ホーム >報道発表・広報活動 >報道発表資料 >平成29年 >6月 >

(平成29年6月14日)平成28年度における東北地区の独占禁止法の運用状況等について

(平成29年6月14日)平成28年度における東北地区の独占禁止法の運用状況等について

平成29年6月14日
公正取引委員会事務総局
東北事務所

第1 独占禁止法違反事件の処理状況

1

 公正取引委員会は,迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下,国民生活に影響の大きい価格カルテル・入札談合・受注調整,中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売など,社会的ニーズに的確に対応した多様な事件に厳正かつ積極的に対処することとしている。
 そして,公正取引委員会は,一般から提供された情報(申告),自ら探知した事実等を検討し,必要な審査を行い,審査の結果,違反行為が認められたときは,違反行為をした事業者等に対し,違反行為を排除するために必要な措置等を命じている。違反行為のうち,価格カルテル・入札談合・受注調整,優越的地位の濫用等については,違反行為をした事業者に対して課徴金の納付を命じている。

2 最近の独占禁止法違反事件の処理状況(不当廉売事案で迅速処理したもの及び優越的地位の濫用事案で注意したものを除く。)

 最近の5年間における東北地区の独占禁止法違反事件の処理状況は,次のとおりである。

独占禁止法違反事件の処理件数
処理内容/年度 24年度

25年度

26年度

27年度

28年度

審査件数 前年度からの繰越し 0 0 1 0 1
年度内新規着手 11 20 6 8 22
合計 11 20 7 8 23
処理件数 法的措置
排除措置命令等(注1) 0 0 0 0 1
その他 警告(注2) 0 0 1 0 0
注意(注3) 7 15 5 7 12
打切り(注4) 4 4

1

0 9
その他小計 11 19

7

7 21
合計 11 19 7 7 22
次年度への繰越し 0 1 0 1 1

(単位:件)
(注1)「法的措置」とは,排除措置命令及び課徴金納付命令であり,1つの事件について,排除措置命令と課徴金納付命令がともになされている場合には,法的措置件数を1件としている。
(注2)「警告」とは,排除措置命令等の法的措置を採るに足る証拠が得られないが,違反の疑いがある場合に行う措置である。
(注3)「注意」とは,違反行為の存在を疑うに足る証拠が得られないが,将来違反につながるおそれがある場合に行う措置である。
(注4)「打切り」とは,違反行為が認められない等により,審査を打ち切る場合をいう。
(注5)件数は,当事務所が審査を行ったものを計上している。

3 独占禁止法違反事件の概要

(1) 入札談合 

ア 地方公共団体等が宮城県又は福島県の区域を施工場所として発注する施設園芸用施設の建設工事の工事業者に対する件(平成29年2月16日・排除措置命令及び課徴金納付命令(課徴金総額:5億9253万円)【適用法条:独占禁止法第3条】
地方公共団体等(注1)が,宮城県又は福島県の区域を施工場所として,一般競争入札,指名競争入札又は指名競争見積の方法により発注する施設園芸用施設(注2)の建設工事(注3)(以下「特定施設園芸用施設工事」という。)の工事業者7社は,遅くとも平成24年8月8日以降(うち1社については平成25年5月14日以降),特定施設園芸用施設工事について,受注価格の低落防止等を図るため
(ア)a 受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
  b 受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意の下に
(イ) 営業担当者による会合を開催するなどして,当該工事それぞれについて,受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)は,受注を希望する旨を表明し
  a(a) 受注希望者が1社のときは,その者を受注予定者とする
   (b) 受注希望者が複数社のときは,施主である地方公共団体等に対する設計等への協力状況等を勘案して,受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する
  b 受注予定者が提示する入札価格又は見積価格(以下「入札価格等」という。)は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者が連絡した入札価格等以上の入札価格等を提示する
などにより,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,特定施設園芸用施設工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
(注1)「地方公共団体等」とは,地方公共団体,営利法人,農事組合法人,個人の農業者及び任意組合をいう。
(注2)「施設園芸用施設」とは,施設園芸の用に供する施設であって,温室その他のその内部で農作物を栽培するための施設及び気象上の原因により農作物の生育が阻害されることを防止するための施設(基礎工事を行わず,地面に丸型鋼管を差し込むことにより設置されるものを除く。)をいう。
(注3)「施設園芸用施設の建設工事」には,施設園芸用施設に附帯する設備又は施設の建設工事が併せて発注されるものを含む。

イ 東日本高速道路株式会社東北支社が発注する東日本大震災に係る舗装災害復旧工事の入札参加業者に対する件(平成28年9月6日・排除措置命令及び課徴金納付命令(課徴金総額:14億951万円(注1))【適用法条:独占禁止法第3条】
 東日本高速道路株式会社(以下「NEXCO東日本」という。)東北支社が発注する東日本大震災に係る舗装災害復旧工事(注2)の入札参加業者20社(以下「20社」という。)は,平成23年7月中旬頃以降(20社のうち,6社にあっては,それぞれ,遅くとも同年8月下旬頃以降),東日本大震災に係る舗装災害復旧工事について,受注価格の低落防止等を図るため
(ア)a 受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
  b 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に
(イ)a 調整役(注3)が各社の受注希望を勘案するなどして,それぞれの工事の受注予定者を指定する
  b 受注予定者として指定されていない工事についても競争参加資格確認申請(注4)を行う
  c 競争参加資格確認申請を行った場合は,いずれの工事について当該申請を行ったのかを直接又は常盤工業株式会社を通じて調整役に連絡する
  d 受注予定者以外の者は,調整役又は受注予定者から連絡を受けた価格で入札する又は入札を辞退する
などにより,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,東日本大震災に係る舗装災害復旧工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
(注1)平成28年12月13日付の課徴金納付命令に係る課徴金の一部を控除する決定等の後の課徴金の総額は7億5556万円である。
(注2)「東日本大震災に係る舗装災害復旧工事」とは,NEXCO東日本東北支社が平成23年7月15日及び同年8月10日に入札公告をした,東日本大震災により被災した高速道路の舗装本復旧工事を内容とする舗装工事をいう。
(注3)東北地区では,かねてから,NEXCO東日本東北支社等が発注する舗装工事について,調整役と呼ばれる舗装工事業者が他の舗装工事業者の受注希望を聴取するなどして受注に関する調整を行っていた。
(注4)「競争参加資格確認申請」とは,NEXCO東日本東北支社が発注する工事の入札手続に参加するために必要な資格の有無を確認する手続をいう。

(2) 優越的地位の濫用 

 公正取引委員会は,優越的地位の濫用に係る情報に接した場合には,効率的かつ効果的な調査を行い,独占禁止法違反につながるおそれのある行為が認められた場合には,未然防止の観点から注意するほか,独占禁止法違反が認められた場合は厳正に対処することとしている。
なお,平成28年度においては,東北地区で1件の注意を行ったところ,その事例は以下のとおりである(注)。
(注)次の事例は,記載された行為が行われていた疑いがあり,独占禁止法違反につながるおそれがあったものである。

日刊新聞の発行を行うAは,取引先新聞販売店に対し,同販売店からの減紙の申出を伴う注文を修正するよう要請したり,同販売店から申出のあった減紙分を下回る数量しか減紙しなかった。

(3) 不当廉売 

 不当廉売は,総販売原価を著しく下回る価格で継続して販売するほか,不当に低い価格で販売することにより,他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれのある行為であり,独占禁止法第19条で禁止されるものである。申告のあった小売業に係る不当廉売事案については,迅速に処理するとの方針の下で対処しているほか,大規模事業者による不当廉売等周辺の中小事業者に対する影響が大きいと考えられる事案については厳正に対処することとしている。
なお,迅速に処理するとの上記方針の下,平成28年度においては,酒類及び石油製品の小売業について,不当廉売につながるおそれがあるとして東北地区で43件の注意を行った。

(4) その他

 次の各事例は,記載された行為が行われていた疑いがあり,独占禁止法違反につながるおそれがあったため,注意を行った。
ア スポーツ用品の卸売業を営むAは,公立小学校が新たに指定する体操服について,取引先小売業者に対し,販売価格を指示していた。
イ 農業協同組合であるBは,組合員に対し,生産した米を全量Bに出荷するよう要請することにより,組合員がB以外に出荷できないようにしていた。

第2 企業結合関係届出及び協同組合届出の状況

1 企業結合関係届出

 独占禁止法では第4章において,事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立等の禁止(第9条)及び銀行業又は保険業を営む会社の議決権取得・保有の制限(第11条)について規定しているほか,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合及び不公正な取引方法による場合の会社等の株式取得・所有,役員兼任,合併,分割,共同株式移転及び事業譲受け等の禁止並びに一定の条件を満たす企業結合についての届出義務(第10条及び第13条から第16条まで)を規定している。
 公正取引委員会では,これら株式取得・所有,合併等について独占禁止法上の問題の有無について審査を行っている。
 最近5年間における東北地区の企業結合関係届出の状況は,次のとおりである。

企業結合関係届出受理件数

24年度

25年度

26年度

27年度

28年度
株式取得届出受理 1 4 8 0 0
合併届出受理 0 0 0 0 0
分割届出受理 0 0 0 0 1
共同株式移転届出受理 1 0 0 0 1
事業譲受け等届出受理 0 0 0 0 0
合計 2 4 8 0 2

(単位:件)

2 協同組合届出

 中小企業等協同組合法は,同法に基づき設立された事業協同組合及び信用協同組合に対し,同法第7条第1項第1号で規定する小規模事業者以外の事業者が加入したとき又は組合員が同小規模事業者でなくなったときには,その旨を公正取引委員会に届け出ることを義務付けている(同法第7条第3項)。
 最近5年間における東北地区の協同組合届出件数は,次のとおりである。

中小企業等協同組合法第7条第3項の規定に基づく届出件数

24年度

25年度

26年度 27年度 28年度
中協法7条3項届出
7

8

9

10

10

(単位:件)

第3 広報・広聴活動

 公正取引委員会では,独占禁止法等の普及・啓発及び競争政策の運営に資するため,次のような広報・広聴活動を行っている。

1 独占禁止政策協力委員制度

 競争政策への理解の促進と地域の経済社会の実情に即した政策運営に資するため,平成11年度から,独占禁止政策協力委員制度を設置しており,公正取引委員会が行う広報活動等に御協力いただくとともに,独占禁止法等の運用や競争政策の運営等について意見聴取を行っている。
平成28年度においては,上半期に(1)公正取引委員会に対する期待について,(2)地域経済の現状と競争政策の役割について,(3)情報通信技術やデジタル化の進展に応じた競争政策の在り方について,(4)地方における独占禁止法及び下請法遵守の促進について,(5)規制改革に伴う対応についてなど,下半期に(1)中小企業に不当に不利益を与える行為の取締り等の強化について,(2)課徴金制度の在り方について,(3)都市ガス分野における小売事業の全面自由化について,(4)独占禁止政策協力委員制度についてなどの意見聴取をそれぞれ行った。

2 有識者との懇談会

 各地の有識者と公正取引委員会の委員等との懇談会及び講演会を通して,競争政策についてより一層の理解を求めるとともに,幅広く意見及び要望を把握し,今後の競争政策の有効かつ適切な推進を図るため,昭和47年度以降,毎年,全国各地において有識者との懇談会を開催している。
 東北地区では,平成28年度は青森市において,青森商工会議所,青森県商工会連合会等の経済団体,報道機関及び学識経験者の有識者と公正取引委員会委員との懇談会を実施し,同時に「市場環境の変化を捉えた競争政策と公正取引委員会の役割」をテーマに講演会を開催した。
 このほか,平成4年度から東北事務所長等と各地の有識者との懇談会を開催しており,平成28年度は青森市,青森県十和田市,岩手県滝沢市,宮城県塩竈市,同県白石市,秋田県能代市,同県横手市及び山形県米沢市の計8か所において開催した。

3 独占禁止法説明会等

 公正取引委員会では,独占禁止法等の違反の未然防止を図るため,説明会・講習会等を自ら主催しているほか,各種業界団体等から要請を受けて講習会等に講師を派遣している。
東北地区では,平成28年度は独占禁止法に関する説明会等を5回実施した。また,入札談合等関与行為防止法に関する研修会等を44回実施した。

4 独占禁止法教室(出前授業)

 将来を担う中学生,高校生,大学生等を対象に,市場経済の仕組みや競争の機能について説明するなどし,競争の必要性・重要性,独占禁止法の役割等について理解してもらうことを目的として,公正取引委員会の職員による「独占禁止法教室」を開催している。
東北地区では,平成28年度は中学生向け独占禁止法教室を2回,高校生向け独占禁止法教室を4回,大学生向け独占禁止法教室を6回それぞれ開催した。

5 消費者セミナー

 一般消費者に独占禁止法の内容や公正取引委員会の活動について,より一層理解を深めてもらうことを目的として,地域の一般消費者を対象としたセミナーを開催しているほか,公正取引委員会の職員を消費者団体等の勉強会等に派遣している。
東北地区では,平成28年度は青森県むつ市,仙台市(3か所),宮城県多賀城市(2か所),同県遠田郡美里町,秋田市(2か所)及び福島県白河市の計10か所において,消費者セミナーを開催した。

6 一日公正取引委員会

 本局及び地方事務所等の所在地以外の都市において,独占禁止法及び下請法の普及啓発活動や相談対応の一層の充実を図るため,独占禁止法講演会,下請法基礎講習会,消費税転嫁対策特別措置法説明会,入札談合等関与行為防止法研修会,消費者セミナー,独占禁止法教室,報道機関との懇談会,相談・展示コーナーなどを1か所の会場で開催する「一日公正取引委員会」を開催している。
 東北地区では,平成28年度は秋田市において,12月14日に一日公正取引委員会を開催した。

7 相談業務

 公正取引委員会では,法運用に対する理解を深め,違反行為の未然防止を図るため,相談を受け付けている。
 最近5年間における東北地区の相談受付件数は次のとおりである。

相談受付件数

24年度

25年度

26年度 27年度 28年度
独占禁止法
197

194

159

114 133
下請法

192

168

154

152 200
合計

389

362

313

266 333

(単位:件)

関連ファイル

問い合わせ先

独占禁止法違反事件の処理状況に関する問い合わせ先 公正取引委員会事務総局東北事務所第一審査課
電話 022-225-8421(直通)
企業結合関係届出等の状況及び広報活動等に関する問い合わせ先 公正取引委員会事務総局東北事務所総務課
電話 022-225-7095(直通)
ホームページ http://www.jftc.go.jp/regional_office/tohoku/

ページトップへ