な利益による顧客誘引)に該当するおそれがある行為を行ったということで警告を行っているが,この事案は公正取引委員会として迅速に処理した事案である。7月12日には,東京電力が発注する電力保安通信用機器の製造販売業者に対し,不当な取引制限を行ったということで排除措置命令及び課徴金納付命令を行っている。
 下請法については,本年6月14日,株式会社日本セレモニーに対して,同社が下請業者に対して,おせち料理やディナーショーチケット等の物品の購入を要請していたことから,勧告を行っている。下請法における勧告以外の指導件数は,4月から6月の第一四半期において1,750件に上っており,その内容としては,書面交付義務違反のような手続規定違反に関するものや,支払遅延や買いたたきといった実体規定違反に関するものがある。
 消費税転嫁対策特別措置法に関しては,本年6月16日,株式会社Q配サービスに対して勧告を行っている。同社は,荷主から請け負った配送業務を個人である事業者又は資本金の額が3億円以下である事業者に継続して委託していたところ,その委託料に消費税の引上げ分を上乗せせずに支払っていた。このほか,第一四半期においては,103件の指導を行っている。
 企業結合の関係については,第一四半期における届出件数は57件であり,その内訳としては,第一次審査で終了したものが49件,第一次審査中のものが6件,第二次審査に移行したものが2件となっている。第二次審査に移行した案件は,新日鐵住金株式会社による日新製鋼株式会社の株式取得の案件,株式会社ふくおかフィナンシャルグループと株式会社十八銀行の経営統合の案件である。
 企業結合関係では,この外に,出光興産株式会社による昭和シェル石油株式会社の株式取得の案件が本年1月に,JXグループと東燃ゼネラルグループの経営統合の案件が本年3月に,それぞれ報告等要請を行い第二次審査に移行している。また,6月30日に,キヤノン株式会社による東芝メディカルシステムズ株式会社の株式取得に関し,企業結合規制に係る手続の問題で注意したことを公表している。公正取引委員会がこのような指摘を行ったことは極めて異例である。
 制度面に関する検討については,まず確約手続が挙げられる。昨年秋に合意されたTPP協定の中に,競争法違反の疑いについて競争当局と事業者との合意により自主的に解決する制度の導入に関する規定が含まれており,これに対応するため,確約手続の導入を含む,いわゆるTPP協定整備法案が前国会に提出され,現在,継続審議となっている。
 もう一つは課徴金制度の見直しである。課徴金制度は昭和52年度に導入されてから約40年が経過しているが,その間,企業活動がグローバル化・多様化・複雑化し,課徴金制度がこれに対応できなくなってきている。このため,各界の有識者からなる独占禁止法研究会において問題点を検討していただいている。本年6月に論点整理が行われ,これについて,現在,意見募集を行っているところであり,本年9月以降,寄せられた意見も踏まえつつ,独占禁止法研究会において各論点について検討していただくこととなる。

(2)質疑応答

(問) 公正取引委員会がLNGの仕向地制限条項について関係者からヒアリングをしているとの報道があるが,そのような事実はあるか。
(委員長) 個別の案件については申し上げられないことから,回答は差し控えさせていただく。ただ,一般論として申し上げると,公正取引委員会は,様々な企業の行動がどのように行われているのかということを絶えずモニターする必要があると考えている。その上で,問題があれば,それに対して提言するということもあるだろうし,もし違反行為につながっているということであれば,公正取引委員会として行動を起こしていくということになるものと考えている。
(問) IT分野に関して,プラットフォーマーといわれるような企業が力をつけているような現状があるが,こうした状況に対して,公正取引委員会はどのような姿勢で臨んでいこうとしているのか。
(委員長) デジタルエコノミーの分野について,どのように独占禁止法を適用していくかというのは,非常に重要な課題と認識しており,同分野において非常に大きな影響力を持つ企業の行動をモニターしていく必要があるものと考えている。仮に,新規参入が阻害されている,自由で公正な事業活動が阻害されている,ということがあれば,独占禁止法に基づき対応していくこととなる。
(問) 出光興産株式会社による昭和シェル石油株式会社の株式取得の件で,当事会社の内部から,独占禁止法や金融証券取引法上の制約があって統合後の具体的な姿を示すことができないことが今回の問題の背景にあるというような声が出ているが,この点についてはどのように考えるか。
(委員長) 公正取引委員会としては,独占禁止法上の規定に基づき,届出がなされた企業結合計画が競争を実質的に制限することとなるものであるかどうかを審査していくことになる。具体的な内容については,企業秘密に関する情報もあることから,公正取引委員会の立場として特に外向けに申し上げるという段階にはなく,審査が終わったところで,競争上の観点からどういう判断をしたのかということを公表することになる。
(問) キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得に関し,その方法について,今後は駄目だが,本件についてはグレーでセーフとしたことについて,考え方を伺いたい。
(委員長) グレーでセーフだったというよりも違法と認定することにはしなかったと理解していただきたい。公正取引委員会としては,今回のスキームが独占禁止法の規定をすり抜けるために考えられたおそれがあるのではないかということで検討したが,これまでこうした方法が問題であるということを示したこともなかったことから,本件については注意にとどめたものである。しかし,本件で注意を行ったことにより,今後,類似の方法を採った場合には手続違反となることを明確に示せたのではないかと考えている。
(問) 確約制度については,TPPとは関わりなく,必要であるとの声もあると承知している。TPPの発効がどうなるかみえない中で,この確約制度は最終的に必要になると考えているか。
(委員長) 公正取引委員会としては,確約制度について,迅速かつ効果的に事案を処理することができる有効な手段であると考えていたところである。ただ,本件は,あくまでもTPP協定整備法案の中で立法化を図ろうという話であることから,同法案が国会で可決され,早急にTPPが発効することを期待するというのが,我々の立場である。

以上

 [配布資料]

キヤノン株式会社による東芝メディカルシステムズ株式会社の株式取得について(平成28年6月30日公表資料)

株式会社Q配サービスに対する勧告について(平成28年6月16日公表資料)

株式会社日本セレモニーに対する勧告等について(平成28年6月14日公表資料)

コールマンジャパン株式会社に対する排除措置命令について(平成28年6月15日公表資料)

義務教育諸学校で使用する教科書の発行者に対する警告等について(平成28年7月6日公表資料)

東京電力が発注する電力保安通信用機器の製造販売業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令について(平成28年7月12日公表資料)

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