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(平成25年10月2日)株式会社松下組及び大東建設株式会社に対する審決について(石川県が発注する土木一式工事及び石川県輪島市が発注する土木一式工事の入札談合事件)

平成25年10月2日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,被審人株式会社松下組及び被審人大東建設株式会社の2社(以下「被審人ら」という。)に対し,平成24年1月18日,審判手続を開始し,以後,審判官をして審判手続を行わせてきたところ,平成25年9月30日,被審人らに対し,それぞれ,独占禁止法第66条第2項の規定に基づき,被審人らの各審判請求をいずれも棄却する旨の審決を行った(本件平成24年(判)第1号及び第2号,第3号並びに第4号及び第5号審決書については,当委員会ホームページの「報道発表資料」及び「審決等データベース」参照。)。

1 被審人らの概要

(1) 平成24年(判)第1号及び第2号並びに第4号及び第5号

事業者名 株式会社松下組
所在地 石川県輪島市釜屋谷町6字33番地3
代表者 代表清算人 松下 久美子

(2) 平成24年(判)第3号

事業者名

大東建設株式会社

所在地

石川県鳳珠郡穴水町字川島ロ10番地1

代表者

代表取締役 白坂 政治

2 被審人らの審判請求の趣旨

(1) 被審人株式会社松下組(以下「被審人松下組」という。)

ア 平成24年(判)第1号(以下「第1号」という。)
平成23年(措)第11号排除措置命令の取消しを求める。
イ 平成24年(判)第2号(以下「第2号」という。)
平成23年(納)第236号課徴金納付命令の取消しを求める。
ウ 平成24年(判)第4号(以下「第4号」という。)
平成23年(措)第12号排除措置命令の取消しを求める。
エ 平成24年(判)第5号(以下「第5号」という。)
平成23年(納)第258号課徴金納付命令の取消しを求める。

(2) 被審人大東建設株式会社(以下「被審人大東建設」という。)

平成24年(判)第3号(以下「第3号」という。)

平成23年(納)第237号課徴金納付命令の取消しを求める。

3 主文の内容

(1) 第1号及び第2号(被審人松下組)

被審人の各審判請求をいずれも棄却する。

(2) 第3号(被審人大東建設)

被審人の審判請求を棄却する。

(3) 第4号及び第5号(被審人松下組)

被審人の各審判請求をいずれも棄却する。

4 本件の経緯

平成23年10月6日 排除措置命令及び課徴金納付命令
11月8日 被審人大東建設から課徴金納付命令に対して審判請求(注1)
11月28日 被審人松下組から各命令に対して審判請求(注2)
平成24年1月18日 各審判手続開始
3月12日 第1回審判(被審人ら共通)

12月6日 第5回審判(審判手続終結:第1号及び第2号並びに第4号及び第5号)
平成25年1月16日 第5回審判(審判手続終結:第3号)
6月5日 各審決案送達
6月17日 被審人大東建設から審決案に対する異議の申立て
9月30日 各審判請求を棄却する審決
(注1) 被審人大東建設は,後記の石川県発注の特定土木一式工事に係る排除措置命令に対しては審判請求を行わず,同命令は確定している。また,被審人大東建設は,後記の石川県輪島市発注の特定土木一式工事に係る排除措置命令及び課徴金納付命令の名宛人となっていない。
(注2) 被審人松下組は,後記の石川県発注の特定土木一式工事に係る排除措置命令及び課徴金納付命令並びに後記の石川県輪島市発注の特定土木一式工事に係る排除措置命令及び課徴金納付命令の名宛人となっている。

5 審決の概要

(1) 原処分の原因となる事実

ア 第1号及び第2号並びに第3号
 被審人らを含む79名は,遅くとも平成19年6月1日以降,共同して,石川県発注の特定土木一式工事(注3)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,石川県発注の特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
 本件違反行為の実行期間は,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,被審人松下組については平成19年7月14日から平成22年7月13日まで,被審人大東建設については平成19年6月12日から平成22年6月10日までであり,独占禁止法第7条の2の規定により算出された課徴金の額は,被審人松下組が139万円,被審人大東建設が135万円である。
(注3) 「石川県発注の特定土木一式工事」とは,石川県が,石川県奥能登土木総合事務所又は石川県奥能登農林総合事務所において,制限付一般競争入札又は指名競争入札(いずれも総合評価方式によるものを含む。)の方法により土木一式工事として発注する工事(石川県による工事の設計上,作業船を使用して施工することとされるものを除く。)であって,[1]石川県A等級業者のみ,[2]石川県A等級業者及び石川県B等級業者のみ又は[3]石川県B等級業者のみ(いずれも石川県輪島市,珠洲市又は鳳珠郡穴水町若しくは能登町の区域に本店又は主たる事務所を置く者に限る。)を入札の参加者とするものをいう。
 なお,「石川県A等級業者」又は「石川県B等級業者」とは,それぞれ,石川県から土木一式工事についてAの等級に格付されている事業者又はBの等級に格付されている事業者をいう。
イ 第4号及び第5号
 被審人松下組を含む27名は,遅くとも平成19年4月2日以降,共同して,石川県輪島市発注の特定土木一式工事(注4)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,石川県輪島市発注の特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
 被審人松下組の本件違反行為の実行期間は,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,平成19年7月30日から平成22年7月13日までであり,独占禁止法第7条の2の規定により算出された課徴金の額は267万円である。
(注4) 「石川県輪島市発注の特定土木一式工事」とは,石川県輪島市(以下「輪島市」という。)が,制限付一般競争入札又は指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事(輪島市による工事の設計上,作業船を使用して施工することとされるもの及び推進工法を用いて施工することとされるものを除く。)であって,[1]輪島市A等級業者のみ,[2]輪島市A等級業者及び輪島市B等級業者のみ又は[3]輪島市B等級業者のみ(いずれも輪島市の区域に本店又は主たる事務所を置く者に限る。)を入札の参加者とするものをいう。
 なお,「輪島市A等級業者」又は「輪島市B等級業者」とは,それぞれ,輪島市から土木一式工事についてAの等級に格付されている事業者又はBの等級に格付されている事業者をいう。

(2) 本件の争点

ア 第1号及び第2号並びに第4号及び第5号(被審人松下組)
(ア) 被審人松下組は不当な取引制限に該当する行為を行ったか。(争点1)
(イ) 被審人松下組に対し排除措置を特に命ずる必要があるか。(争点2)
(ウ) 被審人松下組の受注した物件は「当該役務」に該当するか。(争点3)
イ 第3号(被審人大東建設)
 被審人大東建設の受注した物件は「当該役務」に該当するか。(争点4)

(3) 争点に対する判断の概要

ア 争点1について
(ア) 第1号及び第2号
a [1]被審人松下組を含む79名のうち77名の役員又は従業員が,本件基本合意が存在し,本件基本合意に基づく受注調整を行っていたことを認める旨の供述をしていること,[2]前記[1]の供述は,自社の受注した物件について受注の経緯等と他社の受注した物件についての協力の内容等を具体的に述べたものであること,[3]本件排除措置命令を受けた67名のうち,被審人松下組を除く66名は審判請求をしていないことに照らせば,本件基本合意が存在し,本件違反行為期間中に発注された634件の石川県発注の特定土木一式工事のうち619件が本件基本合意に基づき落札されたことが認められる。
b 被審人松下組は,他の事業者からの連絡に応じて入札しており,かつ,前記の77名の役員又は従業員は,本件基本合意に被審人松下組が含まれることを前提とした供述をしており,被審人松下組が本件基本合意に参加していないと述べる者はいないことを総合すれば,被審人松下組は本件基本合意の当事者であることが認められる。
c 本件基本合意は,受注予定者を決定し受注予定者が受注できるよう協力するというものであるところ,本件基本合意の当事者である79名は,本件違反行為期間中に発注された634件の石川県発注の特定土木一式工事のうち,619件を本件基本合意に基づき受注したこと,その平均落札率は94.6パーセントであったことが認められるから,本件基本合意は,前記79名がその意思で石川県発注の特定土木一式工事の取引分野において,受注者及び受注価格をある程度自由に左右することができる状態をもたらしていたということができる。
d 以上によれば,被審人松下組は,他の78名の事業者と共同して相互にその事業活動を拘束し,公共の利益に反して,石川県発注の特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していたと認められる。
(イ) 第4号及び第5号
a [1]被審人松下組を含む27名全ての事業者の役員又は従業員が,本件基本合意が存在し,本件基本合意に基づく受注調整を行っていたことを認める旨の供述をしていること,[2]前記[1]の供述は,自社の受注した物件について受注の経緯等と他社の受注した物件についての協力の内容等を具体的に述べたものであること,[3]本件排除措置命令を受けた26名のうち,被審人松下組を除く25名は審判請求をしていないことに照らせば,本件基本合意が存在し,本件違反行為期間中に発注された222件の石川県輪島市発注の特定土木一式工事のうち218件が本件基本合意に基づき落札されたことが認められる。
b 被審人松下組は,他の事業者からの依頼に応じて入札しており,かつ,前記の27名の役員又は従業員は,本件基本合意に被審人松下組が含まれることを前提とした供述をしており,被審人松下組が本件基本合意に参加していないと述べる者はいないことを総合すれば,被審人松下組は本件基本合意の当事者であることが認められる。
c 本件基本合意は,受注予定者を決定し受注予定者が受注できるよう協力するというものであるところ,本件基本合意の当事者である27名は,本件違反行為期間中に発注された222件の石川県輪島市発注の特定土木一式工事のうち,218件を本件基本合意に基づき受注したこと,その平均落札率は95.1パーセントであったことが認められるから,本件基本合意は,前記27名がその意思で輪島市発注の特定土木一式工事の取引分野において,受注者及び受注価格をある程度自由に左右することができる状態をもたらしていたということができる。
d 以上によれば,被審人松下組は,他の26名の事業者と共同して相互にその事業活動を拘束し,公共の利益に反して,石川県輪島市発注の特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していたと認められる。
イ 争点2について
(ア) 第1号及び第2号
a 独占禁止法第7条第2項の「特に必要があると認めるとき」とは,既に違反行為はなくなっているが,当該違反行為が繰り返されるおそれがある場合や,当該違反行為の結果が残存しており競争秩序の回復が不十分である場合などをいうものと解される。
b 本件違反行為は,少なくとも3年以上にわたって,継続的・恒常的に行われたものであるから,当事者間に強固な協調的関係が形成されており,一旦終了しても,この関係は容易に解消されず,再び同様の行為が行われる誘因となる可能性が高いと認められることに加え,本件違反行為終了後,石川県において入札制度が変更された事実はうかがえないこと,本件違反行為の取りやめは,公正取引委員会が立入検査を実施したことを契機とするものであって,被審人松下組の自発的意思によるものではないこと,被審人松下組を含む79名は,隣接する地域で刑事事件が摘発されたにもかかわらず,できるだけ会合を開くのを避けて電話でやり取りをするなどの方策を講じて違反行為を継続していたことを総合すれば,被審人松下組は同様の違反行為を繰り返すおそれがあると認められるから,被審人松下組に対しては,特に排除措置を命ずる必要がある。
(イ) 第4号及び第5号
前記(ア)と同旨。
ウ 争点3について
(ア) 第1号及び第2号
a 本件基本合意は,独占禁止法第7条の2第1項第1号所定の「役務の対価に係るもの」に当たるものであるところ,同項所定の課徴金の対象となる「当該役務」とは,本件のような入札談合の場合には,本件基本合意の対象とされた工事であって,本件基本合意に基づく受注調整等の結果,具体的な競争制限効果が発生するに至ったものをいうと解される。
b 認定した事実によれば,被審人松下組が受注した2物件を含む石川県発注の特定土木一式工事全般は本件基本合意の対象となっており,かつ,当該2物件は,この基本合意に基づき,被審人松下組が地域性や受注希望を主張して受注調整を行った結果,受注予定者となり落札して受注したものであったことが認められる。
c 以上によれば,前記bの2物件は,本件基本合意に基づき,被審人松下組が受注予定者となった結果,具体的な競争制限効果が発生したものといえる。よって,前記2物件は,「当該役務」に該当する。
(イ) 第4号及び第5号
a 前記(ア)aと同旨。
b 認定した事実によれば,被審人松下組が受注した5物件を含む石川県輪島市発注の特定土木一式工事全般は本件基本合意の対象となっており,かつ,当該5物件は,この基本合意に基づき,被審人松下組が,地域性や施工場所において施工実績があったことを主張して受注調整を行った結果,受注予定者となり落札して受注したものであったことが認められる。
c 以上によれば,前記bの5物件は,本件基本合意に基づき,被審人松下組が受注予定者となった結果,具体的な競争制限効果が発生したものといえる。よって,前記5物件は,「当該役務」に該当する。
エ 争点4について
(ア) 前記ウ(ア)aと同旨。
(イ) [1]奥能登地域に本店又は主たる事務所を置く建設業者の間では,相当以前から石川県が発注する土木一式工事について受注調整が行われていたこと,[2]本件違反行為期間中,石川県発注の特定土木一式工事の入札参加の条件を満たしていた86名のうち,被審人大東建設を含む79名が違反行為に参加し,多数の物件について受注調整が行われたこと,[3]奥能登地域の工事の多くは過去に行われた工事と何らかの関連性を有するものであり,また,奥能登地域の事業者は,いずれも地域内の実情や過去の施工実績等について熟知していたため,工事の内容や場所からどの会社が地域性や継続性を有するかを容易に判断できる状況にあり,受注予定者を簡単に決定できる場合が多かったことが証拠から認められ,これらを考慮すると,本件基本合意は石川県発注の特定土木一式工事の全てを受注調整の対象とするものであったと推認されるというべきであるから,石川県発注の特定土木一式工事であり,かつ,前記79名のうちいずれかが入札に参加して受注した工事については,特段の事情がない限り,本件基本合意に基づいて受注予定者が決定され,具体的な競争制限効果が発生したものと推認するのが相当である。
(ウ) 被審人大東建設が受注した4物件については,本件基本合意に基づき被審人大東建設が受注予定者に決定され,被審人大東建設が受注したものと推認され,これを強める事情が証拠上認められる一方,これを覆すに足りる特段の事情を認めることはできないことから,前記4物件については,本件基本合意に基づき被審人大東建設が受注予定者に決定され,被審人大東建設が受注したものと認められる。
 また,基本合意の当事者間で受注予定者が決定された物件については,アウトサイダーが入札に参加した場合でも,特段の事情のない限り,競争単位の減少により具体的な競争制限効果が発生したということができるところ,前記4物件におけるアウトサイダーの参加の状況によって特段の事情があるということはできない。
 したがって,前記4物件は,「当該役務」に該当する。

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問い合わせ先  公正取引委員会事務総局官房総務課審決訟務室
電話 03-3581-5478(直通)
ホームページ  http://www.jftc.go.jp/

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