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(平成23年7月8日)郵船ロジスティクス株式会社に対する審決について(国際航空貨物利用運送事業者らによる価格カルテル)

平成23年7月8日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,被審人郵船ロジスティクス株式会社(以下「被審人」という。)に対し,平成21年7月3日,審判手続を開始し,以後,審判官をして審判手続を行わせてきたところ,平成23年7月6日,被審人に対し,独占禁止法第66条第2項の規定に基づき,被審人の各審判請求をいずれも棄却する旨の審決を行った(本件平成21年(判)第18号及び第22号審決書については,当委員会ホームページの「報道発表資料」及び「審決等データベース」参照。)。

1 被審人の概要

事業者名 所在地 代表者
郵船ロジスティクス株式会社 東京都港区芝公園二丁目11番1号 倉本 博光

2 被審人の審判請求の趣旨

(1) 平成21年(判)第18号
 平成21年(措)第5号排除措置命令の全部の取消しを求める。
(2) 平成21年(判)第22号
 平成21年(納)第7号課徴金納付命令の全部の取消しを求める。

3 主文の内容

 被審人の各審判請求をいずれも棄却する。

4 本件の経緯

平成21年
 3月18日 排除措置命令及び課徴金納付命令
 4月30日 被審人から審判請求
 7月3日 審判手続開始
 8月6日 第1回審判
 ↓
平成22年
 7月2日 第6回審判(終結)
平成23年
 4月7日 審決案送達
 4月21日までに審決案に対する異議の申立て及び直接陳述の申出
 5月30日 直接陳述の聴取
 7月6日 審判請求を棄却する審決

5 審決の概要

(1) 原処分の原因となる事実

 被審人は,他の事業者と共同して,国際航空貨物利用運送業務(注1)の運賃及び料金について,荷主向け燃油サーチャージ,一定額以上のAMSチャージ,一定額以上のセキュリティーチャージ及び一定額以上の爆発物検査料を荷主に対し新たに請求する旨を合意することにより(上記4料金についての合意を,以下「本件合意」という。),公共の利益に反して,我が国における国際航空貨物利用運送業務の取引分野における競争を実質的に制限していた(以下「本件違反行為」という。)。
 被審人の本件違反行為の実行期間は,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,平成16年11月12日から平成19年11月11日までであり,独占禁止法第7条の2の規定により算出された課徴金の額は17億2828万円である。
(注1) 他人の需要に応じ,有償で,航空運送事業を営む者の行う運送を利用して行う輸出に係る貨物の運送(これに先行及び後続する当該貨物の集配のためにする自動車による運送を併せて行う場合における当該運送を含む。)に係る業務をいう。

(2) 本件の争点

ア 本件合意の内容等(争点1)
イ 本件合意の成否(争点2)
ウ 本件合意は本件業務の取引分野における競争を実質的に制限するものであるか否か(争点3)
エ 本件合意の対価性及び役務の売上額(争点4)
オ 本件業務は小売業に該当するか否か(争点5)

(3) 争点に対する判断の概要

ア 争点1について

(ア) 本件合意の内容について
 「当該航空会社から請求を受ける燃油サーチャージの額に相当する額を荷主に対する燃油サーチャージとして荷主に対し新たに請求する」とは,航空会社から燃油サーチャージとして請求を受けることとなる金額に相当する金額を荷主向け燃油サーチャージの額として決定し,その金額を荷主に対して請求することであり,請求するに当たっては,請求する金額を決定することが当然の前提となる。そして,上記合意の趣旨は,要するに,航空会社が決めた燃油サーチャージの額と同額を荷主向け燃油サーチャージとして請求することにより,新たに発生した費用(燃油サーチャージ相当額)を自社で負担することなく実際の役務の利用者である荷主に転嫁することにあると解される。
 AMSチャージ合意及びセキュリティーチャージ等合意も,同様に解することができる。
 したがって,本件違反行為に係る本件合意は,4料金のそれぞれについて金額を決定した「価格の決定カルテル」であるというほかはなく,独占禁止法第2条第6項の「対価を決定する」ものに該当する。
(イ) 主張の変更(注2)について
 本件合意は,4料金の金額を決定し,その金額を荷主に対し請求する旨の合意であって,価格の決定カルテルといえるものであり,請求するには金額を決定することが当然の前提となることに照らせば,審査官の主張はいずれも,本件合意の内容につき説明したものにすぎない。
 よって,そもそも,審査官が主張を変更したという事実は認められず,被審人の主張はその前提を欠くものであって,独占禁止法第58条第2項等の要件を検討するまでもなく理由がない。
(注2) 審査官は,本件合意の内容とされる「請求とは・・・当該航空会社から請求を受ける燃油サーチャージに相当する額の全額を荷主に請求するという事実行為」であると主張し,審判手続中に,本件合意につき「本件荷主向け燃油サーチャージにあっては利用する航空会社から請求を受けることとなる燃油サーチャージに相当する額の全額・・・という金額を決め,それぞれ,荷主に対し,当該額を支払うよう求めるということである」等と主張した。
 これに対し,被審人は,被審人の利益を害する主張の変更として許されないと主張した。

イ 争点2について

 審決案で認定した事実経過によれば,平成14年9月18日の役員会において,12社間に,「本件業務の運賃及び料金について,ハウスエアウェイビルの発行日が同年10月16日以降である貨物を対象に,利用する航空会社から燃油サーチャージの請求を受けることとなるときは,当該燃油サーチャージに相当する金額を荷主に対して新たに請求する」旨の合意(荷主向け燃油サーチャージ合意)が成立し,日本通運株式会社及びDHLグルーバルフォワーディングジャパン株式会社は,遅くとも平成14年11月8日の理事会までに,荷主向け燃油サーチャージ合意に参加したものと認めることができる。
 加えて,14社(平成16年以降は13社。以下同じ。)は,長年にわたり,繰り返し国際部会役員会の会合を開催し,自社の取引先との交渉内容,交渉経過及び交渉結果等の情報を披れきし合い,取引先に対する競合他社の行動についての情報を入手してその動向を把握し,その上で各社とも取引先に対して同一の行動を採っていたところ,14社は互いに競争相手であるから,自社の取引先との交渉内容などは,本来であれば,競争相手に対して秘密にするはずであって,競合他社の行動情報を入手し,各社ともに同一行動を採るようなことは,本件事業者業界において自由な競争が行われていたとすれば,到底あり得ないものというほかなく,これらの事情は,14社間に荷主向け燃油サーチャージ合意が成立していたことを強く裏付けるものである。
 また,AMSチャージ及びセキュリティーチャージ等の合意についても,上記と同様に,合意が成立したと認めることができ,加えて,合意が成立していたことを強く裏付ける事情が存在する。

ウ 争点3について

 違反行為者14社の本件業務における貨物量の合計は,平成13年から平成20年までの我が国における本件業務における総貨物量に対して,最小で72.5パーセント,最大で75.0パーセントを占めていた。このような市場占有率を有する14社によって,本件業務に関して不当な取引制限に当たる合意が成立すれば,本件業務の取引分野における競争を実質的に制限することとなることは明
らかである。
 本件合意が成立するに至った一連の過程に照らすと,14社は,4料金を荷主に転嫁しようと企図するとともに,各社独自の経営判断に基づいて行動することによるリスクを回避するために,合意を形成し,互いの競争を回避してきたもの
であるが,14社がこのような行動に出たのは,燃油サーチャージ,AMSチャージ,セキュリティーチャージ及び爆発物検査料といった本件業務を構成する個別の作業の取引分野が存在することを前提として,当該取引分野における競争を回避するためではなく,本件業務という一個の役務の取引分野についての競争を回避するためであったものと認められる。
 以上検討したところによれば,荷主向け燃油サーチャージ合意,AMSチャージ合意,セキュリティーチャージ等合意を,それぞれ別個に不当な取引制限に該当する行為と評価するのは相当ではなく,飽くまでも,本件業務の取引分野における競争を回避するために行われた一連の一個の不当な取引制限に該当する行為と評価するのが相当である。

エ 争点4について

 4料金は,本件業務の運賃及び料金の一部であることは明らかであるから,本件業務という役務の対価であり,4料金に係る本件合意は,独占禁止法第7条の2第1項第1号の「商品又は役務の対価に係るもの」に該当する。
 また,本件合意は,14社が4料金のみを対象として成立させた合意であり,4料金のみを対象として決定し請求することにより相互に事業活動を拘束していたものと認められる。このような合意が可能であったのは,4料金がその余の料金と区別することが可能であったからである。
 したがって,本件合意の対象とされていたのは,本件業務の対価の一部である4料金のみであり,4料金の売上額は,本体運賃及びその余の料金と区別することができるのであるから,4料金の売上額に課徴金を課すことに何ら違法な点は
ないというべきである。

オ 争点5について

 課徴金制度は一律的な非裁量的制度として法定されており,「卸売業」及び「小売業」のみを明示して例外的な算定率を定めている独占禁止法の下では,本件業務に流通業的性格があるとか,国際航空貨物利用運送業と卸・小売業の各売上高営業利益率が近似しているという点を捉えて,本件業務に卸・小売業に係る算定率を準用することは許されない。
 本件違反行為の対象となった本件業務は役務であり,通常,「役務の提供」は,商品の販売とは異なるものとされるから,商品を買い入れてそのまま販売する「小売業」及び「卸売業」とは異なる業種であることが明らかである。
 また,本件業務は,運輸業の一種であると認められるところ,日本標準産業分類によれば,「小売業,卸売業」と「運輸・通信業」とは別個の分類とされている。
 したがって,本件業務は,小売業及び卸売業のいずれにも当たらないというべきである。

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公正取引委員会事務総局官房総務課審決訟務室
電話 03-3581-5478(直通)
ホームページ http://www.jftc.go.jp/

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