平成18年6月21日
公正取引委員会
第1 調査の目的及び調
方法○ 金融機関及び借り手企業へのアンケート・ヒアリング調査
第2 調査報告書のポイント
金融機関が借り手企業に対して行う各種の要請についての独占禁止法上の考え方
取引上優越した地位にある金融機関が借り手企業に対して,以下のような行為を行うことは独占禁止法上問題となる。
ア 融資に関する不利益な取引条件の設定・変更
- 借り手企業に対し,その責めに帰すべき正当な事由がないのに,要請に応じなければ今後の融資等に関し不利な取扱いをする旨を示唆すること等によって,契約に定めた金利の引上げを受け入れさせ,又は,契約に定めた返済期限が到来する前に返済させること。
- 債権保全に必要な限度を超えて,過剰な追加担保を差し入れさせること。
- 借り手企業に対し,要請に応じなければ次回の融資が困難となる旨を示唆すること等によって,期末を越える短期間の借入れや一定率以上の借入シェアを維持した借入れを余儀無くさせること。
イ 自己の提供する金融商品・サービスの購入要請
- 債権保全に必要な限度を超えて,融資に当たり定期預金等の創設・増額を受け入れさせ,又は,預金が担保として提供される合意がないにもかかわらず,その解約払出しに応じないこと。
- 借り手企業に対し,要請に応じなければ融資等に関し不利な取扱いをする旨を示唆して,自己の提供するファームバンキング,デリバティブ商品,社債受託管理等の金融商品・サービスの購入を要請すること。
ウ 関連会社等との取引の強要
- 融資に当たり,要請に応じなければ融資等に関し不利な取扱いをする旨を示唆して,自己の関連会社等が提供する保険等の金融商品の購入を要請すること。
- 融資に当たり,要請に応じなければ融資等に関し不利な取扱いをする旨を示唆して,社債の引受けや企業年金運用の受託等の金融サービスの購入を要請すること。
- 融資に当たり,自己の関連会社等と継続的に取引するよう強制すること。
エ 競争者との取引の制限
- 借り手企業に対し,他の金融機関から借入れを行う場合には貸出条件等を不利にする旨を示唆して,他の金融機関から借入れをしないよう要請すること。
- 自己の関連会社等の競争者との取引を制限することを条件として融資を行うこと。
オ 借り手企業の事業活動への関与
- 要請に応じなければ今後の融資等に関し不利な取扱いをする旨を示唆すること等によって,自己又は自己の関連会社等の株式を取得させること。
- 資金調達の選択又は資産処分に干渉するなど資金の調達・運用又は資産の管理・運用を拘束し,借り手企業に不利益を与えること。
第3 調査結果の概要
1 融資を背景とした金融機関からの要請等の実態
-要請に対して意思に反して応じたとする借り手企業の割合-
○ 金融機関の各種要請に対して,意思に反して応じたとする借り手企業の割合は,総じて減少しているが,一部増加しているものもみられる。
(1) 借り手企業からの借入れの申出がない時の借入れの要請
前回調査では,取引上優越した地位にある金融機関が借り手企業に対して,次のような行為を行うことは独占禁止法上問題となるとの指摘を行ったところである。
○ 借り手企業に対して,要請に応じなければ次回の融資が困難となる旨を示唆すること等によって,期末を越える短期間の借入れを余儀無くさせること。
前回調査と比較すると,企業への要請が増加しており,企業側の要請への対応割合等のそれぞれの全体に対する割合も増加している。
<借り手企業からの借入れの申出がない時の借入れの要請>
(2) 契約に定めた金利を引き上げることの要請
前回調査では,取引上優越した地位にある金融機関が借り手企業に対して,次のような行為を行うことは独占禁止法上問題となるとの指摘を行ったところである。
○ 借り手企業に対し,その責めに帰すべき正当な事由がないのに,要請に応じなければ今後の融資等に関し不利な取扱いをする旨を示唆すること等によって,契約に定めた変動幅を超えて金利の引上げを受け入れさせること。
前回調査と比較すると企業への要請,企業側の要請への対応割合,また,それぞれの全体に対する割合とも増加している。
(3) 預金を創設・増額することの要請
前回調査では,取引上優越した地位にある金融機関が借り手企業に対して,次のような行為を行うことは独占禁止法上問題となるとの指摘を行ったところである。
○ 債権保全に必要な限度を超えて,融資に当たり定期預金等の創設・増額を受け入れさせ,又は,預金が担保として提供される合意がないにもかかわらず,その解約払出しに応じないこと。
前回調査と比較すると企業への要請,企業側の要請への対応割合,また,それぞれの全体に対する割合とも減少している。
(4) 預金以外の金融商品・サービスを購入することの要請
前回調査では,取引上優越した地位にある金融機関が借り手企業に対して,次のような行為を行うことは独占禁止法上問題となるとの指摘を行ったところである。
○ 借り手企業に対し,要請に応じなければ融資等に関し不利な取扱いをする旨を示唆して,自己の提供するファームバンキング,デリバティブ商品,社債受託管理等の金融商品・サービスの購入を要請すること。
前回調査と比較すると企業への要請,企業側の要請への対応割合,また,それぞれの全体に対する割合とも減少している。
都銀から要請を受けたと回答した企業に対し,その内容について聞いたところ,ファームバンキング及びデリバティブ商品の購入を要請されたとするものの割合が多かった。
2 要請に対する企業の受け止め方
○ 借り手企業の30.3%は,金融機関からの要請を断りにくく感じる。
○ 意思に反して金融機関からの要請に応じた借り手企業の59.8%が「次回の融資が困難になると思ったため」要請に応じたとしている。
3 金融機関の取組状況
○ 金融機関の2割以上が前回調査及びガイドラインを知らず,また,4割以上が知っているにもかかわらず何も取組を行っていなかった。
○ 金融機関の5.6%が三井住友銀行に対しての独占禁止違反による排除勧告を知らず,また,約3割が知っているにもかかわらず何も取組を行っていなかった。
【附属資料】
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