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平成22年5月19日付 事務総長定例会見記録

平成22年5月19日付 事務総長定例会見記録

 [発言事項]

事務総長会見記録(平成22年5月19日(水曜)13時30分~於 官房第1会議室)

 [発言事項]

平成21年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組について

 (事務総長) 公正取引委員会では,下請法違反行為に対する迅速かつ厳正な処理に努めておりますが,下請事業者が受ける不利益が重大であると認められる事案につきましては,会社名の公表を伴う勧告を行っており,それ以外の事案につきましては,指導で改善していただくということを積極的に行っているところであります。
 平成16年4月の改正下請法の施行によりまして,勧告を行うと企業名を公表するという運用をしているわけでありますが,平成21年度につきましては,この改正法施行以降最多であった昨年度と同様の15件の勧告を行いました。また,昨年度を641件上回る3,590件の指導を行っております。
 勧告を行った15件は,すべて下請代金の減額事案であります。このうち,株式会社マルハニチロ食品に対する件は,不当な経済上の利益の提供要請,いわゆる協賛金についても勧告の対象としています。この協賛金の提供要請が禁止行為に加わったのは平成16年の改正以降ですが,この改正によって加わった協賛金の提供要請に対しての勧告は,本件が初めてのものであります。
 また,勧告した15件のうち,貨物運送関係の事業者に対するものが4件,それから繊維製品関係の事業者に対するものが4件を占めておりまして,両業界に対して勧告が多かったということが特徴として挙げられるのではないかと思います。
 貨物運送業界におきましては,「取扱手数料」といった名目で下請代金から一定額を差し引くことが半ば慣習化していて,こうした慣習に従って減額していたとする事件がありました。これが慣習と言えるかどうかということはありますが,いずれにしましても,仮に慣習があったにしても,下請法違反になるということには変わりはありませんので,貨物運送業界においては,十分その点を御注意いただきたいと思います。
 それから,繊維製品関係の事業者に対して,4件の勧告案件を行っていますが,この繊維製品関係の業界においても,「歩引き」という名目で下請代金から一定額を差し引くという減額事案が4件中3件ありました。この「歩引き」も業界の慣習のようなものであったとしても,下請事業者の責めに帰すべき事由がないのに,発注時に定められた下請代金の額を発注後に減ずることは,下請法上の下請代金の減額に該当して違反になります。この繊維製品関係の業界に対しましては,過去に数回,「歩引き」等の勧告がみられたことから,下請取引の適正化に取り組むよう業界団体等に要請を行ってきましたが,下請法違反行為が後を絶たないということもありまして,平成21年度にも同様の要請を行ったところであります。繊維製品関係の業界におかれましても,下請法違反が生じることがないように十分に注意をしていただきたいと思います。
 なお,平成21年度におきましては,下請法違反行為があった場合に原状回復措置として,下請代金の減額事案につきましては,下請事業者2,160名に対しまして,総額4億8116万円の減額分の返還がされました。また,下請代金の支払遅延事案におきましては,下請事業者2,737名に対して,総額1億790万円の遅延利息が支払われているという状況であります。
 以上申し上げましたとおり,平成21年度におきましても,下請法違反行為に対しまして,厳正に対処してきているわけであります。
それでも,昨今,経済環境が厳しいということもありまして,広く中小事業者,下請事業者だけにかかわらず,依然として厳しい対応を迫られているという状況にあります。特に,取引先の大企業から不当なしわ寄せを受けやすい中小事業者全般について,その取引を公正化していくことが推進できないかということで,これも何回かこの場でも御説明しましたが,昨年11月から「中小事業者取引公正化プログラム」を実施しております。
 その実施状況についても御説明したいと思うのですが,このプログラムの一環として,「公正取引委員会による移動相談会」,下請事業者をはじめとする中小事業者からの御要望に応じて,事業者の所在する地域に公正取引委員会の職員が出張して,優越的地位の濫用規制や下請法について分かりやすく説明するということを行っておりまして,平成21年度は,製造業,運送業,ソフトウエア制作業,測量業等,様々な事業者の方からお申し込みをいただきまして,全国36カ所で開催いたしました。
それから,下請法違反行為,あるいは独占禁止法違反行為がみられた業種や公正取引委員会のいろいろな実態調査で問題がみられた業種に関しましては,その業種ごとの実態に応じた具体例を御説明するということが効果的であろうということで,業種別の講習会,これも平成21年11月以降,本年3月までの間,コンテンツ制作業者向けや製造事業者向け,物流事業者と取引がある荷主,実際に違反行為が行われるのは荷主の行為になりますので,荷主向け,あるいは金融機関,これも融資先の中小企業等との取引に問題が見受けられるので,金融機関向けに合計20回,このような業種別の講習会も開催しております。
 これら優越的地位の濫用や下請法に係る周知活動のほか,下請取引以外の取引の公正化を図る必要が高い分野に対しては書面調査を行っていく,公正取引委員会が違反があるとして勧告した事件について,その後,きちんと適正化が図られているかどうかというフォローアップ調査等も行っております。
 書面調査としては,従前から問題が多くみられた大規模小売業者と納入業者との取引に関する書面調査,それから,荷主と物流事業者との取引に関して,これは物流特殊指定という告示がありますが,こうしたものに関しての書面調査の2つを実施しております。
 勧告案件についてのフォローアップ調査につきましては,平成17年度から平成19年度に勧告を行った案件の中から選定いたしまして,勧告後の親事業者による下請法の遵守状況の確認のための調査を行っております。
 勧告後の親事業者による下請法遵守状況をみてみますと,親事業者に対するヒアリング調査では,しかるべき減額行為の再発防止策を講じているという親事業者が具体的に分かりました。また,減額分の返還対象になった下請事業者に対してもアンケート調査を実施しましたが,勧告後は,下請代金の減額を受けたことはなくなったということでしたので,それなりに公正取引委員会の勧告,事件処理の効果が得られているということであります。
 公正取引委員会といたしましては,引き続き,違反行為の未然防止に努めるとともに,違反行為に対しまして,下請事業者が受ける不利益が重大であると認められるような事案には勧告を行って事業者名の公表を行うという厳正な対処を行うことによりまして,下請取引等の一層の適正化に努めてまいりたいと考えているところであります。
 私からは以上であります。

 [質疑応答]

 (問) 昨日,経済産業省から産業構造ビジョンの骨子案が出されまして,その中で,公正取引委員会の企業結合審査についてもう少し透明性を確保してほしいという文言が入っているのですが,透明性について,公正取引委員会の御認識はいかがでしょうか。

 (事務総長) 近年,企業結合を行う目的の1つとして,国際競争力の強化が挙げられることが多いわけであります。公正取引委員会におきましても,これは従前からもそうでありますが,国際競争の実態も踏まえて企業結合規制の運用を行っているところであります。
 これは,連休前のこの場で御説明した時も,国際市場の競争の実態を踏まえて企業結合審査を行っている,それは具体的な事例であるとか,あるいはガイドラインでも具体的に記載させていただいているということは御説明したとおりであります。
 骨子案におきまして,競争促進は個々の企業の競争力向上にとって極めて重要であるという指摘がされております。公正取引委員会といたしましても,競争が確 保されることによって企業の競争力が向上していく,それはまた,消費者,ユーザーにも利益がもたらされるということであろうと考えております。
今のお尋ねは,企業結合審査の透明性や予見可能性についてということでありますが,これにつきましても,この場でも御説明しているとおりでありますが,事前相談への対応方針,これは具体的に企業結合計画に関しての事前相談が行われた場合に,どういったスケジュールで対応するか,どのような資料を提出していただくのかということもガイドラインと同様に,対応方針も示させていただいております。また,具体的にどのような観点で公正取引委員会が審査を行っているかという企業結合のガイドラインも策定,公表させていただいているところであります。
 このようなものによりまして,私どもとしましては,具体的な事前相談に対して企業結合審査がどのように行われているかということは,御理解いただけるようになっていると思っております。
 それから,具体的にどのように私どもが企業結合審査を行っているのかということにつきましては,毎年,事例集というものも公表させていただいており,どのような観点で審査を行っているかということについて公表しておりますので,そういったものを御覧いただければ,私どもの審査の実態についても御理解いただけると思っております。
 今後とも,こうした面での企業結合審査の透明性,あるいは予見可能性の向上に努めてまいりたいと考えているところであります。

 (問) 今の御説明ですと,透明性は確保されているということだと思いますので,今後,公正取引委員会として,制度とか運用の見直しとかは考えないということでよろしいのでしょうか。

 (事務総長) 今後どのようなものが出てくるか分かりませんし,私どもも,先ほど申しましたように,方向性としては,透明性,それから予見可能性を高めていくということで努力をしていく必要があると思っております。ですから,運用面において具体的な御指摘等があり,もし改善する点があるということであれば,それは改善に向けて努力をしていく必要があるだろうと思っておりますが,制度をどうするかということについては,そのような実態があるのかどうかということも踏まえて検討すべき話だろうと思っております。

 (問) 最後に企業の中には独占禁止法がM&Aの障害になっているという声が一部であるのですが,過去に,公正取引委員会の企業結合審査の中で,公正取引委員会が不承認にした,つまり承認しなかった事例というのはあるのでしょうか。

 (事務総長) 不承認といいますか,独占禁止法上の問題があるということで,先般のこの場でも御説明させていただいておりますが,問題解消措置を採っていただく必要があると指摘することはあります。
 しかし,実際に問題解消措置を採っていただいている事案は,事前相談していただく事案の中で極めて限られた件数でありまして,そのような指摘を行って改善措置を採っていただいて承認するというケースが,年間に何件かはあります。
 私どもとして全く不承認といって結論を出すのではなく,問題点の指摘を行わせていただくという段階で,最終的には,企業サイドの方で御意見,御要望があるのであれば,きちんと意見を提出していただいて,公正取引委員会の事前相談というのは,あくまで企業が任意で行うものでありますから,公正取引委員会の正式な判断を求めるのであれば,それは,事件処理という形でもって処理が進められていくことになります。ですから,公正取引委員会の感触なり,問題点の指摘を踏まえて,企業側がどのような問題解消措置を採っていただけるかどうかということになるのだと思います。
 そのような中で自主的に断念されるというケースがあるのかもしれませんが,ここ数年間では,どちらかというと,公正取引委員会の問題点指摘によるものではなく,企業サイドの様々な御事情によって断念されるというケースが,実際,かなりの数あるということだと思います。

 (問) 下請法の方ですが,指導の件数が3,590件と言われましたが,これは過去最多ということはありますでしょうか。前年度より大幅に増えたというお話でしたが。

 (事務総長) 最近数年間では,この指導件数自体は,最多だと思います。数十年というベースでありますとデータの取り方も違っているかもしれませんので,この場では古い年について確認できませんが,少なくとも,最近数年では最多の指導件数かと思います。

 (問) 15件の勧告件数を踏まえてで結構ですが,これだけの件数になっていることの分析というか,感想をお願いします。

 (事務総長) 勧告件数自体も,昨年度の平成20年度と同様に15件になっている,それから,指導件数自体も増えているということでありますが,これは,1つは,経済情勢が非常に厳しくなってきているということの影響も出ているのであろうと思っております。それから,私ども自身も,そうしたことで厳正な処理をして,これは,中小企業庁ともいろいろな連携もしておりますが,そういう形で実際の調査件数,あるいはそれを踏まえて指導件数も増えてきているということだと思います。
 なお,先ほど,平成21年度の指導件数について,最近数年間で一番多いと申し上げましたが,平成17年度に4,015件という件数がありますので,そういう面では,比較的多い方の件数だということであります。

 以上

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