第2部 各   論

第1章 独占禁止法制の動き

第1 所管法令の動き

 当委員会が所管する法令には,独占禁止法のほか,私的独占の禁止及び公
正取引の確保に関する法律の適用除外に関する法律(以下「適用除外法」と
いう。) 下請法及び景品表示法並びに私的独占の禁止及び公正取引の確保に
関する法律施行令等の政令がある。その他,当委員会は,独占禁止法第76条
の規定に基づき,内部規律,事件の処理手続及び届出,認可,又は承認の申
請その他の事項に関する必要な手続について規則を定めることができるとさ
れており,この規定に基づいて公正取引委員会の審査及び審判に関する規則
等が定められている。
 本年度における所管法令の改正状況は,次のとおりである。

(1) 公正取引委員会の審判費用等に関する政令(昭和23年政令第332号)
の一部が改正され,当委員会に出頭を命ぜられた参考人及び鑑定人に支
払われる日当の上限が引き上げられた(平成元年政令第200号)。
(2)  事務局の機構に関し,公正取引委員会事務局組織令等の一部改正が行
われた(付属資料1−1)。

第2 独占禁止法と他の経済法令との調整等

法令調整
 当委員会は,関係行政機関が特定の政策的必要から経済法令の制定又は
改正の立案をする際に,これら法令に独占禁止法の適用除外となる協定等
についての規定を置いたりする場合には,その企画・立案の段階で当該行
政機関から協議を受け,独占禁止法及び競争政策との調整を行っている。
 本年度において調整を行った主なものは,次のとおりである。
(1) 水産業協同組合法の一部を改正する法律案
 水産業協同組合法は,漁民及び水産加工業者の協同組合組織の発達を
促進し,もってその経済的社会的地位の向上と水産業の生産力の増進を
図り,国民経済の発展を期することを目的として,漁業協同組合,水産
加工業協同組合等の水産業協同組合の事業等について定めるとともに,
水産業協同組合が独占禁止法第24条各号の要件を満たすものとみなすこ
とにより,不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における
競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる
場合を除き,水産業協同組合が行う共同事業を独占禁止法の適用除外と
したものである。
 今回の改正は,近年の漁業及び水産加工業における経営規模拡大を踏
まえ,また,水産資源状況の悪化等による漁獲量及び漁価の低迷,他業
種の大手企業の水産加工業への参入,加工原材料の調達難,海外からの
製品輸入の増加等の内外の環境変化に対応して,漁業協同組合の正組合
員となれる法人の資格及び水産加工業協同組合の組合員となれる法人の
資格を緩和するというものである。
 当委員会は,独占禁止法第24条の趣旨に反することのないよう,農林
水産省と所要の調整を行った結果,調整後の法律案では,水産加工業協
同組合の組合員については,小規模の事業者の相互扶助を目的とする水
産加工業協同組合の性格を確保する観点から,常時使用する従業員の数
が100人を超えるものが実質的に小規模の法人でないと認めるときは,
当委員会が,その組合員を水産加工業協同組合から脱退させることがで
きることとされた。
 なお,本法律案は,第118回国会に提出,審議された結果,平成2年
6月14日に可決成立し,同月29日公布された。
(2) その他
 このほか,前払式証票の規制に関する法律案,海洋水産資源開発促進
法の一部を改正する法律案等について関係行政機関から協議を受け,必
要に応じ,独占禁止法及び競争政策との調整を行った。
行政調整
 当委員会は,関係行政機関が特定の政策的必要から行う行政措置につい
て,当該措置が独占禁止法及び競争政策上問題がある場合には,これらの
措置について当該関係行政機関と調整を行うこととしている。
 本年度において調整を行った主なものは,次のとおりである。
(1) 肥料の需給見通しの作成・公表について
 肥料価格安定臨時措置法は,平成元年6月30日をもって廃止された
が,これに伴う措置として,農林水産省及び通商産業省から,生産業者,
販売業者,学者等から構成される肥料懇談会の意見を聴取しつつ,両省
において肥料の需給見通しを作成・公表したい旨の説明があった。
 これに対し,当委員会は,両省に対し,肥料価格安定臨時措置法廃止
に伴う経過措置として需給見通しを作成・公表することに関し,@需給
見通しの作成に当たり,個別の事業者に対し生産調整,投資調整等の指
導を行わないこと,A肥料懇談会が肥料価格についての実質的な団体交
渉の場とならないようにすること等を申し入れた。
(2) 産業構造転換円滑化臨時措置法に基づく溶性りん肥製造業における事
業提携計画について
 溶性りん肥製造業において,平成元年6月,溶性りん肥製造業者4社
が,2社ずつ,それぞれ,産業構造転換円滑化臨時措置法(以下「円滑
化法」という。)に基づき,通商産業省に対し,生産の受委託等の事業提
携計画の承認申請を行った。
 当委員会は,この事業提携計画について,通商産業省から,円滑化法
第9条第2項の規定に基づく通知を受けたため,独占禁止法の観点か
ら,当該事業提携計画について検討を行った。その結果,市場占拠率の
程度,当該事業提携の実施が競争に及ぼす影響等の事情を総合的に勘案
した結果,本件事業提携によって,直ちに溶性りん肥の生産・販売分野
における競争を実質的に制限することになるものとは認められないと判
断し,円滑化法第9条第3項の規定に基づき,通商産業省に対し,その
旨の意見を述べた。
(3) 造船業における需要見通しの作成・公表について
 造船業については, 平成元年9月,需給状況及び市況が改善されつつ
あり,今後もその傾向が予想されたことから,鋼製船舶及び舶用大型
ディーゼル機関の生産数量に関する不況カルテルが廃止された。
 その後,運輸省から,不況カルテルの廃止によって造船事業者及び舶
用ディーゼル機関製造業者が再び受注拡大に走ると,海外から日本の受
注拡大について非難されることが危惧され,また,市場環境は改善され
つつあるが,不安定要因も存在することから,各造船事業者が自主的な
判断に立って市場の動向に留意しつつ慎重な経営を維持していくこと
が望まれるため,新造船建造需要見通しを作成・公表したい旨の説明が
あった。
 これに対し,当委員会は,本件需要見通しの作成・公表については,
業界内でのカルテルを誘発させるおそれがあること等から,独占禁止法
上の問題が生ずることのないようにするため,運輸省に対し,@新造船
建造需要見通しは,あくまで情報提供であって,これらに基づき業界団
体又は個別事業者に対して受注量又は建造量の調整を指導しないこと,
A建造需要見通しの下でカルテルを生ずることのないよう十分留意する
こと等の申入れを行った。