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(平成29年10月6日)株式会社飯塚工業ほか10名に対する審決について(山梨県が石和地区を施工場所として発注する土木一式工事の入札談合事件)

平成29年10月6日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,被審人株式会社飯塚工業ほか10社(以下「被審人ら」という。)に対し,平成23年7月27日,審判手続を開始し,以後,審判官をして審判手続を行わせてきたところ,平成29年10月4日,被審人らに対し,独占禁止法の一部を改正する法律(平成25年法律第100号)による改正前の独占禁止法(以下「独占禁止法」という。)第66条第2項の規定に基づき,被審人らの各審判請求を棄却する旨の審決を行った(本件平成23年(判)第53号ないし第57号,第59号ないし第69号及び第71号ないし第75号審決書については,当委員会ホームページの「報道発表資料」参照)。

1 被審人らの概要

 別表1のとおり(別表1は印刷用ファイルに添付)。

2 被審人らの各審判請求の趣旨

 別表2のとおり,被審人らに対する各排除措置命令及び課徴金納付命令の全部の取消しを求める(別表2は印刷用ファイルに添付)。

3 主文の内容

 被審人らの各審判請求をいずれも棄却する。

4 本件の経緯

平成23年
4月15日 排除措置命令及び課徴金納付命令
6月13日まで 被審人らから排除措置命令及び課徴金納付命令に対して審判請求
7月27日 審判手続開始
9月28日 第1回審判

平成28年
3月25日 第25回審判(審判手続終結)
平成29年
4月6日まで 審決案送達 
4月20日まで 被審人らから審決案に対する異議の申立て及び委員会に対する陳述(直接陳述)の申出
8月3日 直接陳述の聴取
10月4日 被審人らの各審判請求を棄却する審決

5 原処分の原因となる事実

 被審人ら及び別表3記載の10社(以下,両者を併せて「21社」という。)は,遅くとも平成18年4月1日以降平成22年3月23日まで(以下「本件対象期間」という。),共同して,石和地区特定土木一式工事(注1)について,受注すべき者又はJV(以下まとめて「受注予定者」という。)を決定し,受注予定者が受注できるようにすること(以下「本件合意」という。)により,公共の利益に反して,石和地区特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していた(以下「本件違反行為」という。)(別表3は印刷用ファイルに添付)。
 被審人らのうち被審人中楯建設株式会社を除く10社(以下「10社」という。)の本件違反行為の実行期間は,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,別表4の各被審人に係る「実行期間」欄記載のとおりであり,独占禁止法第7条の2の規定により算出された課徴金の額は,同表の各被審人に係る「課徴金額」欄記載のとおりである(別表4は印刷用ファイルに添付)。

(注1) 「石和地区特定土木一式工事」とは,山梨県が,一般競争入札又は指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事のうち,同県笛吹市(平成18年4月1日から同年7月31日までの間にあっては,同県笛吹市又は東八代郡芦川村)の区域(以下「石和地区」という。)を施工場所とするものであって,次のいずれかに該当するものをいう。
1 山梨県から土木一式工事についてAの等級に格付されている事業者のみを入札の参加者とするもの。
2 山梨県から土木一式工事についてBの等級に格付されている事業者のみを入札の参加者とするもの。
3 山梨県から土木一式工事についてAの等級に格付されている事業者及びBの等級に格付されている事業者のみを入札の参加者とするもの。
4 特定建設工事共同企業体(以下「JV」という。)のみを入札の参加者とするもの。

6 審決の概要

(1) 本件の争点

ア 21社は,石和地区特定土木一式工事について,受注予定者を決定し,その者が受注できるように協力する旨合意していたか(争点1)
イ 10社が受注した審決案別紙10の1ないし10記載の各工事は,独占禁止法第7条の2第1項にいう「当該…役務」(以下「当該役務」という。)に該当するか(争点2)
ウ 被審人小泉建設株式会社,被審人長田建設株式会社及び被審人中楯建設株式会社(以下「3社」という。)に対し,排除措置を特に命ずる必要があるか(争点3)

(2) 争点に対する判断の概要

ア 争点1について(審決案33~52頁)
 山梨県では,平成17年度頃までは指名競争入札の方法により土木一式工事を発注することが多かったが,21社を含む石和地区の建設業者は,石和支部に対する平成6年の勧告審決(注2)以降も,石和地区を施工場所とする土木一式工事の指名競争入札において受注調整を行うなど,協調関係にあったことが認められる。
 また,山梨県では,平成18年度頃から一般競争入札の方法により土木一式工事を発注することが増え,同時期から,一般競争入札の方法により発注される土木一式工事の一部について総合評価落札方式(注3)を導入したが,21社は,平成18年4月1日以降も,これらの石和地区に係る土木一式工事について,石和支部等において入札参加情報等を集約し,受注希望者が1社の場合はその者を受注予定者とし,受注希望者が複数の場合は地域性(注4),継続性(注5)等を勘案して受注希望者同士の話合いなどにより受注予定者を決定し,受注予定者以外の者は受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力していたことが認められる。
 さらに,本件対象期間に発注された石和地区特定土木一式工事である158物件(注6)のうち,少なくとも40物件(注7)について本件合意の内容に沿った受注調整が行われたことを裏付ける客観的な証拠が存在し,少なくとも4物件(注8)について本件合意の内容に沿った受注調整に関わる行為が行われたことを裏付ける客観的な証拠が存在する。また,これらの工事の発注方法は,指名競争入札,通常の一般競争入札,総合評価落札方式による一般競争入札のいずれも含んでおり,発注担当部署は,山梨県県土整備部等(注9),同県農政部峡東農務事務所及び同県森林環境部峡東林務環境事務所のいずれも含まれ,発注時期も本件対象期間の全般にわたっている。
 加えて,158物件は,いずれも21社が受注したものであり,158物件の平均落札率も,94.0パーセントという高いものであったことが認められる。
 以上の事情に鑑みれば,21社のうち被審人株式会社芦󠄂沢組土木(以下「被審人芦󠄂沢組土木」という。),株式会社八木沢興業(以下「八木沢興業」という。)及び株式会社地場工務店(以下「地場工務店」という。)を除く18社は,遅くとも平成18年4月1日までに,石和地区特定土木一式工事について,受注価格の低落防止を図るために本件合意をし,本件合意の下に受注調整を行っていたことが認められる。
 また,被審人芦󠄂沢組土木,八木沢興業及び地場工務店は,いずれも平成18年4月1日時点においては石和地区特定土木一式工事の入札参加資格を有していなかったが,被審人芦󠄂沢組土木については,平成19年度からB等級業者に格付されたことにより,八木沢興業については,平成20年10月1日に株式会社窪川組から同社の事業の全部を譲り受けたことにより,地場工務店については,平成21年度にB等級業者に格付されたことにより,石和地区特定土木一式工事の入札参加資格を有するようになったことが認められる。
 これらの事実からすると,被審人芦󠄂沢組土木,八木沢興業及び地場工務店は,遅くとも,自社が石和地区特定土木一式工事の入札参加資格を有するようになって以降に最初に入札に参加した石和地区特定土木一式工事の入札書提出締切日である,被審人芦󠄂沢組土木については平成19年6月19日,八木沢興業については平成20年10月2日,地場工務店については平成21年7月30日までに,それぞれ本件合意に参加していたと認められる。

(注2) 「石和支部に対する平成6年の勧告審決」とは,平成6年(勧)第15号社団法人山梨県建設業協会石和支部(以下「石和支部」という。)に対する勧告審決をいう。
(注3) 「総合評価落札方式」とは,価格に加え評価項目ごとの評価点を考慮する一般競争入札をいう。
(注4) 「地域性」とは,工事の施工場所が自社の事務所等に近いといった事情をいう。
(注5) 「継続性」とは,過去に受注した工事との継続性をいう。
(注6) 審決案別紙9に記載の174物件から物件6,物件7,物件13,物件30,物件64,物件67,物件68,物件77,物件86,物件98,物件99,物件101,物件102,物件107,物件134及び物件144を除いた158件をいう。
(注7) 「40物件」とは,審決案別紙9の「別紙11等」欄に「○」の付された40件をいう。
(注8) 「4物件」とは,審決案別紙9の「別紙11等」欄に「●」の付された4件をいう。
(注9) 山梨県県土整備部(平成20年3月31日以前は土木部。以下同じ。)道路整備課,同部道路管理課,同部峡東建設事務所,同部流域下水道事務所の4部署をまとめたものをいう。

イ 争点2について(審決案52~61頁)
(ア) 当該役務
 不当な取引制限等の摘発に伴う不利益を増大させてその経済的誘因を小さくし,不当な取引制限等の予防効果を強化することを目的とする課徴金制度の趣旨に鑑みると,独占禁止法第7条の2第1項所定の課徴金の対象となる当該役務とは,本件においては,本件合意の対象とされた工事であって,本件合意に基づく受注調整等の結果,具体的な競争制限効果が発生するに至ったものをいうと解される。
 21社は,遅くとも平成18年4月1日以降,石和地区特定土木一式工事について,受注価格の低落防止を図るため,本件合意の下,受注調整を行っていたものである。
 そして,本件においては,以下の[1]ないし[5]の各事情がみられることから,石和地区特定土木一式工事に該当し,かつ,21社のうちいずれかが入札に参加して受注した工事については,当該工事について本件合意に基づく受注調整が行われたとは認められない特段の事情のない限り,本件合意に基づく受注調整が行われ,具体的競争制限効果が発生したものと推認するのが相当である。
[1] 21社は,石和支部等において,受注調整のために,あらかじめ21社の入札参加及び受注希望に関する情報を取りまとめ,石和支部において入札参加者等取りまとめ表を作成し,受注希望者が複数の場合には受注希望者同士で話合いなどをし,時には石和支部等の執行部の助言を勘案するなどして,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよう協力し合っていたものであり,受注調整を組織的に行っていた。
[2] 本件対象期間に発注された石和地区特定土木一式工事のうち,指名競争入札の方法により発注された工事は,そのほとんどにおいて21社の中から当該入札の参加者が指名され,一般競争入札の方法により発注された工事も,21社が入札参加者の大部分を占めていたことから,21社は,石和地区特定土木一式工事の全てを対象に受注調整を行うことが容易な立場にあり,実際に,本件対象期間に発注された石和地区特定土木一式工事のほとんどを,21社又は21社のいずれかで構成されるJVが受注しており,158物件の平均落札率も94.0パーセントという高いものであった。
[3] 158物件のうち,少なくとも44物件(注10)について,21社が本件合意の内容に沿った受注調整を行ったこと又は本件合意の内容に沿った受注調整に関わる行為を行ったことを裏付ける客観的な証拠が存在するところ,これらの工事は,発注方法,発注担当部署,工事内容及び発注時期において特段の偏りはみられない。
[4] 21社の代表者及び従業員のうち,本件合意への参加を認める旨の供述をする者が複数いるが,これらの者の中に,石和地区特定土木一式工事に該当する特定の工事について本件合意に基づく受注調整が行われなかった旨を供述している者はいない。
[5] 本件合意の目的が受注価格の低落防止にあることに照らすと,石和地区特定土木一式工事の全てを受注調整の対象とするのが合理的である。
(イ) 審決案別紙10の1ないし10記載の各工事について
 本件対象期間に10社が受注した石和地区特定土木一式工事のうち,本件各課徴金納付命令において課徴金算定の対象とされた工事は,審決案別紙10の1ないし10の「4 対象物件一覧」記載のとおりである。
 これらの工事は,いずれも本件合意の対象である石和地区特定土木一式工事に該当し,21社のうちいずれかが入札に参加して受注した工事であるところ,かかる工事については,特段の事情がない限り,本件合意に基づく受注調整が行われ,具体的競争制限効果が発生したと推認される。また,これらの工事の中には,本件合意の内容に沿った受注調整が行われたこと又は本件合意の内容に沿った受注調整に関わる行為が行われたことを裏付ける客観的な証拠が存在する工事(44物件)も相当数含まれている。
(ウ) 特段の事情の有無について
 被審人らは,審決案別紙10の1ないし10記載の各工事の中にも具体的競争制限効果が発生していないものが存在する旨主張し,具体的には,[1]総合評価落札方式の工事,[2]受注予定者を1社に絞り込めず,2社以上で争われた工事,[3]落札者以外の入札参加者のうち一部の者が,予定価格より相当低い価格で入札している工事,[4]落札者の入札率が入札価格の2番目に低い者より相当低い工事,[5]2番目に入札価格が低かった者が評価値で逆転して受注している工事,[6]一部の入札参加者が受注調整に非協力的な振る舞いをした工事等を挙げるが,いずれも,当該工事について本件合意に基づく受注調整が行われ,具体的競争制限効果が発生したとの推認を妨げるものとは認められず,被審人らの主張を採用することはできない。
(エ) 小括
 被審人らが受注した審決案別紙10の1ないし10記載の各工事は,いずれも,本件合意に基づく受注調整が行われたとは認められない特段の事情はなく,当該工事について本件合意に基づく受注調整が行われ,具体的競争制限効果が発生したと認められる。
 よって,これらの工事はいずれも独占禁止法第7条の2第1項にいう当該役務に該当する。

(注10) 「44物件」とは,40物件(注7)と4物件(注8)を併せた44件をいう。

ウ 争点3について(審決案61~63頁)
 独占禁止法第7条第2項本文は,違反行為が既になくなっている場合においても,特に必要があると認めるときは,違反行為者に対し,当該行為が既になくなっている旨の周知措置その他当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることができる旨規定しているところ,同項の「特に必要があると認めるとき」とは,排除措置を命じた時点では既に違反行為はなくなっているが,当該違反行為が繰り返されるおそれがある場合や,当該違反行為の結果が残存しており競争秩序の回復が不十分である場合などをいうものと解される。
 平成22年3月24日に,本件について公正取引委員会の立入検査が行われ,被審人らは同日以降本件違反行為を行っていないことからすると,本件違反行為は,同日以降事実上消滅していると認められる。
 しかし,これは,公正取引委員会が立入検査を行ったことによるものであり,被審人らの自発的意思に基づくものではなかったこと,被審人らは平成18年4月1日から平成22年3月24日までの約4年間という長期間にわたり本件違反行為を継続していたことなどの事情を総合的に勘案すれば,3社についても,本件排除措置命令の時点において本件違反行為と同様の行為を繰り返すおそれがあると認められ,特に排除措置を命ずる必要があることは明らかである。

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